経済産業省は2026年7月7日、「パートナーシップ構築宣言」の登録企業数が、同年7月6日時点で10万社に到達したと発表しました。近年は持続的な賃上げを支える狙いで、一定規模以上の企業に対してこの宣言の公表が「賃上げ促進税制」の必須要件となっています。
パートナーシップ構築宣言は、サプライチェーン全体の付加価値向上と新たな連携、そして共存共栄を目指し、発注側の立場にある企業が「代表権のある者の名前」で、価格交渉および価格転嫁の促進や取引適正化に向けた指針(振興基準)の遵守を公式に宣言するものです。経済環境の激しい変化の中で生じ得る中小企業への取引条件のしわ寄せを未然に防止し、適正な取引環境を構築する目的があります。
宣言企業数は、制度運用開始から約32カ月後の2023年3月に2万社に到達、2024年2月には4万社、2025年10月には8万社と登録ペースを徐々に加速させ、今回10万社の大台にのりました。専用ポータルサイトでは、10万3,000社以上の登録が掲載されています(2026年8月3日現在)。
パートナーシップ構築宣言は2025年6月閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針2025」や同年11月の「総合経済対策」において、サプライチェーン全体の取引適正化や持続的な賃金向上を推進するための重要な施策として明記されました。また、コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)においても、取引先との適正取引の実行状況を取締役会が監督することが有益であると位置づけられるなど、企業統治の観点からも重要視されています。
近年は税制優遇といったインセンティブとも連動しています。一定規模以上の企業(※)が「賃上げ促進税制」による税額控除を受けるためには、この宣言の公表が「必須要件」(適用条件)として義務付けられました。
また、各種補助金においても優遇措置があります。具体的には、中小企業向けに設備投資を支援する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(ものづくり補助金)をはじめ、新市場・高付加価値事業への進出を促す「中小企業新事業進出補助金」、さらには工場・事業場全体での脱炭素化に向けた先進設備導入を支援する「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」といった主要な事業において、パートナーシップ構築宣言を公表している企業に対して審査上の加点措置が講じられています。また、国だけでなく地方自治体が実施する補助金の審査や制度融資などにおいても優遇措置があります。
政府は実効性に関する調査も実施しています。中小企業庁が2025年5月に公表したアンケート結果によると、宣言企業との取引では受注側の約7割が「価格転嫁できた」、約8割が「現金で支払いを受けた」と回答し、未宣言企業よりも良好な対応が確認されました。一方で、コストの「全額(10割)転嫁」に至ったのは約35%にとどまるほか、金型の管理などでは課題もありました。
政府は実効性を厳格に担保するため、不適切な事案や違反行為に対しては厳正に対処しています。2026年7月上旬には、公正取引委員会の発表を受け、宣言公表要領の「2.掲載の取りやめ」に基づき、7月9日、10日、13日と立て続けに計3社の宣言掲載を取りやめる措置を実施しました。
※大企業を含む全企業向け税制は2026年3月末で廃止(2024年4月1日から2026年3月31日までの間に開始した各事業年度に適用される)。中堅企業向けは継続。