経済産業省は1月23日、企業が経済安全保障上のリスクを経営戦略に組み込むための指針となる「経済安全保障経営ガイドライン(第1版)」を策定・公表しました。昨年11月に公表された「案」に対する意見公募(パブリックコメント)の結果を反映し、サプライチェーンにおける供給先の集中リスクや人材育成の重要性を新たに盛り込むなど、内容が拡充されています。
かつてはコスト競争力や在庫の最小化を追求するグローバル化が主流でしたが、近年は先端技術を巡る国家間競争の激化や、物資の取引を政治的な圧力として利用する「経済の武器化」など、国際情勢が急変しています。
本ガイドラインは、こうした環境下で企業が持続的に成長するために、他国への過度な依存を避ける「自律性」の確保と、国際社会にとって代わりの効かない存在となる「不可欠性」の確保を二本柱として掲げました。政府はこれらへの取り組みを、単なるコストではなく、将来の損失を防ぎ企業価値を高めるための「投資」と捉えるよう経営者に求めています。
ガイドラインでは、経営層が認識すべき原則として(1)リスクシナリオの策定、(2)「投資」としての認識、(3)対話の実施――を挙げています。自社のサプライチェーンやコア技術を可視化し、有事の際のリスクを具体的に想定し(1)、経済安保対応をコストとみなさず、経営を守る投資へと意識を変革させ(2)、取引先・株主・政府などマルチステークホルダーと平時から連携・対話を欠かさない(3)ことを推奨しています。
パブリックコメントを基に表現の修正や追記が行われました。例えば、「自律性確保の取組」(4-1)に供給の集中リスクについて追記されました。パブリックコメントでの「供給先を特定の国や地域に依存することもリスクである」との指摘を受け、調達面だけでなく、自社の製品を供給する市場が特定の国に集中することもリスク要因であると明文化されました。
「経済安全保障対応におけるガバナンス強化」(4-3)では人材育成について追記されました。経済安全保障対応を中長期的な経営に活かすため、経済安全保障に知見・経験を有する人材の育成も有用であると記され、付録のチェックリストにも項目が足されました。