国土交通省は2026年7月10日、令和8年版の首都圏白書を公表しました。白書は首都圏整備法に基づき、首都圏整備計画の策定および実施状況について、その年度の取り組みを毎年国会に報告するものです。第1節から第6節までの構成となっており、防災の取り組みに関しては、主に第2節と第3節において言及されています。
首都直下地震については、2025年12月に公表された新たな被害想定に関する動向を取り上げています。都心南部直下地震(Mw7.3)が発生した場合、建物の被害は約40万棟、死者は約1万8,000人、経済被害は約83兆円に上ると想定されました。
被害想定への対応として白書では、2025年6月に中央防災会議幹事会で決定された「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画」(具体計画)を取り上げています。この具体計画では、人命救助に重要な「72時間」を意識した各分野のタイムラインが設定されたほか、巨大過密都市特有の深刻な道路交通麻痺などを踏まえた対応も反映されました。
また、新しい想定では初めて1都4県(東京都、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県)の帰宅困難者数を約840万人と推計しました。内閣府は2026年1月に「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」へと名称を改め、地震被害が生じない場合における帰宅困難者対策も盛り込むなど、内容を拡充しました。
首都圏1都7県のハザードマップ公表状況も掲載されています(2026年2月調査)。それによると、もっとも多く公表されているハザードマップは洪水に関するものであり、首都圏全343市区町村のうち、315市区町村で公表されていました。次いで、土砂災害ハザードマップが284市区町村でした。近年、都市部で局地的な大雨により排水能力を超えて浸水する内水氾濫については139市区町村でした。都県別に内水ハザードマップの公表状況を見ると、最も公表数が多いのは埼玉県で47市区町村(全63市区町村)、次いで東京都が39市区町村(全62市区町村)、千葉県が21市区町村(全54市区町村)でした。
火山のハザードマップについては、首都圏で27市区町村が公表しています。都県別に見ると、富士山を抱える山梨県が8市区町村と最も多く、次いで東京都と群馬県がそれぞれ7市区町村、栃木県が3市区町村、神奈川県が2市区町村となっています。
被災時の復旧を支える広域拠点整備として、「防災道の駅」の機能強化が進められています。地域防災計画で広域的な防災拠点に位置づけられている道の駅に対し、国土交通省は重点的な支援を行っており、2025年度には首都圏で新たに6駅が追加選定され、合計11駅となりました。
なお、今回は今年が「昭和100年」にあたることにちなみ、人口推移を通じて首都圏の100年を振り返る特別企画も収録されています。大正12年(1923年)の関東大震災による市街地崩壊とその後の帝都復興事業、昭和12年(1937年)の防空法公布を経て昭和20年(1945年)の空襲で東京が再び壊滅した歴史が取り上げられています。