日本能率協会(JMA)はこのほど、調査報告書「日本企業の経営課題2025」(※)を公表しました。国内の企業が直面する経営課題を毎年、調査・分析しているもので、今回は2025年8月19日から9月25日にかけて実施、経営者ら530社から回答を得ました(回答率10.4%)。
調査では例年、約20個の経営課題を提示し、「現在」「3年後」「5年後」の観点で重要度の高い課題を選択してもらう手法を採用しています。今回、「現在」の経営課題として最も多く挙げられたのは「収益性向上」(48.5%)、次いで「人材の強化(採用・定着・育成・多様化への対応)」(46.2%)となりました。
過去2年間(2023年・2024年)の調査では、「人材の強化」が現在の課題のトップでしたが、今回は原材料費やエネルギー価格の高騰、人件費上昇といったコスト増加要因への対応に追われ、順位が逆転する結果となりました。一方で、「3年後」の経営課題を見ると「人材の強化」(44.5%)が3年連続で第1位となり、「5年後」においても同項目が41.7%で第1位となりました。
報告書では、「経営機能」領域ごとに重要度が高い課題も尋ねています。「組織・人事」領域においては、昨年第2位だった「優秀人材の獲得」が、今年は第6位に順位を下げました。代わって上位を占めたのは、第1位「経営戦略と連動した人材戦略の策定と実行」(31.1%)、第2位「管理職層(ミドル)のマネジメント能力向上」(29.4%)、第3位「次世代経営層の発掘・育成」(29.1%)でした。
JMAは、人件費の上昇やテクノロジーの発展による必要スキルの変化を背景に、採用によって人材を確保するアプローチが相対的に後退し、既存人材をいかに定着させ、適切に配置し、組織として活かしていくかへ課題の重心が移行していると指摘しています。
優先度が「優秀人材の獲得」から「既存人材の育成」へとシフトするなか、人材育成部門に求める能力・知見を尋ねています。最も求められているのは、自社の人材スキルを正確に把握する「企業・人材スキルアセスメント力」(54.9%)でした。組織全体のスキルや個々の能力を把握することが、新たな人材戦略を構築するうえでの出発点となるためと分析しています。
AI活用の進展も顕著であることがわかりました。「現在」の経営課題において、「デジタル技術・AIの活用・戦略的投資」は前回の11位から5位(16.%)へと大きく上昇しました。「3年後」においても5位(25.3%)、「5年後」においても6位(20.2%)となっています。すでに7割超の企業が生成AIを導入しており、約5割が「期待を上回る」「期待通り」と成果を実感しています。
ただ、AI導入で「期待を上回る」成果を出している企業群ほど、全体平均と比較して「センス・直感力」や「人を育てる力」の低下を強く危惧している実態も明らかになりました。
※ 第46回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題2025(一般社団法人日本能率協会)