政府は2026年6月12日、11年ぶりに見直した「首都直下地震緊急対策推進基本計画」を閣議決定し、公表しました。同計画は首都直下地震による被害を軽減するための政府の指針であり、中央防災会議のワーキンググループがまとめた新たな被害想定などを踏まえて見直されました。今後10年間の新たな減災目標として、想定される死者数や建物被害をこれまでの「おおむね半減」から「半減以上」に抑え込む方針を定め、施策の進捗を測る具体目標(KPI)はこれまでの47項目から189項目へと拡充しました。
新たな被害想定(都心南部直下地震・マグニチュード7.3)によると、最悪の場合、死者数は約1万8,000人、全壊・焼失棟数は約40万棟と試算されています。旧想定から被害規模は減少したものの、依然として甚大な被害が見込まれます。また、最大約4万1,000人に上る災害関連死のリスクも示されたことから、新計画では直接的な被害の「半減以上」に加え、災害関連死や経済的被害を最大限減らす方針が新たに明記されました。
対策の基本方針は、新たに4つの柱に整理されました。第一の柱は「防災意識の醸成と社会全体での防災体制の構築」です。国民、企業、地域、行政が共に災害に立ち向かう連携を強調し、防災の自分ごと化を明記しました。あわせて防災DXの加速化として、国や地方公共団体、そして指定公共機関に指定されている大手企業などの間で情報を一元的に共有するための新総合防災情報システム(SOBO-WEB)の導入と運用が必須となります。同システムの利用率を2030年度までに100%へと引き上げる目標が新設されました。
第二の柱「首都中枢機能の継続性の確保」では、企業の機能維持の要求が強化されました。企業の本社系機能の確保として、2035年度までに事業継続計画(BCP)の策定率を大企業で100%、中堅企業で80%に引き上げる数値目標を設定しました。さらに事業継続マネジメント(BCM)を通じた見直しや訓練の継続的な実施による実効性の向上が求められています。
また、東京圏において中枢機能の維持が困難となる最悪の事態も想定し、企業のBCPにおける一時的な代替拠点の検討を促進する方針が明記されました。さらに、データセンターを含むインターネット基盤全体の維持を図る方針も示され、関連する具体目標として東京圏・大阪圏以外のデータセンターの整備率を現在の12%(2025年)から2030年度に20%へと引き上げることが新たに設定されています。
第三の柱「膨大な人的・物的被害への対応強化」では、最大の被害要因である火災対策が強化されます。電気火災を防ぐ感震ブレーカーについて、「緊急対策区域」全体を対象とし、設置率を現在の20%から2035年度には「おおむね設置」の状態へと引き上げる目標を掲げました。また、避難所の生活環境向上に向けて、これまでの「場所の支援」から「人への支援」へと考え方を転換し、国際的な人道対応基準「スフィア基準」を考慮することが明記されました。
第四の柱「迅速な復興・より良い復興への備え」では、緊急対策区域内の市町村における災害廃棄物処理計画の策定率を2030年度までに100%にする目標などを新設しました。