2006年の設立以来、2,300社以上のリスクマネジメントをご支援してきたニュートン・コンサルティング。時代とともに複雑化するあらゆるリスクにお客様と共に対峙し、走り続けてきました。環境が激変する今、企業が持続可能な成長を続けるために本当に必要なこととは何なのでしょうか。当社でERM(全社的リスクマネジメント)コンサルティングのソリューションオーナーを務め、チーフ・ストラテジー・オフィサーとして社内の経営戦略も統括する坂口貴紀が、そのヒントを紐解きます。
CStO 兼 エグゼクティブコンサルタント
坂口 貴紀
大学卒業後、教育関連事業会社に入社。2009年、同社倒産を経験し、人材育成関連事業のベンチャー企業立ち上げに参画。商品開発等の責任者として従事した後、大手人材派遣会社での法人営業を経て当社入社。IT、金融、その他業界におけるBCM・ERM構築、評価、アドバイザリーなどのプロジェクトをリードする傍ら、BCM及びERM事業責任者を歴任。
勤務先の倒産経験を踏まえ事業継続・リスクマネジメントの重要性を日々訴えかけている。CIA(公認内部監査人)、CFE(公認不正検査士)の資格を保有。
複雑化の一途をたどるリスク環境。それでも事業を持続させるためには
この20年で、リスクマネジメントを取り巻く環境は激変しています。企業に求められる社会的役割が拡大・高度化しているほか、地政学リスクの高まりもあり、先行きはますます不透明です。しかし、企業が社会的役割を果たし、ビジョンを実現していくためには、リスク環境の複雑化を前に停滞するのではなく、むしろ変化に適応し、前進し続ける強靭さ(レジリエンス)が求められます。リスクマネジメントを守りに終始させず、新しい価値を創造するための戦略的基盤にすることが、持続可能な組織であるためのカギといえます。
昨今、大手企業や大学などで、ハラスメントなどの人権侵害や会計不正などのガバナンス問題といった重大事案が次々と明るみになっています。私はCIA(公認内部監査人)やCFE(公認不正検査士)の資格を持ち、内部統制・不正調査の専門家として多くの企業の内部構造を見てきましたが、これらの事案に共通しているのは、「自分たちにとっては長年当たり前だった自組織の常識ともいえる慣習が、組織の外側から見れば到底許容されない大問題であった」という点です。
私たちはつい、自分たちが属する社会や組織の常識と照らし合わせて「正しさ」を測りがちです。しかし、少し視点を変えてみると、その常識はコンプライアンス違反や人権侵害、不正にあたるかもしれません。あるいは、もしかしたら今後、社会の変化にともなって、その常識は通用しなくなる可能性もあります。「うちは大丈夫だろう」と慢心することこそ最大のリスクといえます。どれほど盤石に見える企業であっても、叩けば何かしらの課題は出てくるものです。大切なのは、それに目をつぶったり隠したりすることではなく、自ら課題を直視し、自浄作用を働かせて根本的な改善を絶えず行うこと。それができない企業は、最終的に社会的信用の失墜に直面することになるでしょう。
閉ざされた「内輪の常識」に風穴を開ける
とはいえ、自社の常識を疑い、課題に気づくのはなかなか難しいものです。そこで役に立つのは、これからお話しする3つの視点だと考えています。
1つ目は、国内外で整備が進んでいるサステナビリティ基準と自社の現状を照らし合わせることです。欧米主導で整備が進む法制度や基準には、人種差別や人身売買といった歴史的な背景も色濃く反映されています。日本企業がこれらに対峙する際に重要なのは、こうした国際水準が何を求めているのかを本質も含めてきちんと理解することです。盲目的に要請にすべて応えることも、「他国の話だから」と検討の外に置くことも、どちらも望ましくありません。自国の常識が世界の非常識でありうることを認識した上で、自国や自社の状況と照らし合わせたときにどこに着目すべきなのかを考える必要があります。
2つ目はAIの適切な活用です。サステナビリティの文脈に限らず、企業が向き合うべきリスクや準拠すべき基準・法制度は年々増えています。こうした状況下で、リスクの特定や分析、評価などを人間が全て手作業で行うのは困難になるでしょう。ここで重要になるのが、AIの情報処理能力と人間の判断力・対話力を組み合わせることです。情報の収集・整理やデータの処理、マニュアル策定といったAIが力を発揮できる領域はAIに委ねる。逆に、人間は組織内の議論を深めることや、一人ひとりの感情や価値観と向き合うことなど、「人間ならではの深い対話」に時間を割くべきです。何を重要なリスクと捉えるのか、どこまでリスクを取るのか、どのような未来を選択するのか、最終的な経営判断は人間にしかできません。AIが導き出す論理的な解を受け止めた上で、最終的には人間が覚悟を持って意思決定する。この役割分担こそが、スピーディで柔軟なリスク対応を可能にします。
そして3つ目は、第三者の視点を取り入れることです。当社は独立系のコンサルティング企業で、どこの資本にも属さない客観的な立場から発言できるという強みを持っています。また、当社が設立当初から重視しているのは、経営層へのトップインタビューを通して、企業として目指したい姿や最悪の事態を整理することです。リスク環境が高度化・複雑化の一途をたどる今、経営層の懸念や意思を丁寧に聞き取り、それを現場に落とし込みながら、対応策を全社で検討することはますます重要になっていると感じます。
私は現在、ニュートン・コンサルティングでERMをはじめとしたコンサルティングに携わるほか、社内では戦略を統括しています。今期より全社のコンサルティング部門を統合した新体制へ移行しており、ERMやBCPの専門チームと、ITやサイバーの専門チームがさらにフラットかつ強力に連携する『One Team』を構築しています。ありたい姿に向かって挑み続けるお客様の課題を解決するため、より柔軟かつ多角的にこれからも伴走してまいります。