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即興能力を高めてBCPからBCMへ

2011年12月21日
はじめまして。高橋篤史と申します。

突然ですが、みなさんは今年コンサートに行かれましたか?

私は先日、立て続けに二本のライブに足を運びましたいずれも80年代に大ヒットしたグループです。最近では活動の場を減らしているので、残念ながら「過去のバンド」という印象が強いのですが、当時は生で観る機会がなく、CDでしか彼らの楽曲に触れたことはありませんでした。今回たまたま再結成することを知り、特段の期待もなく懐メロを聴きにいくような軽い気分で会場へ赴いたのです。

ところが結果は予想を遥かに上回る素晴らしいものでした。
「音楽は生モノ」であることを久々に実感する機会となったのです。

80年代に若者だったメンバーも今や五十を過ぎ、熟練者となっていました。かつて何度もCDで聴いた音とは全く異なる、現在の彼らの音楽があったのです。

何が違ったのでしょうか?
実は絶妙のアドリブが随所に入ったためでした。演奏家として成熟した彼らは、楽曲をCDと同じように「再現する」だけではなく、場に応じた展開を見せてくれました。つまりそこでしか体験できない唯一の時空間だったのです。

【アドリブ=即興とは何か】

アドリブは演劇や音楽の世界では「即興(インプロヴィゼーション)」とも呼ばれ、非常に高度な技術を要するものです。通常、音楽には楽譜が存在し、予定調和のシナリオに従って演奏が進められるのですが、即興は再現性よりも創造性を重視するもので、演奏者が観客と時間を共有する音楽表現において、より純粋に目的を達成する手段となります。簡単に言うと「先が見えないから面白い」ということです。

しかし単に楽譜から離れ、自由に演奏するだけでは観客の共感を得ることはできません。素晴らしい即興演奏は充分な演奏能力が備わり、楽譜を正確に再現できた上で初めて可能となります。ジャンルを問わず、一流の音楽家(演奏者)は繰り返し練習を積み上げることによって技術を定着させ、本番で最高のパフォーマンスを演じることができるのです。

【BCPの本質は即興にある】

もうお気付きになったかと思いますが、BCPの演習にも全く同じことが言えます。

BCPは不測のリスクに対し、どのように事業を継続させるかを計画します。この結果作られたBCP文書を楽譜に置き換えてみましょう。楽譜をただ正確に再現するだけならば、即興能力は必要ありません。同様に、BCP文書に書かれてある通りに動くだけなら演習をやる意味はないでしょう。しかし事故や災害時には次々と想定外の事態が発生します。そのときに求められるのが、まさに即興能力なのです。発生しうる全てのシナリオに従って行動基準を定めるのは不可能です。BCP文書は一つの指針であり、実際の有事にあたっては、各自がその場での判断、意思決定を状況に応じて迅速に行わなければなりません。

つまり音楽でいうアドリブです。

即興能力を高めるためには、BCPを正しく理解し、シミュレーションを繰り返すことが必要です。BCPの目的はマニュアルをつくることではなく、不測の事態において対応能力を高めることにあります。

「せっかくBCPを作ったのに、有事に機能しなかった。」
というのは演習を怠ったか、重視しなかった結果と考えられます。BCPを作って演習を行わないのは、素人が楽譜だけを持ってコンサートに臨むようなものです。

【どのように演習を行うか】

演習の進め方については当社が具体的なガイドを提唱しておりますが、基本的には次の三段階があります。

1.テスト
 策定したBCPの有効性を検証する。

2.ドリル
 繰り返し行うことにより、BCPを頭と体に浸透させる。

3.エクササイズ
 非常時のシナリオに沿って、意思決定と実践の訓練を行う。

ドリルとエクササイズを繰り返すことによって、想定外の状況にも即興で対応できる柔軟性が生まれます。実施方法には、机上、模擬、実地がありますが、机上が頭の訓練だとすると実地は体の訓練と言えるでしょう。模擬はその中間です。

これらを効果的に組み合わせることにより、即興能力の向上と同時に、BCPそのものの改善点発見とブラッシュ・アップも期待できます。

さて、皆様の中にはこれからBCPを策定しようとしている方、あるいは既に自社のBCPを策定済みの方がいらっしゃるかと思います。是非、来年の計画に演習を導入して下さい。せっかく策定したBCPが、奏でられない楽譜に終わらぬよう、平時から即興能力を高めて下さい。

その活動がBCM(Business Continuity Management)実現の第一歩となるのです。

コンサルタント・コラム

ニュートン・コンサルティング 高橋 篤史

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高橋 篤史

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