「東南アジアにおける責任ある企業行動と人権尊重のための調査」を公表、人権デュー・ディリジェンスの推進を促す JETRO
日本貿易振興機構(JETRO)は2026年1月、「東南アジアにおける責任ある企業行動と人権尊重のための調査」を公表しました。
本レポートによると、東南アジアに進出している日系企業の事業活動やサプライチェーンにおいて、人権デュー・ディリジェンス(人権DD)は進展していません。その背景には、「具体的な手法が分からない」「現地拠点の資源・人的ソースが限られている」といった課題があります。そこで本レポートは、各国の課題をまとめた上で、企業に求められる行動を示しています。
まず、各国の調査結果について、例えばミャンマーではクーデター以降の労働組合への弾圧や、児童労働、レアアース採掘に伴う環境破壊が指摘されています。
カンボジアについては、衣料品・アパレル産業において、低賃金や賃金未払いなどの問題などが指摘されています。フィリピンでは、労働組合や人権擁護者に対する武力行使や殺害を含む弾圧などが深刻化しています。
タイでは、近隣諸国からの移住労働者が、高額な就職斡旋手数料による債務、長時間労働、強制労働に直面しています。ベトナムについては、電子機械産業で働く国内移住労働者の女性が医療アクセスを制限され、高額な医療費を負担している点などが挙げられています。
インドネシアについては、工業団地で安全管理の不備による爆発や感電などの死亡事故が相次いでいる点などが指摘されています。マレーシアは、難民や移住労働者に対する排斥言説が増加しているなどの課題を抱えています。
ラオスについては、外資誘致の名目で設立された経済特区が、児童売買やオンライン詐欺、マネーロンダリングといった国際犯罪の温床になっていることなどが指摘されています。シンガポールでは短期の研修用就労許可制度が悪用され、低賃金労働者が搾取的な環境を強いられる事例が確認されています。
こうした課題を踏まえ、本レポートは、企業に求められる行動として3つのポイントを提示しています。1つ目は「ステークホルダーエンゲージメント」です。単なる質問票による自己評価にとどまらず、実際に影響を受けるライツホルダー(権利主体)と直接対話をしたり、現地拠点と協働を進めたりすることが重要だとしています。2つ目は「移住労働に特化した取り組み」です。移住労働者の採用から帰国に至るプロセス全体をマッピングし、把握することなどが求められます。3つ目は「法令遵守と人権DD」です。東南アジアでは法的保護が不十分な「インフォーマル経済」の割合が高く、現地の法律を守るだけでは労働者の脆弱性に対処できない恐れがあるため、予想される負の影響を防止する策を検討する必要があるとしています。
レポート後半では、好事例集や、自社の取り組みにおいて見落としがちなポイントを確認するためのチェックリストも掲載されています。