日本取締役協会は2月27日、「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する提言」を公表しました。前日の26日には、金融庁と東京証券取引所が事務局を務める「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」が5年ぶりの改訂に向けたコーポレートガバナンス・コード案(CGコード案)を公表しており、提言は改訂案に歩調を合わせる形で示されました。なお、同協会は有識者会議にオブザーバーとして参加しています。
提言は、これまでの形式的なガバナンス対応から脱却し、企業の持続的な成長に向けた「実質化」を強く打ち出しています。
具体的には、「成長投資の優先」と「短期主義の是正」について踏み込んで言及しています。金融庁の有識者会議が2月26日に示した改訂案では、企業が保有する現預金について投資などに有効活用できているのか、経営資源の配分を検証し、企業は持続的な成長のために具体的に何を実行するのかを説明すべきとされています。提言においても短期的な株主還元要求に安易に応じるのではなく、設備投資や研究開発、人的資本への投資を優先すべきだと主張しています。こうした投資を経てその成果を株主に還元するという「順序」を明確にし、中長期的な企業価値創出を重視する経営の必要性を訴えています。
また、取締役会が持つ監督機能を強化するよう提言しています。独立社外取締役の「質」の向上を急務とし、研修体制の充実や少なくとも東証プライム上場企業における社外取締役による実効的な指名機能の整備を求めています。特に「有事」においては保身を捨て業績不振や不適切な振る舞いがあったCEOなどの経営陣の解任(交代)を決定することが独立社外取締役の最大の使命であると主張しています。
実質的な議論を支える基盤として、取締役会事務局(コーポレート・セクレタリー)や法務最高責任者(CLO)の機能強化についても言及しています。高度な法的判断を伴う事案が増加していることを背景に、専門組織の重要性が高まっているとしました。有識者会議が公表した改訂案においても、社外取締役の「質の確保」が新たな原則として新設されたほか、解釈指針に「いわゆる取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化」が明記されています。
株主との対話を充実させるための実務的な改善策も提示しています。少なくとも東証プライム市場の上場企業が、株主総会の3週間前までに有価証券報告書を開示するためには、現行のスケジュールのままでは困難であり株主総会の開催時期を後ろ倒しすることが現実的であると指摘しました。有識者会議の改訂案でも、3週間前開示の実現に向けて総会開催日を「後ろ倒しすることも含めて検討すべき」とされており、提言はこれを後押しする内容となっています。
有識者会議はコーポレートガバナンス・コードについて「原則主義(プリンシプルベース)」と「スリム化」の方針を掲げています。日本取締役協会はこの方針に賛同した上で、現場における実践的な行動指針を提示しました。