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災害対応給油所

掲載:2013年01月16日

執筆者:執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良

用語集

災害対応型給油所は、災害時に電力や水道が停止した場合でも給油や給水ができるガソリンスタンドのことです。

         

災害対応給油所とは

通常ガソリンスタンドは消防法等の規定に基づき強固な造りとなっていますが、停電が生じた場合には、燃料の供給を行うことが出来ません。災害対応給油所には以下のような設備・機器が設置され、停電や水道停止時にも給油、給水ができるよう整備されています。

  • 太陽光発電
  • 内燃機関発電設備
  • 貯水槽
  • 井戸設備
  • 緊急用可搬式ポンブ

阪神大震災の教訓から開始された取り組み

平成7年の阪神淡路大震災では、1週間以上の停電のためガソリン給油所の機能が停止し、 燃料切れにより消防活動や人命救助、災害復旧にあたる消防車、救急車、警察車両等の緊急車両の対応に遅れが発生しました。また、被災者が暖を取るために自家用車を利用するケースも多く、災害時の石油製品の重要性が再認識されました。

これを受け、翌年の平成8年に経済産業省により「災害対応型給油所普及事業」が実施され、現在は600を超える災害対応型給油所が全国で整備されています。(全国の設置状況は記事下部、関連リンクをご覧ください。)

給油は緊急車両が優先。地域住民には給水や一時避難場所を提供

災害対応型給油所には、「警察・消防等の緊急車両へ優先的に揮発油及び軽油の供給を行うこと」、「被災地の被災状況に関して、近隣の警察や消防等と密に連絡を取り、各種情報の発信地として機能するように努めること」等が義務づけられています。

被災直後は緊急車両への給油のみとなることが想定されますが、地域住民に対しては給水やトイレに関する支援をしたり、地域の方々の一時避難場所としても役立ちます。またガソリンスタンドによってはAEDや車いす対応トイレなどを設置している場合もあります。

東日本大震災での課題は解決できるのか

東日本大震災では、サプライチェーンが寸断されたことによりガソリンスタンド自体がガソリンを入手できない状況となりました。災害対応給油所は「ガソリンはあるが、停電のため給油設備が動かない」場面を解決することを主眼においていることを考えると、ガソリンがスタンドまで届かないという今回の課題が解決できる訳ではありません。

しかしながら、この石油が届かないという課題についても様々な取り組みが行われています。

その一つが2012年11月1日に施行された改正石油備蓄法です。震災直後には全国的な連携がとれず、ガソリンや灯油などが被災地に届かないなど、深刻な燃料不足が発生しました。その反省から改正されたもので、石油元売り各社に災害時の石油製品の供給計画を共同で作ることを義務づけ、輸送体制や情報網などをあらかじめ整備させ、災害が起きても安定的に供給できるようにするのが狙いです。

他にも石油連盟が全国の道府県と覚書を締結し、重要施設(災害拠点病院や防災拠点など)への燃料供給に必要な情報を共有するなどの取り組みが行われています。

民間企業のBCPへの利用方法

上述のように、東日本大震災の教訓から石油供給については様々な見直しが行われています。

初動対応の部分をマニュアル化するのであれば、帰宅困難者向けに災害時帰宅支援ステーションなどの情報に加え、災害対応給油所の場所も事前に把握して記載しておくと良いでしょう。従業員にあらかじめ災害対応給油所の役割を教えておくことで、帰宅困難に陥った際にも給水やトイレに困らなくて済むかもしれません。

普段から石油製品を燃料として利用している企業については、有事の際にいち早く供給状況を確認できるよう、災害対応給油所の住所や連絡先をリストアップしておけば、早期事業再開の大きな一手となるはずです。
参考文献
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