気象庁は毎年6月1日の気象記念日にあわせて年次報告書「気象業務はいま」を刊行しています。PDF版は気象庁のWebサイトに無料公開され、今年は巻頭特集として「新たな防災気象情報」と「地域防災支援の取組」の2つが大きく取り上げられています。
避難に資する情報をよりシンプルで分かりやすい体系へと抜本的に見直すため、気象業務法と水防法の一部改正が行われました(※1)。それにより今年5月(※2)から運用が開始されたのが「新たな防災気象情報」です。
避難行動に対応した5段階の警戒レベルと防災気象情報を整合させ、「レベル3大雨警報」のように情報名そのものに警戒レベルの数字を付記して発表するように変わりました。これにより、発表された情報から住民がどのような防災行動をとるべきかが直感的に連想しやすくなりました。
また、これまで統一された名称がなかった警戒レベル4に相当する情報が「危険警報」として統一され、大雨による浸水害などを対象とする「レベル4大雨危険警報」が新設されました。さらに、近年の河川水位の観測・予測技術の進展を踏まえ、これまで運用されていなかった河川氾濫に関する特別警報が創設され、新たに「レベル5氾濫特別警報」として運用が開始されました。
特集の2つ目では、「地域防災支援の取組」に焦点を当てています。気象台が地域の防災力を向上させるため、自治体や関係機関と連携する重要性が改めて強調されており、その中核を担う人材として「気象防災アドバイザー」の拡充と活用が大きく取り上げられました。
気象庁では、自治体の防災現場で即戦力となる気象と防災のスペシャリストとして、気象防災アドバイザーの育成と活用促進に注力しています。気象庁退職者や所定の育成研修を修了した気象予報士など634名が国土交通大臣から委嘱を受けています(今年4月時点)。気象庁によると、2025年度実績では86団体において80名のアドバイザーが任用されました。防災気象情報の読み解きや市町村長への避難情報発令の進言、住民向けの防災講座など、地域防災の最前線で活躍しています。
本編では、気象業務の高度化に向けた最新の取り組みが記され、先端AI技術の積極的な活用が紹介されています。物理法則に基づく従来の数値予報モデルの開発と並行して、過去の気象ビッグデータを学習した「AI気象モデル」の開発が進められており、台風の進路予測の精度向上や観測データの品質向上など、気象業務全般における予測の高精度化・高速化に向けた取り組みが推進されています。
地震・津波・火山分野では、北海道・三陸沖後発地震注意情報の発表事例や、広域に降り積もる火山灰への対策として「火山灰警報(仮称)」の導入に向けた検討が進められていることなどが紹介されています。
※1 「気象業務法及び水防法の一部を改正する法律」のこと。2025年12月に公布、2026年5月29日から施行。
※2 5月29日の運用開始に先立ち、システム切替作業を5月28日に行い、同日午後から順次、情報の提供が開始された。