最大のリスクは「武力紛争」から「地経学的対立」(経済の武器化)へ、グローバルリスクレポート2026を公表 世界経済フォーラム
世界経済フォーラム(WEF)は1月14日、21回目となる「Global Risks Report 2026」(グローバルリスクレポート2026)を発表しました。2026年から10年間の見通しを示した同報告書は、AIや量子技術などの重要技術が単なる産業競争ではなく、国家安全保障の問題に発展しているほか、貿易や金融、投資が相手国を圧迫する武器として使われ、多国間協力の枠組みが後退する「競争の時代」に突入したと指摘しました。
グローバルリスクレポート2026は2025年8~9月に世界各国の識者1,300人以上を対象に実施した調査を取りまとめたものです。「2026年に世界規模で重大な危機をもたらす可能性が最も高いと思われるリスク」といった現在のリスク(Current risk)のほか、向こう2年間の短期的リスク、10年間の長期的リスクについて重要度(深刻さ)を順位づけて公表しています。
それによると、まず現在のリスク(2026年単年)の1位は「地経学的対立」で、前年1位だった「国家間の武力紛争」を抜いて首位に。「国家間の武力紛争」は2位に、続いて「異常気象」(8%)、「社会の分断」(7%)、「誤報と情報操作」(7%)が続きました。
地経学的対立とは、国家が政治目的で経済力を使い、他国の行動を変えさせる動きを指します。ウクライナや中東などでの戦争が続くなかでもそれ以上に大国が戦略的優位性を狙って貿易、金融、技術を「武器」として利用する動きが、国際秩序を揺るがす最大の要因になっていると分析しています。
今後2年間の短期的リスクの1位も「地経学的対立」となりました。2位は「誤報と情報操作」、3位は「社会の分断」でした。他方、今後10年間の長期的リスクの1位には「異常気象」、2位は「生物多様性の喪失および生態系の崩壊」、3位は「地球システムの重大な変化」となり、上位10のうち5つが環境分野となりました(残る2つは「天然資源の不足」と「汚染」)。地経学的対立による関税やサプライチェーンの遮断が、環境問題に関する多国間協力の可能性を弱めていると指摘しています。
また、今後2年間の短期的リスクでは30位と下位だった「AI技術の悪影響」は、今後10年間の長期的リスクでは5位に急浮上しています。将来に向けて最も懸念が拡大している項目となりました。
このレポートはグローバルリスクを多方面から特定・分析しており、ステークホルダー別の順位も掲載しています。それによると、政府、企業、市民社会などすべてのステークホルダーが、「地経学的対立」もしくは「誤報と情報操作」を今後2年間の短期的リスク1位・2位に選んでおり、認識が一致しました。他方、長期的リスクの1位は「異常気象」となり、全ステークホルダーで一致しました。
世界経済フォーラムが2025年3~6月に実施した「経営者意識調査」の結果も付録資料として収録されています。「あなたの国にとって今後2年間で最大の脅威となる可能性が最も高いリスクはどれですか」という質問に対し、日本の経営者は1位に「労働力または人材不足」、2位に「異常気象」を挙げました。一方、米国では「経済不況」が1位、ドイツでは「AI技術の悪影響」が1位となりました。
グローバルリスクレポート2026の詳細についてはこちらで解説しています。