国土交通省と東京都は2026年6月5日、「災害に強い首都『東京』形成ビジョン」の改定版を公表しました。これは、首都直下地震や大規模水害など自然災害のリスクが高い東京の安全性を高めるための包括的な計画です。
東京は広大なゼロメートル地帯を抱え、気候変動による水害リスクの増大や、今後30年以内に70%程度の確率で発生すると予測される首都直下地震などの深刻な災害リスクを内包しています。今回の改定は、壊滅的な被害の発生を未然に防ぐとともに、万一災害が発生した際にも早期の復旧・復興を実現する「防災まちづくり」を、国と都が強力に連携して推進するために行われました。
改定版では、従来の「水害対策」と「地震対策」が強化されるとともに、第3の柱として新たに「複合災害対策」が追加されました。
まず、水害対策の強化では、気候変動を見据えた流域治水の推進に加え、ゼロメートル地帯の命を守る「高台まちづくりの推進」が明記されました。段階的な整備目標を掲げ、モデル地区を設定して高台創出を進めます。
次に、地震対策の強化では、市街地の不燃化および木造密集地域の解消、緊急輸送道路の無電柱化を引き続き推進します。今回の改定では新たに、約900万人が暮らす共同住宅を対象とした「マンション防災」(自宅にとどまって避難する「在宅避難」の推進など)と、断水被害を防ぐ「上下水道インフラの機能確保」が対策の柱に加わりました。水道管の継手を耐震化したり、導水施設の二重化や送水管のネットワーク化を進めたりすることで断水リスクを低減させます。
そして新設された複合災害対策は、能登半島地震の教訓を踏まえたものです。先発の災害の影響が残る中で後発の災害が発生すると、単発の災害に比べて被害が甚大化します。そのため、安全な避難先を選定しルート情報を随時発信する体制を強化します。被災状況の早期把握には、国が構築する新総合防災情報システム(SOBO-WEB)などを通じ、国・都・区市町村間でリアルタイムに被害情報を共有します。また、人工衛星などのリモートセンシング技術を活用して画像データや地形データを解析、地盤のゆるみや堤防の変状といったリスクを先発災害の直後に評価し人的被害を防ぎます。
災害時の復旧を最前線で支えるのは建設業です。担い手不足を克服するため、建設現場のデジタル化・自動化(i-Construction 2.0)を強力に推進します。5G通信を用いた建機の遠隔操作やプレキャスト部材の活用などを導入し、危険な被災現場での省人化・省力化と安全確保を同時に達成する方針です。
発災前から復興の手順を準備する「都市の事前復興」の取り組みも加速します。東京都は震災復興マニュアルを改定し、区市町村職員向けの都市復興訓練を毎年実施することで、行政の実行力を高めるとしています。