政府の「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」はこのほど、次期「総合物流施策大綱」の策定に向けて今後の物流政策の方向性を示す提言を取りまとめました。物流を「新たな価値を創造するサービス」へと転換させるための5つの観点が示されています。
5つの観点とは、サービスの供給制約に対応するための徹底的な物流効率化▽物流全体の最適化に向けた商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容、産業構造の転換▽持続可能な物流サービスの提供に向けた物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改善▽物流に携わる多様な関係者の連携・協力による物流標準化と物流DX・GXの推進▽厳しさを増す国際情勢や自然災害等に対応したサプライチェーンの高度化・強靱化――です。
このうち「厳しさを増す国際情勢や自然災害等に対応したサプライチェーンの高度化・強靱化」では、大規模自然災害等に備えた物流ネットワークや経済安全保障、サイバーセキュリティの確保などについて触れられています。
2024年の能登半島地震では、道路や港湾が甚大な被害を受けました。これにより、初動における被災状況の把握や復旧などの対応が困難となったことから、物流ネットワークの耐災害性を強化する必要性が再認識されました。
提言では、災害に強い幹線道路ネットワークの構築(高規格道路の未整備区間の整備や暫定2車線区間の4車線化など)を推進すると明記しました。また、災害時のラストマイル配送を含む円滑な支援物資体制を確保するため、平時から市区町村と物流事業者団体との間で連携訓練の実施や災害連携協定の締結を促します。あわせて、物流事業者の事業継続計画(BCP)策定を推進するほか、支援物資の拠点となる物流施設への非常用電源設備の導入支援、孤立集落への物資輸送手段としてのドローンの活用などを進めるとしています。
厳しい安全保障環境や社会経済情勢の変化などに伴い、サプライチェーンの脆弱性が顕在化しています。提言では、トラック運送業や港湾、航空などの物流インフラを国家の安全保障に直結する「基幹インフラ」と位置付け、「経済安全保障推進法」や「サイバーセキュリティ基本法」に基づく対応を着実に進めるとしています。また、国際物流の新たなBCPルートを開拓するとして「中央回廊・カスピ海ルート」の開拓などが盛り込まれました。
物流分野におけるサイバー攻撃への対応強化は、2023年7月に名古屋港でサイバー攻撃によるシステム障害が発生し、コンテナターミナルの作業が停止した事態などを教訓としたものです。提言では、サイバー攻撃を想定した訓練の実施や、情報処理推進機構(IPA)のプログラムを活用した人材育成を通じ、事業者の対応能力を向上させる方針が示されています。