金融庁は4月17日、「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」の報告書を公表しました。報告書では、世界的に損害保険の引受条件が厳格化している現状を踏まえ、日本企業に対してリスクマネジメントの高度化を求めました。あわせて、企業の保険調達を支援する観点から、「海外直接付保」の運用改善や「キャプティブ」の利活用に向けた政策的検討を進める方針も示しました。
同検討会は、企業、損害保険業界、保険仲立人(ブローカー)などの関係者を交え、2025年12月から2026年3月にかけて計3回開催されました。議論の背景には、リスクの多様化と損害額の拡大に伴い、損害保険会社がデータに基づく厳格な引受審査(アンダーライティング)を行うようになったことがあります。日本企業で従来一般的だった、長年の取引関係に基づく緩やかな審査は通用しにくくなり、必要な保険を従来の条件で確保することが次第に難しくなっている状況が浮き彫りになりました。
こうした環境変化を受け、報告書は企業に対し、有事の資金的な備え(リスクファイナンス)、リスクの許容や回避を含む低減措置(リスクコントロール)、危機時の回復力(レジリエンス)を個別に扱うのではなく、これらを「三位一体」で統合的に管理する体制への転換を求めました。具体的には、経営会議でリスクを定例的に取り上げる仕組みを整え、経営陣が主導して重要リスクや許容可能なリスク水準(リスクアペタイト)を継続的に見直し、意思決定に反映させるPDCAを回すことを推奨しています。
また、保険の引受審査の厳格化の背景には、日本企業が保険を「コスト」と捉えがちで、災害や事故についても事後対応に偏りやすいこと、さらにリスク情報の社内共有や外部への情報提供が不十分であることなどの課題があると指摘。その結果、企業と保険会社の間で価格交渉に偏り、必要な保険を確保しにくい悪循環が生じているとしました。
報告書はまず、「壊れた場合は保険で対応できる」という事後対応的な発想から脱却し、企業自身が事前のリスク対策(予防策)を徹底した上で保険を手配する重要性を強調しました。その上で、自社の過去の事故データや予防策の状況を定量的に示し、保険会社に対して自社リスクの妥当性を客観的に説明することが求められるとしています。さらに、支払保険料だけでなく、自社で負担する損害額や予防コストも含めた「リスクの総保有コスト(TCoR)」を算出し、自社で保有するリスクと外部に転嫁するリスクのバランスを最適化することを求めています。
こうした企業のリスクマネジメント高度化を後押しするため、現在の制度ではハードルが高い海外直接付保の運用改善や、キャプティブの利活用に向けた政策的検討を進める方針も示しました。キャプティブとは、自社専用の保険子会社を指し、キャプティブの仕組みを活用することで世界の保険市場から再保険を調達できるようになります。また、企業と保険市場をつなぐ保険仲立人(ブローカー)がより活動しやすい環境を整備するとともに、その実態をモニタリングしていく考えも示しました。