サステナビリティ基準委員会(SSBJ)事務局はこのほど、SSBJ基準適用についての解説書「SSBJハンドブック」の新たな文書2点を公表しました。SSBJハンドブックは、SSBJに寄せられた質問のうち、特に関係者のニーズが高い論点について解説を行い、文書として取りまとめています。
今回、新たに公表された文書は以下の通りです。
- SSBJ基準の適用にあたり、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.7)」を参考にする際の留意事項
- スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって1次データ及び2次データがいずれも利用可能な場合
これらの文書のうち、「スコープ3温室効果ガス排出の測定にあたって1次データ及び2次データがいずれも利用可能な場合」では、企業がスコープ3(※1)の温室効果ガス排出量を測定する際、企業活動やサプライヤーなどから直接入手した「1次データ」と、データベースおよび政府統計などの産業平均データを含む、データ・プロバイダーにより提供される「2次データ」の両方が利用できる場合に、どちらのデータを使用するのかを判断する際の参考情報が提供されています。
SSBJ基準第70項では、「スコープ3温室効果ガス排出」の測定に用いるデータを決定する際、以下の考慮すべき4つの条件を定めており、順不同で考慮しなければならないとされています。
- 直接測定によるデータがある場合には、見積りによるデータよりも優先しなければならない。
- 1次データがある場合には、2次データよりも優先しなければならない。2次データを用いる場合、データが企業の活動をどの程度忠実に表現するかについて考慮しなければならない。
- バリュー・チェーンにおける活動及び温室効果ガス排出が行われた法域、並びに当該活動を遂行する方法を忠実に表現する適時のデータがある場合には、そうではないデータよりも優先しなければならない。
- 検証されたデータがある場合には、検証されていないデータよりも優先しなければならない。
これに加え、SSBJ基準B8項では、「他のすべての条件が同じ」であれば、企業のバリュー・チェーンの実態をより反映する可能性が高い「1次データ」の使用を優先しなければならないと定めています。
一方、「他の条件が異なる場合」も想定されます。この場合の判断は、「温室効果ガスプロトコルのコーポレート・バリュー・チェーン(スコープ3)基準(2011年)」で示されている「データの粒度(レベル)」を取り上げ、粒度の高い「製品レベルの2次データ」が、「企業レベルの1次データ」よりも優先して用いられる場合もあると解説しています。
例えば、スコープ3のカテゴリー1(購入した財及びサービス)の排出量を測定するにあたり、「サプライヤーから入手する企業レベルの1次データ」と「データ・プロバイダーにより提供される製品レベルの2次データ」両方の利用が可能である場合を挙げています。
通常は1次データが優先されますが、この両者(「企業レベルの1次データ」と「製品レベルの2次データ」)を比較した場合、データの「粒度(レベル)」が異なることが想定されます。これにより、前提となる「他のすべての条件が同じ」とはいえなくなるため、SSBJ基準第70項の諸条件を総合的に検討し、どちらのデータを用いるのか判断する必要があるとしています。
このほか具体例としては、「企業レベルの1次データ」が報告期間の1年前のデータで、「製品レベルの2次データ」が報告期間と同じ期間のデータであるケースでは、第70項の(3)の条件を考慮し、2次データの方を使用することが適切であると考えられると明示しています。他にも、3つの具体例が挙げられています。
(※1)SSBJ基準における温室効果ガス排出量についての3区分の一つ。スコープ3は、指定された15カテゴリー別に分解して開示しなければならないとしている。