東京都は3月31日、昨年4月に施行された「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」の実態を探るため、都内の企業と従業員を対象に実施した実態調査の結果を公表しました。条例で定められた「事業者の責務」について規定の存在を知っている企業は83.8%に上りましたが、その「内容まで知っている」と答えた企業は4割弱にとどまったほか、企業規模や業種によって被害の実態や対策状況に差があることがわかりました。
調査は条例施行から6カ月後の2025年10月に実施されました。有効回答数は企業から4,727件(都内15業種、回収率23.6%)、従業員から3,817件(回収率12.7%)でした。
調査結果によると、過去1年間にカスハラの「被害にあった」従業員は11.9%で、「見聞きしたことがある」と答えた29.0%と合わせると、およそ4割が何らかの被害を認識しています。
実際に被害にあった従業員の割合を業種別にみると、「複合サービス事業」が28.9%で最も高く、次いで「宿泊業、飲食サービス業」が23.8%、「医療・福祉」が21.2%と続き、対人サービスを伴う業種で被害が多い傾向がみられました。
ただ、カスハラは企業間においても発生します。企業に対する調査でカスハラに該当すると判断した事案においてその行為者を複数回答可で尋ねたところ、「一般の顧客」(81.3%)に次いで「取引先の担当者」が13.8%となりました。同様に、従業員に対する調査においても、行為者を尋ねた結果、「一般の顧客」(80.6%)に次いで「取引先の担当者」が15.5%に上っています。
都のカスハラ防止条例では、事業者に対しカスハラ防止に向けた「主体的かつ積極的な取り組み」を責務として課しています。具体的には、働く人の人格や尊厳を傷つけ、就業環境を悪化させるカスハラに対し、企業は「従業員を守るための相談体制の整備」や「適切な被害者ケア」を講じることが求められています。
企業の防止対策については、全体の38.5%が「取り組んでいる」と回答しました。しかし企業規模別でみると、従業員1000人以上の企業では82.3%が対策に取り組んでいるのに対し、30人未満の企業では30.5%にとどまっており、規模による差が顕著に表れています。
カスハラ防止対策に取り組んでいる割合を業種別でみると、「医療、福祉」が62.0%で最も多く、「金融業、保険業」が57.8%、「生活関連サービス業、娯楽業」が55.6%と続きました。防止対策に取り組んでいる企業について具体的な取り組み内容をみると「相談窓口の整備」(65.7%)、「実態把握のための調査」(52.9%)、「従業員のケア」(50.9%)の順に多くなりました。
一方、防止対策に「取り組んでいない」企業にその理由を尋ねたところ、「正当なクレームとの判断の難しさ」が29.6%、「ノウハウ不足」が23.8%、「発生状況の把握が困難」が16.7%の順に多くなりました。