経済産業省は15日、「地政学リスクを踏まえた製造基盤強化等に関する検討会」における中間取りまとめとして、「製造基盤強化レポート」を公表しました。経済安全保障における「自律性確保」の観点から製造基盤の強化に向けた施策を提示。従来の特定物資および技術に絞った「点」の支援から、製造業を取り巻く環境全体を見据えた「面」の支援へと経済政策を転換する必要性を記しました。
部品や素材の製造能力が特定国に偏在したり、重要鉱物に対する輸出管理が突如強化されたりするなど、「経済の武器化」が深刻化しています。自動車産業に不可欠なレガシー半導体や、あらゆる製品の基礎原料・中間品となる汎用化学品といった分野においても、サプライチェーンの脆弱性が顕在化しています。
経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律、2022年5月成立)には、国民生活に重要な特定の物資の安定供給を確保する制度が設けられています。現在、特定重要物資は半導体や重要鉱物など16品目となっていますが、レポートでは新たに汎用化学品などの基盤的物資を支援対象に追加することを提案しました。
例えば、半導体製造に関わる物資の中には、専用材料のように支援対象となりやすいものがある一方で、製造に不可欠な材料であっても汎用性が高い化学品は支援対象になりにくい側面がありました。しかし、こうした汎用化学品については、国内の生産量および輸出量が減少傾向にある一方、輸入量は横ばいを維持しており、内需に占める輸入品の比率が相対的に上昇しています。このため、さまざまな製品製造で不可欠な汎用化学品においても海外依存が高まっており、供給が途絶する危険性が顕在化しています。今後は、輸入動向や市場シェアを踏まえ、将来的な供給途絶の蓋然性を検証する必要があるとされました。
また、支援対象の拡大として、物資に加え、製造基盤の強靭化を支える「テクノロジー・チェーン(技術要素群)」にも着目しています。具体的には、造船や半導体製造など幅広い産業に不可欠な基幹加工工程でありながら、設備の老朽化や人材不足が進む鋳造・鍛造等を対象に、その維持およびイノベーションの促進を図ります。
サプライチェーン全体についても上流から下流、さらには循環までを一体的に捉えた支援方針が示されました。再生プラスチックに代表される循環資源や、ヒューマノイドのモーター・センサーといった将来技術を支える物資について、自律性の確保を図ります。
日本の強みである現場データを活用したAI実装の推進など、製造業を取り巻くエコシステム全体への支援も明記されました。ロボット・AIの利活用を担う人材育成、技術流出防止の徹底、さらにはものづくりの基盤を支える中堅・中小企業の強靱化など、多面的な施策を包括的に推進します。
これらの施策を持続可能なものとするため、「自助・共助・公助」の適切なバランスの確保が重要であるとされました。巨額投資を要し、民間単独では対応が困難な分野については、国による追加的支援を検討する一方、企業側にも地政学リスクを踏まえた経営判断への転換など、行動変容が求められます。