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書籍紹介

新版 実践BCP策定マニュアル

2015年08月26日

本書は、2008年度版からの大改訂版

「新版実践BCP策定マニュアル」は、2008年3月に九天社より出版された昆氏の「実践BCP策定マニュアル-事業継続計画の考え方と作り方」のメジャー改訂版です。新書は約220ページから構成されており、全体としては以下のような構成となっています。

【目次】 第1章:事業継続の基礎
第2章:事業継続計画の策定
第3章:事業継続マネジメントへ
第4章:さまざまな対策
付録1:サンプル文書集
付録2:多角的な影響度指標
用語集

「実践性」が最大の特徴

本書は、2008年度版と同様に「実践性に重きがおかれている」点に最大の特徴があります。その他にも、以下のような特徴を持ちます。
【本書の特徴】

  • 実際の構築についての解説

  • 丁寧な解説

  • 構築に関係のある内容にフォーカス

  • 従業員数50~100名程度を想定   (但し、企業規模にとらわれ過ぎないような解説に留意されている)

また、上記特徴をより強化するために、本書では大きく以下の3つの観点で改訂がはかられています。

  • 全体の章立ての見直し

  • 新型インフルエンザについての解説

  • 事業継続マネジメント(BCM)についての解説の補強

「全体の章立ての見直し」についてですが、特に「構築の流れ(フロー)」を強く意識した作りになっています。たとえば2008年度版では、目標復旧時間(RTO)は、あくまでも補足的な位置づけとして説明の流れの外におかれていましたが、新書では「事業継続計画策定」の構築ステップの説明の中に組み込まれています。

「新型インフルエンザについての解説」については、これは約6ページ構成となっており、本書のBCP策定のオプション的位置づけとして構築の際に留意すべき点について新たに触れています。

最後に「事業継続マネジメント(BCM)についての解説の補強」については、BS25999の普及しつつある現状を強く意識された内容に改訂されています。エクササイズ(演習)もさることながら、適用範囲の決定や企業文化への定着に関わる解説など、PDCAを強く意識した構成となっています。

読むべき人はBCMの構築担当者

本書は、”実践”に重きがおかれていることから、事業継続マネジメント(BCM)の構築担当者が主な対象となるでしょう。

規格やガイドラインの説明だけでは、まだ、構築のイメージがつかめない人は、本書も併用しながら勉強することで、イメージを持つための手助けになると思われます。

真の”実践”のためには、読む人の心がけも必要

本書には、具体的な構築ステップだけでなく、帳票(例)や文書(例)なども記載されています。ただし、本書を読まれる方は、何も考えずにそれをそのまま自組織に適用しないような心がけを持つことが極めて重要だと思います。というのも、帳票や文書のテンプレートを利用することは、確かに作業の効率化を図る上で大きな意味を持ちますが、逆に構築担当者の頭を硬化させる(考えることをやめさせてしまう)リスクを伴うからです。

「何のためにその分析を実施するのか?」
「その分析をするのになぜこのような項目が帳票に必要なのか?」
「なぜ、このような項目が文書化されたほうがいいのか?」

などといった事項を正しく理解した上で、導入を進めていかないと、フタを開けてみたら実は「帳票にあるこの項目が意図することと全く違う答えを記入して分析してしまっていた」なんてことが出てくるかもしれません。また、構築がおわった後(次年度以降)、何をどう改善していけばいいのか、道筋が見えなくなるという落とし穴に陥る可能性もあります。

こういったことに十分、留意した上で構築を進めることが、本当の意味での”実践”につながるのだと考えます。

(執筆:勝俣 良介)