責任ある企業行動(RBC)の「実行」には深い溝、「OECD Responsible Business Outlook2026」公表 OECD
経済協力開発機構(OECD)は2026年6月30日、世界の大手上場企業1万社と「OECD多国籍企業行動指針」の遵守国52カ国の政府政策を対象とした調査報告書「OECD Responsible Business Outlook 2026: Making Commitments Count」を公表しました。大手上場企業の約7割が「責任ある企業行動」(RBC)に関するコミットメント(方針表明)を行っている一方で、実際のサプライチェーンにおける人権や環境リスクの特定および是正といった実行には大きな遅れが生じていることがわかりました。
デュー・ディリジェンス(企業活動による負の影響を特定・予防・軽減・救済するプロセス。以下、DD)をビジネスの中核に据えることの重要性は増してきています。しかし、OECDによると、DDの実践状況を世界規模で客観的に評価した包括的なデータはこれまでありませんでした。
公表された報告書によると、対象となった1万社のうち69%が、人権、児童労働、強制労働、結社の自由、温室効果ガス排出、生物多様性、腐敗防止といったRBCに関連する少なくとも1つの課題について、公的なコミットメントを掲げていました。個別テーマでは、腐敗防止や温室効果ガス排出削減に関する方針が最も多く、次いで強制労働、児童労働、人権に関する取り組みが続きました。
分析にあたっては、RBCの主要な国際基準である「OECDデュー・ディリジェンス枠組み」(6ステップ)を指標としました。すると、企業から報告された実践内容の45%は、ステップ1(方針や管理体制の構築)に集中していました。他方、ステップ2・4・5(実際の悪影響の特定・追跡・報告に関する実践)を報告しているのは25%、ステップ3・6(予防、軽減、および救済といった具体的な対応策)に至っては20%未満にとどまりました。
こうした方針と実行のギャップは、とりわけ企業のサプライチェーンにおいて顕著でした。例えば、サプライヤーの選定に当たり、社会的・環境的基準を設けていると報告した企業は約半数に上りますが、その基準に従ってサプライヤーの「リスク評価」を実際に実施している企業は20%未満でした。さらに、環境・社会問題での取り組み改善のためにサプライヤーにトレーニングを提供したり、協働したりしている企業は25%にとどまりました。企業が実行段階に踏み出せない背景には、影響測定の難しさや、情報開示に伴う風評被害および法的責任への懸念があると指摘しています。
報告書では、企業の取り組みだけでなく、それを後押しする政府による制度整備や国際協調の重要性にも言及しています。各国政府に対し、企業が成果志向のDDを実践できるよう、政策的インセンティブの導入やサプライチェーン上流への実施支援の提供、規制の重複による複雑化を避けて公平な競争環境を確保するための国際協力の推進などを提言しました。また、ステークホルダー間の対話を促進し、企業の説明責任(アカウンタビリティ)を強化するため、苦情処理や紛争解決を担う、ナショナル・コンタクト・ポイント(NCP)へのリソース増強なども提案しました。