本書は「BCM・BCPの初級者向けの構築ノウハウ本」です。約240ページの分厚さで、大きく「導入編」「実践編」「発展編」の3部構成をとっており、「導入編」~「実践編」が初級者向けで「発展編」がやや中級者向けといった感じです。
一番のメリットは、”読みやすさ/理解のしやすさ”だと思います。BCM・BCPの構築対象を、明確に”中小企業(~100名程度の人員)”と想定して解説しているため、比較的容易に構築イメージを持ちながら読み進めることができます。また、一般的に、複雑かつ面倒になりがちな分析(事業インパクト分析(BIA)やリスク分析など)を極力、単純化した手法にとどめて解説していることも理解を手助けしてます。さらに、添付のCDにサンプルドキュメントがいくつか入っており、実用性をかなり意識した作りになっていることも特徴的です。
”分析の単純化”という点では、(良い悪いの議論は別として)たとえば本書では、BS25999などでも触れているようなMTPD(最大許容停止時間)やRTO(MTPDおよび業務依存関係、業務委託先のBCMへの取り組み状況など複数の要素を加味した上で設定する復旧目標値)と言った言葉の区分けをせず、RTO(本書では「これ以上業務の停止が長引くと事業に深刻な影響が出る」と定義)という一言にまとめて使っています。
このように、”理解しやすさ”が特徴的な本ですが、その分、当然のことながら「より深くBCM・BCPについて知りたい」といった人には物足りない可能性があります。例えば「BCPの検証」(エクササイズ:演習)の解説は、5ページ構成であることからも想像できるとおり、比較的浅いレベルの解説にとどめられています。また、あくまでも”BCPの策定”に主眼をおいているため、「BCMって何?」「BCMを取り巻く最新動向は?」、「その他BCM・BCPの関連情報は?」といった、うんちく的な情報を記載しているような、いわゆる「かゆいところに手が届く」本という位置づけではありません。
「どんな形で、有効なBCPの策定を進めていけば良いのか?」といったことについて、実際に具体的にイメージを持って、BCP構築全体感を理解したい人、あるいは、BCPやBCMを学術的・科学的に考えに陥りがちな人で一度頭をリフレッシュさせたいような人に、特にお勧めできる本です。