気象庁はこのほど、「『日本の気候変動2025』を用いた気候変動解説の手引き」を公開しました。「日本の気候変動2025」は、2025年3月に文部科学省と気象庁が公表した報告書です。解説の手引きは、地方公共団体などで気候変動に関する業務に携わる担当者が、組織内や住民に対して気候変動を説明する際の参照資料として作成されました。
「日本の気候変動2025」には最新の観測結果と将来予測が取りまとめられており、手引きではそうした専門的で詳細な科学的データを一般の住民や関係者へいかに正確かつ分かりやすく伝えるかに焦点が当てられています。報告書が公表された後、国および地方公共団体の各部署や国立環境研究所気候変動適応センターと実施した報告書の説明・活用に向けた意見交換などを通じて得た要望や課題を基に作成されました。言い換えの例や留意点、講演などで活用できる説明例、市民生活への影響事例などが掲載されています。体裁は本編と同じページ構成を維持したまま、解説を追記する形式がとられています。
手引きには、直感的に理解しやすい「例え」も複数収録されています。例えば、本編の「大気からの下向き赤外放射量は増加している」という説明に対し、手引きでは「温室効果ガスは地球から宇宙に放射される赤外線を吸収し、再び地表や大気中に放出する働きがあります。温室効果ガスの増加により地上に到達する下向き赤外放射が増加します。工業化前なら掛け布団が1枚で、生物の生息に適した状態だったものが、掛け布団が2枚・3枚と増えていっていると例えることができます」と記しています。
また、雨の降り方が極端になっている(降水回数が減る一方で一度の大雨がもたらす降水量は多くなる)現象(※)については「鹿威し(ししおどし)」を用いた例えが紹介されています。気温上昇により大気が蓄えられる水蒸気量が増えることを「鹿威しの竹の筒が太くなる」ことに例え、水がたまって一気に流れ出す量が増える一方、次に水が流れ出すまでの間隔が長くなるという仕組みで、専門知識がない人でもメカニズムをイメージできるようなヒントを提供しています。
なお、手引きには言い換えの適切な表現だけでなく、誤解を招きやすい非推奨表現も明示されています。そのため、手引きを生成AIに学習させるなどした際、生成AIが誤って非推奨表現を適切な表現として提示してしまうリスク(いわゆるハルシネーション)も考えられます。こうしたリスクを踏まえ、実際の利用にあたっては手引きを直接参照し、内容を確認することを推奨しています。
※ 全国平均での観測結果においては、大雨の頻度の増加率に比べて、雨の降らない日の増加率は小さいことに注意。