防衛省は2026年8月4日、令和8年版の防衛白書を公表しました。同白書は「未来につながる安全保障」をテーマに掲げ、我が国の平和と独立を守る上で抑止力の向上が不可欠であると提示しています。防衛装備品を国内で持続的に製造・整備できる「防衛生産・技術基盤の維持・強化」そのものが、相手の侵攻を思いとどまらせる抑止力の一部であることを明確に位置付けました。
我が国を取り巻く環境について白書は、日本周辺海域での活発な軍事活動や中国と北朝鮮の軍事力増強、中国とロシアあるいはロシアと北朝鮮の連携強化などを挙げ、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境にあるとの認識を示しました。ロシアによるウクライナ侵略の教訓から安価な無人航空機(UAV)やAIを活用した「新しい戦い方」への移行を重視し、独立した章を設けて各国や先端技術の動向を整理しました。
「新しい戦い方」とは、UAVをはじめとする無人アセットやAI、データ、ネットワークなどを連携させ、戦場の状況を可視化・分析することで、相手に先んじて的確な対応を行う「意思決定の優越」を確保する戦い方です。この「新しい戦い方」を踏まえた我が国独自の「新しい守り方」を実現するために、民生の先端技術を積極的に防衛装備品へ取り込んでいくこと(スピンオン)が不可欠であるとしています。
無人機をはじめとする重要装備を安定的に確保するため、政府はサプライチェーンの強靭化を進めています。例えば、経済安全保障上の「特定重要物資」は当初の11物資から2024年2月に先端電子部品が、さらに2025年12月にはUAVや人工衛星など4物資が追加され、現在は計16物資へと対象が拡大しました。
あわせて、民生・防衛の双方で活用される先端技術(デュアルユース)などを念頭に置いた特許出願の非公開制度(2024年5月運用開始)や機微な安全保障情報の保護と民間活用を両立するセキュリティ・クリアランス制度(2025年5月施行)なども整備されてきました。こうした経済安全保障の枠組みによる基盤強化が、結果として防衛装備品の調達・維持体制を支え、我が国の抑止力を総合的に向上させる仕組みとなっています。
我が国の防衛産業は国営の工場(工廠)を持ちません。戦闘機や護衛艦の製造・修理は数千社規模の民間サプライヤーに依存しています。そのため、これら国内製造基盤の維持・育成も急務となっており、政府は支援策を講じています。
2023年施行の防衛生産基盤強化法に基づく財政支援「装備品安定製造等確保計画」の認定件数は2025年度に計164件に達し、うち124件は中小企業でした。また、2025年3月には「防衛産業における受託適正取引等の推進のためのガイドライン」を策定しました。防衛装備庁では、品質(Q)、コスト(C)、納期管理(D)に関する企業努力を利益率に反映させる「QCD評価」の仕組みも導入しています。
白書の広報活動においては、防衛省初となるAIアバター活用解説動画やビジュアルを重視した小冊子などを公開しています。