ITガバナンス構築支援サービスお客様事例 : ネクスティア生命保険株式会社様
そのサービスの根幹を支えられているITソリューション部の木島博征部長と齋藤淳氏に、創業3年目にして本格的な業務改善に取り組まれた経緯についてお話をお伺いしました。
網羅感があり業務品質を向上させる仕組みが欲しい
- ITソリューション部の業務内容を教えてください。

ITソリューション部
部長 木島 博征 氏
木島氏: 当社はオンラインの生命保険サービスを提供しており、ITソリューション部ではそのサービスであるWebサイトに関わるシステム企画、開発および運用を担当しております。企画は主に社内でおこない、開発および運用(サーバーやネットワークのセキュリティ監視、データセンターなど)は外部にアウトソーシングしています。
Webサイトは24時間オープンしておりますので、運用業務は継続して常にあるのですが、現在は創業からまだ2年ということもあり、Webサイトの機能改善や新サービスの追加にともなう企画・開発業務が相当量あります。
- 今回IT運用管理の改善に取り組まれた理由はなんですか?
木島氏: 開業当初はサイトオープンが最優先事項でしたのでそれを実現するために開発をおこない、デイリー・オペレーションに関しては最低限必要な運用ルールや申請書式などを用意して営業を開始いたしました。運用管理の網羅的なマニュアルや規則などはサービス開始後の運用状況を見て、徐々に整備していく予定でおりました。
ただ、情報システムにトラブルはつきもので、日々のオペレーションの中では大中小のトラブルが発生します。こうした個別トラブルにはその場で対応し問題解決しているのですが、やはり網羅的な規則、マニュアルが不十分で非効率になっている部分が増大したため、ここで一度全体を見直し、運用管理規定を策定したいと思うに至りました。
それにあたっては、いわゆるITILベースの管理を現状分析からプロセスの定義、マニュアル/申請書の作成・改善をおこないました。
復旧遅延はビジネスに大打撃
- 具体的に困っていらしたのはどのような事でしょうか?
木島氏: システムにトラブルが発生した際に、復旧に時間がかかってしまうことでした。当社はオンラインでサービスを提供しておりますので、システムが停止するということはお客様の信頼を損ねてしまう危険がありますし、収益にも直接的に影響が出ます。
時間がかかっていた主な理由は、問題解決の手順が必ずしも明らかになっていなかったことと、情報が分散していて原因解明に時間を要することでした。このあたりは生々しい話がいくつもあるのですが、オフレコです。(笑)

ITソリューション部
齋藤 淳 氏
齋藤氏: 開業当初システムを構築したときは構築ベンダーにマニュアルや仕様書などを一式作成していただいているのですが、その後運用ベンダーおよび社内の担当者が逐次加えた変更については、この初期マニュアルの改訂をおこなっていなかったため、情報が一元管理されていませんでした。
改変の際はその都度きちんとした検討プロセス、承認プロセスを経て作業が行われてはいるのですが、では全体として以前と何がどう変更になり、結果として現在はどういう状況なのかという経緯に関してはまとまっているものがなかったのです。
これはトラブルを早期に解決しなくてはならないタイミングでは非常に非効率で、是非とも改善したいポイントでした。
必要なのは「当たり前に実行できる」仕組み
- どのようなIT運用管理を目指されたのですか?
木島氏: ITソリューションの業務はあくまでも縁の下の力持ちで、おこなっている作業も細かく、非常に地味な世界です。でもだからこそ、無理のない運用が必要だと考えています。
ITILというと何か体裁のいいマニュアルや体系だった運用の規程をイメージされるかもしれませんが、そんなものは必要ありません。むしろ、当たり前のことがしっかりと定義されていて、利用している人が当たり前に実行できるものを目指しています。シンプルでパッと見て分かる、利用する全員が理解/共有できて自然に日々のオペレーションがおこなえるものです。そういったものを整備・活用して運用管理ができれば、結果として、人的障害も含めてトラブルが減少すると考えています。
短期集中で策定するためにノウハウのあるコンサルを活用
- 今回のプロジェクトで外部コンサルを活用した理由を教えてください。
齋藤氏: 社内の運用ルールですので、本来であれば社内で作成するべきだと思うのですが、人情としてどうしてもこうしたルール作りよりも日々の運用や開発案件を優先してしまうであろうことは予測がつきました。当初半年の予定で取り掛かっても気がつくと1年経っているという事態になりかねないという懸念がありました。
木島氏: 今回は短期集中である程度のレベルまで一気に持っていきたいということもあり、外部コンサルを活用しようということになりました。
ニュートン・コンサルティングさんとはIT-BCPのプロジェクトでご一緒させていただき、その後も情報共有をさせていただいておりました。その際勝俣さんがIT運用管理に関しても非常にご見識があると感じましたので、勝俣さんと工藤さんにお願いした次第です。
自社に必要なものだけ取捨選択
- プロジェクトの内容を教えてください。
木島氏: ITILの定義するプロセスの中でも優先度の高いものを抽出し、順次作成、運用に移行していきました。特に今まで疎かになっていると感じていた変更管理やリリース管理から取り掛かり、その後必要なプロセスを順次改善していきました。各プロセスは1~2ヵ月単位のプロジェクトで、現状分析、課題特定、マニュアル作成、ロールアウトをおこないました。
- 具体的にはどのような改善をおこなわれたのでしょうか?
齋藤氏: 当社で最もプライオリティが高く一番最初に取り組んだ変更管理についてご説明します。このプロセスは2ヵ月で改善し、既に4ヶ月間運用しています。
変更管理プロセスの改善として取り組んだのは主に、申請手順の一元化による情報の一元化と承認作業の見直しです。
変更管理は日々の運用なので、とにかく数が多いのが特徴です。自分がやったことでさえ、1~2ヵ月経てば忘れてしまいますが、社内の担当者だけでなく運用ベンダーもいる中ではその情報は膨大になります。今までは変更管理の申請が複数の経路(申請書、メール或いは口頭)によっておこなわれていたため、情報が一元化されておらず、何か起きた際にいざ調べようとすると解明するまでに非常に時間がかかる、という問題を抱えておりました。
今回、申請は必ず申請書を用いることとし、尚且つその申請内容によってレベル分けをおこない、重要なものは判定会議(経営会議)を通すことにいたしました。結果として、変更内容が網羅的、構造的に把握できるようになりました。
- この手の改善は作業が増えることが弊害と言われますがいかがですか?
木島氏: 確かに今回の見直しにより、申請書を作成する作業や判定会議に向けての準備など作業が増えたことは事実ですが、それを上回る効果があったと感じています。
あまり良いことではないのですが、今まではシステムに変更を加えることに対する意識が低い場合があったことは否めません。例えば大規模な改修がおこなわれる際にはシステムを停止するので、「わざわざ止めるのであれば、この変更もついでにおこなってしまおう」など、油断して、複数系統の小さな作業を並行して実施してしまってもおかしくないような曖昧な状況でした。
今回ルールを見直したことで、本番システムに変更を加えることの重み付けができました。また、全員が申請書を作成し、それを元にレビューや判定会議をおこなうという手順を繰り返すことによって、「変更に対する品質」が向上しているのを実感しています。
現在はこの新しい手順をアウトソーサーも含めて展開しており、効果を感じています。
キーはヒアリング。手戻りにも柔軟に対応
- プロジェクトで大変だったことを教えてください。
齋藤氏: プロジェクトの最初の頃、ニュートンさんに現状や要件を正確に伝えるのに苦労したところでしょうか。
今回ニュートンさんにお願いした支援は、当社の現状をご理解いただき、それに則した運用ルールや規定を作成していただく、という内容だったのですが、短期間で当社の現状をご理解いただくため、集中的にヒアリングをおこなっていただきました。ただ、このヒアリングできちんと現状をお伝えする、という事が実は非常に難しかったのです。

つい「これもやりたい」という欲が出てきてしまうんですよ。
そこを上手く調整していただきました。
木島氏: 例えば、ニュートンさんから特定のプロセスが現状でも存在するか、と聞かれるとします。当方としては、確かにそれに類するようなステップが社内にあるにはあるが、プロセスと呼べるほどの仕組みではないと勝手に考え、ついつい、ない、と答えてしまう。しかし、その後ニュートンさんにマニュアルを作成していただいた時点で、新しいプロセスがはっきりと見えてくると、いややっぱり、ある、と答えるべきだったなと。
或いは、ヒアリングの際には欲張って含めていただこうと思ったものが、結果として全体プロセスを重くしてしまうので考え直す、もしくは、ヒアリングの段階では必要ないと言ったものが後から考えるとやっぱり必要だということに気づいたということもありました。
もちろん、よりよいプロセスを作っていくためには、こういったある程度の試行錯誤はむしろ必要なことであったとは感じていますが、ニュートンさんはこうした状況も、できる限り、私どもの負担が軽くなるようにするために、ヒアリングの仕方を工夫していただいき、手戻りがあっても柔軟に修正できるように対応してくださいました。
今後はパッケージ商品を活用してシステムでの運用
- 今後はどのようなことに取り組まれるのですか?
齋藤氏: 今回は初めて統合的な運用の仕組みを導入しましたので、とりあえず紙ベースでの運用をしています。この仕組みについて改善を繰り返し、ある程度の品質になったら、ワークフロー的なシステムに是非移行したいと考えています。
世の中にはその手のパッケージ商品は多いのですが、現場にルールやプロセスがない状態で導入しても機能しませんし、多彩なオプション機能に惑わされて不要なプロセスを盛り込んでしまう危険性もあります。今回のようにあくまでも現場が順調に稼動するようになったら、それを実現/推進するようなシステムを導入したいと思っています。
木島氏: 運用管理に関してはほぼ整理が完了しましたので、今後は見直し改善を続けていきます。ただ、システムは生き物で大きくなるなど変化するので、それを支える運用管理のルールも進化させていこうと考えています。
親身なコンサルティングと柔軟な対応を評価
- 当社のコンサルティングはいかがでしたか?
木島氏: 勝俣さん、工藤さんにはすごく親身にご支援いただきました。ビジネスライクではなく、我々の目指しているところを真に理解していただいて、且つ誠実にご対応いただきました。これはニュートン・コンサルティングさんの最大の良い点だと思います。
齋藤氏: 今まで色々な会社を見ていらっしゃるので、非常に妥当なものを作っていただきました。何もないところからルールを策定しようとすると、担当者の好みに偏ったり、スコープを広げすぎたりなど軸が定まらないことが多いのですが、早い段階からイメージがついたのはご支援をいただいたからです。お陰様で現実的に進めていくことができました。
あとは、当方の事情に合わせて柔軟にご対応いただきました。先ほどの話にもあったようにヒアリングの段階とは違う方向にして欲しいと途中で方針を変更したり、スコープ自体を見直したりしたのですが、その際にも納期までに確実に納品いただきました。
現実的な目標設定で早期の効果実現
- 現在IT運用管理改善を考えている企業に先輩としてアドバイスをお願いします。
齋藤氏: 目標を具体的に定めること、現実的なゴール設定が重要です。
当社もそうでしたが、こうした取り組みをすると欲張って必要のないものを策定したり、漠然と正しそうなものを取り入れたりと軸がぶれることが往々にしてありますが、そうしないために、もっと目に見える目標を定めることをオススメします。
木島氏: 現場目線で日々ある「まずい点」を解決する、というスタンスは有益です。
例えば、コミュニケーションが不足して連携がうまくいかなかった、という事象が認められたなら、それを回避するためにはどのようなルールが必要なのか、ということを考えればよいのです。分かりやすいし、結果も早く出ます。当社のように実際の効果を早期に実感いただけることと思います。
-今日は貴重なお話をありがとうございました。
| 称号: | ネクスティア生命保険株式会社 |
|---|---|
| 本社所在地: | 東京都千代田区麹町三丁目3番地4 KDX麹町ビル8階 |
| 設立: | 2006年10月 (営業開始:2008年4月) |
| 資本金: | 6,340百万円 |
| 代表者: | 代表取締役社長 今井 隆 |
| 事業目的: | 生命保険業 |
| URL: | http://www.nextialife.co.jp |
(2010年5月12日現在)
今回、ネクスティア様のプロジェクトを成功裏に進めることができているのは、最初に「生きた組織に導入するプロセスは、つくるものであり、何かのコピーではいけない」という根本的な価値観をお客様と共有できたためです。
ITガバナンスに限らず業務の仕組みを改善するようなプロジェクトが失敗するのは、「自社に適したプロセスではない」、「PDCAがまわらない」ものを導入した結果であることが多いと感じます。これを招くのは、商用ソフトウエアのテンプレートや、コンサルなどから与えられた雛形をそのまま使ってしまうなど、単にプロセスをコピーしてしまう場合です。単なるテンプレートの流用は本質的な理解がないまま、プロセスだけが導入されることになります。「なぜ、ここに承認が必要なのか?」「なぜ、このような記載項目を設けるのか?」といった理由がわからなければ「何を変えればプロセスの改善ができるのか?」の答えも出てきません。このような環境下ではスタッフの“考える”という思考能力すらも育ちません。
ネクスティア様では、プロジェクトに携わった全員がイチから考え抜いたプロセスだからこそ、数ヶ月経つ今、しっかりと運用に移されているのだと思います。特にこのプロジェクトは継続的にご支援させていただいているだけに結果に対する責任や喜びを共有できる貴重な経験となっています。



