内閣官房と金融庁、経済産業省は3月23日、企業が人的資本に関する情報を適切に開示するための「人的資本可視化指針(改訂版)」を公表しました。改訂は約3年半ぶり。企業価値の向上につながる質の高い人的資本投資の実践と開示の好循環を促すため、国際的な開示基準を踏まえた具体的な考え方やステップが新たに盛り込まれました。
2026年3月期から有価証券報告書で「企業戦略と関連付けた人材戦略」の開示が義務付けられました。一方、2022年に公表された旧指針では、経営戦略と人材戦略を連動させることの重要性は指摘されていたものの、具体的なステップの記述は限定的でした。各社の情報開示に対して投資家からは、企業価値向上に向けた経営戦略の実現に向けて、必要な人的投資が行われているかが見えにくいとの指摘も上がっていました。
企業が経営戦略を実現するためには人材戦略が重要な役割を果たします。戦略を達成するためには高度な専門人材などが必要となりますが、その達成には、優秀な人材を惹きつけ、維持する「企業の能力」に依存します。そして企業の能力は、企業が適切な賃金水準の提示や教育、職場環境の整備などにどう投資していくかに左右されるという相互関係があります。改訂版ではこれらを踏まえ、経営戦略と人材戦略を連動させるための具体的なフローを提示しました。具体的には、「人的資本への依存・影響」と「人的資本関連のリスク・機会」という2つのステップを介して説明しています。
詳しく説明するために、新たに別紙「戦略に焦点をあてた人的資本開示~投資家の期待に応えるための考え方の整理~」も用意されました。別紙では、「経営戦略と人材戦略の連動」についてISSB の考え方を踏まえて解説した上で、サステナビリティ開示基準に示された「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの要素を踏まえた人的資本の開示について説明しています。
「指標及び目標」における指標の設定については、企業固有のビジネスモデルに沿った「独自性のある指標」と、投資家が企業間比較に用いる従業員数・人件費・離職率・従業員エンゲージメントスコアといった「比較可能性の高い指標」があります。これらの指標をバランスよく設定し、論理的なストーリーとして開示することが求められています。
改訂に伴い、「付録」も更新されました。第1弾として付録①「経営戦略と人材戦略の連動及びそれを踏まえた指標の開示事例」が公開されました。付録①は企業事例集(全10社)であり、各社が自社の経営戦略を実現するために、どのような人材戦略を実行し、それをどのような指標(KPI)で測っているのかという一連のストーリーが紹介されています。なお、付録は「人的資本に関する開示基準・開示事項例の整理」(付録②)と「参考資料集」(付録③)が今後、公開予定となっています。