共同印刷様

共同印刷株式会社は創業百年を超える老舗の印刷会社です。今回取り組んだグループ全体の方針策定からビジネスメディア事業部におけるBCMS策定、ISO22301認証取得のプロジェクトについて、ビジネスメディア事業部営業企画部の大橋輝臣部長、事務局として携わられた同部事業戦略課の田口裕也課長代理と佐々木洋一様にお話を伺いました。

 

完璧ではなくても、できることを、できる範囲で行う

ビジネスメディア事業部営業企画部部長 大橋 輝臣 様

―貴社の事業内容を教えてください。

大橋: 当社は印刷技術を通じてメディアや文化に貢献するという基本姿勢のもと、出版印刷から始まった会社ですが、事業多角化の一環としてビジネスメディア事業部が誕生しました。連続帳票等の事務用品からスタートし、情報を印字するデータプリントの分野に拡大してきました。2002年1月に竣工した川島ソリューションセンターはこの事業の専用工場です。現在は、コールセンター機能等も含むBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスを提供しています。例えば申込書の印刷、記入されたものの回収からデータエントリー、チェックまでのお手伝いをワンストップで提供するサービスを展開しています。

―BCMSに取り組もうと思われたきっかけは何でしょうか?

大橋: 東日本大震災が起こる前年、同業他社がBS25999を取得すると聞き、当社でも導入するかどうかを議論していました。その後、震災が起こって、世間で頻繁にBCPが語られるようになり、お客様からもBCPに対する要望が高まり、正式にBCMS導入の準備を開始することになりました。

震災によって得られた経験知をBCPに生かす

ビジネスメディア事業部営業企画部 事業戦略課 課長代理 田口 裕也 様

―どのようなBCPを策定されましたか?

大橋: やはり東日本大震災を大きな教訓としています。地震発生は金曜の午後でしたが、土日のうちに機械調整が終わり、月曜日には通常稼働していました。つまり、このレベルの地震の場合、1日半程度あればすべてメンテナンスが終わるという経験知が得られたのです。こうした経験や、お客様からのご要望なども勘案して、操業再開まで72時間、つまり3日という実現可能性の高い目標時間設定を行いました。一方で、1日も遅らせてはいけないというお客様もいらっしゃいます。その場合には「個別案件」と呼び、それぞれの条件に応じて対応することとしました。

最初は既存のものを整理した方が良いとニュートンさんから指導されましたので、「不足している部分がわかればいい、その部分は来年以降の課題にしよう」と明確に取り決めました。最初から100%のものを作るつもりはありませんでしたし、ニュートンさんからも「完璧でなくていい」とたびたび言われましたので、事務局サイドとしてもやりやすかったと思っています。一方で、全社に共通する初動対応マニュアルの策定に関しては、管理部門の多大なる支援を仰ぎました。もともと、当社には危機管理委員会という組織があり、初動対応の基本的なルールはすでにできていましたので、マニュアルも8割は既存のものをまとめ直しただけで、新たに追加したのは1、2割程度でした。管理部門の協力もあり、基本方針が決まったのが2013年1月。3月中旬という早い段階で初動マニュアルができあがったことが、全体を良いペースで進めることができた一番の要因だと思います。

―事務局では、作業で苦労された点はありましたか?

田口: 経営資源の分析が一番大変でした。私たちの仕事は、すべての経営資源を一覧にすると膨大な量になります。各設備が使えないときに、どのような代替案があるのか、また通常の状態に復帰させるにはどのような手順を踏まなければならないのかというところをひとつひとつ整理していきました。大変でしたが、重要な作業だったと感じています。

佐々木: 考え方の違いによって経営資源の数も変わってしまうという中で、意見を統一させて1案ずつ策定していく作業が最も大変でした。代替案をどのように考えるのか、それをいかに早く吸収させるのかについての議論が製造部門との間でありました。

―訓練の結果、様々な課題が出てきたと思いますが。

大橋: 私は課題を「短期的に解決できるもの」「半年ぐらいで解決しなければならないもの」「1年以上かけても解決が難しいもの」という3種類に分けて考えています。 現在は短期的な課題に漏れがないようにしている段階で、それから中長期の課題をどのように着手するかを考えていきます。結論が見えているものを中期的な課題として設定し、スケジュールを決めて、担当者を置いて事務局で管理していきます。どう処理するべきかを考えなければならないような課題は、長期的な課題としています。たとえば認証審査の際に指摘を受けたが、すぐには結論が出ないようなものです。このように、どの時点でどう対処していくかを考えていますが、結論が出ないというのも一つの結論だと思っています。大規模な経営資源を投入しないと解決出来ない課題については、課題シートの中に残しておくしかないと思っています。

選んだ決め手は海外進出企業の支援実績

―ニュートンを選んだ経緯を教えてください。

大橋: お客様からBCPの対応を求められた社員が貴社のセミナーに参加したのが最初のきっかけです。その後、社内でBCMSに関する議論が盛んになり、BCMSのコンサルタントを探させた際に候補のひとつに貴社がありました。我々の事業部のお客様は金融機関や自治体が主ですので、最終的に貴社に決めたのは、イギリス進出している日本の金融機関のBS25999認証取得コンサルタントをされていたからでした。管理部門からの合意も得られ、正式にお願いすることとなりました。

―当社のコンサルタントはいかがでしたか?

田口: BCMSの本などを読んで勉強していたつもりだったのですが、実際にやってみると、どんな種類に落とし込めばいいのかなど、まったくイメージできていませんでした。コンサルタントの方には様々な指導を受け、必死になってそれについていくことができましたので、感謝しています。

佐々木: 最初の段階では全体像が見えにくかったため、実作業を進めながら、次にどのような作業が入ってくるのかという不安が少々ありましたが、個別の作業に関しては丁寧に指導していただき、我々も理解が早かったと思います。

田口: コンサルタントの方がよく「心をこめましょう」と言っていましたが、そのような気持ちは重要だという意識が生まれました。当社の指針は最初の項目が「従業員の命を守る」ですから、事務局として各部門に伝えていくときにも、まず身を守りましょう、皆さんは会社にとって大切な資源なのですということを、しっかり気持ちをこめて言わなければならないと思いました。

担当の声

 

BCMSの本質を理解し、強いリーダーシップを発揮して認証取得を実現

今回のプロジェクトで特に印象に残っているのは、BCMS事務局の強いリーダーシップです。多くのBCP、BCMS構築のご支援をさせて頂いておりますが、プロジェクトにおけるリーダーシップの重要性を改めて再確認しました。

プロジェクトの成否は、明確な目標の設定、期日の設定、関係者への協力依頼といったことが大きく影響します。これらの実施については事務局の果たす役割がとても大きく、今回の共同印刷様のように、大きな組織で複数の関係者が関わるプロジェクトを、事務局がリーダーシップを発揮することによって短期間に成功に導いた事例は、これからBCMSを構築される組織の参考になることでしょう。ポイントとしては以下の3点が挙げられます。

トップマネジメントと意思疎通ができており、議論時の意思決定が早くできた
対象事業に精通しており、業務に関わるキーパーソン、全ての設備を把握できていた
自らBCMSの理解に努め、結果的に関係者にBCMSを教えることができた
今回の最大の特徴は、事務局の皆様がプロジェクトを進める中でBCMSの本質、勘所を理解されていたことでした。

プロジェクトスタート時に、BCMS事務局として各部門への作業指導や意見の取りまとめを事務局に依頼しましたが、それを実現するために大橋様、佐々木様、田口様は自発的にISO22301を学習し、コンサルタントとのコミュニケーションを通して理解を深められました。その結果、議論における意思決定の早さや、文書化にこだわり過ぎることのない、仕組み作りに主軸を置いた作業の進め方といったメリットが生まれ、適切な関係者の協力もタイムリーに得ることができました。

今回のプロジェクトから得られた多くのノウハウに基づき、有効にBCMSを運用していかれるであろう共同印刷株式会社様のこれからの取組を見守っていきたいと思います。

利用サービス

お客様情報

名称
本社所在地 東京都文京区小石川4-14-12
設立 1925年12月(創業:1897年)
資本金 45億1,000万円
従業員数 1,862名(2013年4月期)
代表者 代表取締役社長 藤森 康彰氏
事業内容 出版・商業印刷、データプリントサービス、各種カード、高機能材料など

(2013年12月末日現在)

プロジェクトメンバー

お客様

BCMS-WG ビジネスメディア事業部

営業企画部 部長

大橋 輝臣氏

営業企画部事業戦略課 担当課長

佐々木 洋一氏

営業企画部事業戦略課 課長代理

田口 裕也氏

品質保証部品質管理課 課長

金子 貴志氏

品質保証部品質管理課 担当課長

安田 伊佐武氏

品質保証部品質管理課

本多 拓男氏

初動対応WG

経営管理本部 総合企画部 担当課長

山田 直誉氏

CSR本部 コーポレートコミュニケーション部担当課長

高島 淳一氏

施設環境部部長席担当課長

橋本 康男氏

ニュートン・コンサルティング

取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント

勝俣 良介

シニアコンサルタント

高橋 篤史

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