厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の改訂版を公表しました。改正労働施策総合推進法(2025年6月成立)によってすべての事業主に対してカスハラ防止措置が義務化されました。改訂版では改正法を反映するとともに、過去の裁判例を交えて対策の重要性が示されたほか、既存の苦情対応体制を生かした現実的な相談体制の作り方、現場で使えるチェックシートなど、具体的で実践的な内容が盛り込まれています。
改正労働施策総合推進法によってカスタマーハラスメント対策(カスタマーハラスメントの防止措置)は全事業主に課される法律上の義務となりました。告示された「カスハラ防止指針」に基づき、2026年10月1日から施行されます。カスハラ対策が不十分な場合は、都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象となるほか、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)として損害賠償請求を受ける恐れもあります。過去の裁判例では、保護者からの言動について事業主の対応が不十分だったとして安全配慮義務違反を認めた事例や、逆に、対応手順(マニュアル)を作成・周知していたことで安全配慮義務違反(賠償責任)は認められなかった事例などが紹介されています。
マニュアルでは、「カスハラ防止指針」に基づき、必須の予防・対応措置10項目(①方針の明確化・周知啓発、②内容・対処の周知、③相談窓口の設置、④相談担当者の体制整備、⑤事後の迅速・正確な事実確認、⑥被害者への配慮措置、⑦再発防止措置、⑧悪質なカスハラへの抑止・対処措置、⑨プライバシー保護、⑩不利益取扱いの禁止)について具体的に解説しています。相談担当者の体制整備では、既存の苦情対応体制を活用し、苦情対応の延長として相談に応じられるように設定することで、体制構築の負担を軽減できると説明しています。
チェックシートが付録として用意されています。自社のカスハラ対策の取り組み状況や対応手順、理解度を事業主や従業員が点検・確認することができます。
なお、2026年10月1日からは求職者などに対するセクシュアルハラスメント対策も事業主の義務となります。採用面接やインターンシップも対象になります。こちらは改正男女雇用機会均等法によるもので、予防・対応措置は11項目(※)となっています。
※11項目とは、①求職者等に対するセクハラを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発、②行為者に対し厳正に対処する旨の方針・対処内容(就業規則などの懲戒規定)の周知・啓発、③求職活動などに関するルール(面談の時間・場所・体制・連絡手段など)の明確化と労働者・求職者への周知、④相談窓口のあらかじめの設置と求職者等への周知、⑤相談担当者の適切な対応体制の整備、⑥事後の迅速かつ正確な事実確認、⑦被害を受けた求職者等への適正な配慮措置、⑧行為者に対する適正な措置、⑨再発防止に向けた措置、⑩プライバシー保護措置と労働者・求職者への周知、⑪相談や協力を理由とする不利益な取り扱いの禁止と周知・啓発。