金融庁は7月、「風水害リスクに関する金融機関の取組の動向や課題」を公表しました。
金融庁は2022年7月に「金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方」を公表しました。ここでは気候変動対応が特定の企業のみならず、サプライチェーンや業界全体に関係するものであると示されています。また、顧客企業における気候変動関連の収益機会・気候関連リスクは、金融機関自身の機会・リスクとなり得ることなどが記載されています。
こうした考え方を踏まえて公表された「風水害リスクに関する金融機関の取組の動向や課題」は、日本において主要な自然災害リスクの一つである風水害に着目しています。17の金融機関(大手銀行、地域銀行、保険会社など)を対象に、アンケートとヒアリングで風水害のリスク管理に関する状況・課題や事例を調査し、その結果をまとめています。
まず、調査の結果、風水害は顧客企業の被災やサプライチェーンの寸断、社会インフラの損壊、自社拠点の被災などにつながるほか、信用リスクや保険引受リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスクなど、金融機関の経営上の重要リスクに様々な影響を与えうることが明らかになりました。
過去に顕在化した事例としては、台風や豪雨による工場浸水や事業停止によって融資先の内部格付が下方遷移したケースが散見されるとしています。ただ、顧客が損害保険金を受領したことや復旧支援が行われたことなどで、最終的な信用コストへの影響は総じて限定的であったと記されています。ただし、特定のプロジェクトや不動産から生み出されるキャッシュ・フローに依存する融資構造(再生可能エネルギー関連のプロジェクトファイナンスなど)では、設備損壊が信用リスクに直接的な影響を及ぼしやすい特徴があるとしています。また、金融機関の自社拠点に関しては、一部の地域銀行などにおいて浸水や停電が発生し、営業停止となった事例があることも記されています。
本文書では、業態ごとに行われているシナリオ分析の状況もまとめられています。例えば銀行では貸出金の信用リスク、保険会社では保険引受リスクや資産運用における市場リスクなどを対象とした分析が行われています。今回の調査で確認されたシナリオ分析の課題としては、「水災は考慮されているが風災は考慮されていない」「事業停滞による影響の分析において、顧客企業の本社以外の主要拠点が十分に考慮されていない」「サプライチェーンへのリスク波及の影響が十分に考慮されていない」「複合災害が十分に考慮されていない」といった点が挙がりました。本文書は、各金融機関における風水害リスクの精緻化に向けた取り組み例や、リスク対応例も紹介しています。また、顧客支援の取り組み例も掲載されています。顧客支援例では、BCPの策定支援など、融資にとどまらないものも掲載されています。
金融庁は今後も、金融機関におけるリスク管理と顧客支援の状況を継続的に注視する方針だとしています。