中小企業庁はこのほど、2026年版の「中小企業白書」および「小規模企業白書」を取りまとめ、公表しました。
両白書は、中小企業の動向やその分析結果、政府が講じた施策などについてまとめた年次報告書です。白書は中小企業・小規模事業者の動向をまとめた同じ内容の「第1部」と、それぞれのテーマを詳述した「第2部」で構成されています。「第2部」では、中小企業白書は戦略を駆使した経営への転換により「稼ぐ力」を高めること、小規模企業白書は経営リテラシーの強化・実践と企業間連携の重要性をそれぞれ訴えています。
第1部では、春季労使交渉における約30年ぶりの賃上げ水準の継続や、最低賃金の引き上げが進んでいることが解説されています。一方で、2010年代以降、多くの業種で人手不足感が強まっています。加えて、人口減少による労働供給制約社会の到来で雇用者数の減少も見込まれるため、今後は人手不足がさらに深刻化するおそれがあると指摘しています。第2部ではこうした現状を踏まえた、必要となる具体的な取り組みを提示しています。
中小企業白書の「第2部 『強い中小企業』に向けた『稼ぐ力』の強化」では、日本の経済成長に重要な役割を果たす中小企業の賃上げを実現するためには、労働生産性の向上が不可欠だと分析しています。
現状、中小企業の労働分配率は8割近い水準に達しているため、白書は賃上げの原資を新たに確保する必要性を強調しています。労働生産性を向上させる具体的なアプローチについては、付加価値額の増加や労働投入量(従業員数)の最適化を実現している企業を例に挙げています。付加価値額を増加させている企業は、価格転嫁や成長投資、M&Aを積極的に行う傾向があり、労働投入量の最適化においては、AIやITツールを活用した省力化投資が重要であると記しています。
一方、小規模企業白書の「第2部 小規模事業者の経営リテラシー向上と企業間連携による事業の維持・拡大」では、人手不足を乗り越え、生産力や供給力を維持・強化していくためには、「戦略」を掲げた経営への転換が要であると分析しています。そのためには、経営戦略や会計、労務管理、知的財産など経営者が持つべき基本的知識である「経営リテラシー」の強化や実践が不可欠であるとしました。
同白書ではこの経営リテラシーを「財務・会計」「組織・人材」「運営管理」「経営戦略」の4つの類型に分けて分析しています。具体的には、原価を製品・商品・サービス別に把握している事業者は、より価格転嫁率が高く、従業員の働きがいやエンゲージメント(従業員による自発的な貢献意欲)の維持・向上などの組織活性化に取り組む事業者は、採用に成功している傾向があると紹介しています。さらに、小規模事業者は経営資源が限られることを踏まえ、企業間連携によって「経営力」を相互に補完し合うことが有効な取り組みであると提言しています。