AI活用と積極的投資を促す、2026年版ものづくり白書を公表 経産省/厚労省/文科省
経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省はこのほど、共同で作成した2026年版「ものづくり白書」(製造基盤白書)を公表しました。白書では、各国の保護主義的な政策強化による国際情勢の不確実性の高まりや、AIなどデジタル技術の急速な発展を背景に、産業競争力強化に向けた「AI・デジタル技術の活用」や「経済安全保障の取り組み」の重要性を強調しています。
白書は、業況や就業動向など現状と課題を分析した第1部と、政府が講じた施策をまとめた第2部で構成されています。それによると、日本は他国に比べ労働生産性が低い水準にとどまっています。一方で、収益力の高い企業は省力化や省人化への投資やシステム投資などに積極的であり、資本装備率(従業員一人当たりの設備の保有状況を示す)が高い企業は労働生産性も高いことがわかりました。そのため、政府が創設した「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」の活用など、民間投資を促すことが不可欠であると提言しました。
また、競争力強化のためには、製造現場の情報をデータ基盤として整備し、AIを活用した社会実装とデータ蓄積が重要であるとしています。しかし、日本においては製造プロセス全体の最適化が進まず、企業間のデータ連携が停滞している状況であることが明らかとなりました。
2025年度のアンケートでは、サプライチェーン内の企業間のデータ連携を「実施している」と回答した企業の割合は16.4%で、2023年度(19.8%)より減少しています。企業・業界を横断したデータ連携状況に関しては、「実施している」が3.2%でした。この横断的な取り組みの懸念事項については、データ連携の実施の有無にかかわらず「セキュリティの担保」が最も高い割合を占めました。他方、「必要性を認識しているが、実施できていない」と回答した企業の懸念事項は「セキュリティの担保」(61.7%)に次いで「スキルを持った人材の不足」が60.9%という結果となっています。
白書では、AIを活用した社内のデータ連携によって生産性向上を実現した事例や、経済安全保障に取り組む企業の事例が紹介されています。
機械・自動車部品メーカーのジェイテクトは社内のデータ連携を進めるため、生成AIを活用したクラウドプラットフォーム「Kraken.」を導入しました。「Kraken.」は、現場に散在する多種多様なデータ(設計図面や画像、ベテランのノウハウなど)を読み込み、自動的に整理・意味付け作業を行うことでデータの再抽出や連携・活用をスムーズに実現するものです。これにより、ジェイテクトは設備の稼働状況や手書きの帳票まで全てのデータを一元的に集め従業員が自分で分析できるようにしたことで、大幅な生産性向上を実現しました。
経済安全保障の取り組み事例としては、世界に拠点を構える総合自動車部品メーカーのアイシンが紹介されています。同社は、専門の経済安全保障委員会を設置し、政治・地政学リスクに起因する事業リスクを中長期的に軽減し、サプライチェーンの強靱化と機微技術管理の強化を経営戦略として進めています。