改正労働施策総合推進法によって今年10月1日から、事業主にはカスハラ防止のための雇用管理上の措置が義務付けられます。宅配業界におけるカスタマーハラスメント対策を支援するため厚生労働省は3月27日、「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(宅配業編)」を策定・公表しました。
厚生労働省が全業種を対象に実施した「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にカスハラを受けたと回答した割合は10.8%でした。さらに、宅配業に限定した調査(※)では、顧客対応業務を担う従業員の42.6%が過去3年間にカスハラを経験していることが分かりました。
宅配業における職種別では、「電話窓口」が73.9%と最も高く、次いで「管理職」が67.6%、「対面窓口」が64.1%と続きました。配達を担う「ドライバー」は32.2%でしたが、他の職種とは異なる特有の課題が指摘されました。
電話窓口や対面窓口では、被害発生時に半数以上が「上司への引き継ぎ」を行っているのに対し、ドライバーは単独で現場対応に当たることが多く、複数人での対応や即時の上司への引き継ぎができなかったケースが多く発生していました。被害後の対応についても、ドライバーは他の職種に比べて「上司に相談した」割合が低く、「何もしなかった」とする割合が高い傾向となりました。
カスハラ対応における主な課題としては、「判断基準がわからない」(40.4%)、「対応によりさらなるトラブルを招くおそれがある」(38.4%)、「対応方法がわからない/会社の対応方針がない」(30.7%)の順に多くなりました。
こうした実態を踏まえ、マニュアルではカスハラを「社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義した上で、契約内容や手段・態様に照らした具体的な判断基準を提示しました。
具体例として、①要求自体に合理性がない、またはサービスと無関係なもの②運送約款に基づく通常のサービス範囲を著しく超える要求(過度な配送指示など)③著しく対応困難または対応不可能な要求(運賃の大幅減額など)④不当な損害賠償請求――を「許容範囲を超えるもの」として例示しました。
さらに、「身体的・精神的な攻撃」「威圧的な言動」「執拗な言動」「長時間の拘束」といった典型的行為類型ごとに、状況に応じて警察への通報も視野に入れた具体的な対応例を示すとともに、企業・業界団体・労働組合などが協議の上で策定した共通方針も明記しました。
法改正に伴い企業に求められる対応としては、経営層による基本方針の策定・周知▽外部機関を含む相談体制の整備▽被害従業員への迅速な事後対応▽再発防止策の徹底――が挙げられます。
厚生労働省は本マニュアルに加え、啓発用ポスターやステッカーも作成しており、同省の総合情報サイト「あかるい職場応援団」において公開しています。
※調査は宅配業を営む企業の従業員のうち、顧客対応業務がある人を対象に2025年9月16日~10月7日にかけてWebアンケートで実施。有効回答数は18,715件。