政府の地震調査委員会は2026年8月28日、近畿地方とその周辺陸域、および沿岸海域を対象とした「近畿地域の活断層の長期評価(第一版)」を公表しました。この地域での公表は今回が初めて。
地表に痕跡を残しにくい「伏在断層(地下に隠れた断層)」や長さ10キロメートル程度以上の短い断層のリスクを合算して試算した結果、今後30年以内に近畿全域のいずれかの活断層でマグニチュード(M)6.8以上の地震が発生する確率は「50%~60%程度」と初めて算出されました。
地域評価は、すでに九州や関東、中国、四国で導入されている手法です。2005年ごろまでは長さ20キロメートル以上の主要な活断層が単体で起こす地震の確率を個別に試算する「個別評価」が主流でした。しかし、2004年の新潟県中越地震(M6.8)や2007年の能登半島地震(M6.9)などのように、20キロメートル未満の短い断層や沿岸海域を震源とする地震被害が相次いだことを受け、広域の地震リスクを統合的に評価する手法が導入されました。
近畿地域において地域評価が導入された結果、評価対象活断層は「45断層」に拡大され、地質構造や地震活動の特徴から次の3区域に区分して評価されています。
- ・近畿北西部(兵庫県北部や京都府北部、播磨平野など)
- 横ずれ断層が圧倒的多数を占める。今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は「30%程度」
- ・近畿三角帯(敦賀湾、伊勢湾、大阪湾、淡路島を囲む三角形のエリア)
- 逆断層が高密度で分布する。今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は「40%~60%程度」。
- ・紀伊半島
- 北端の中央構造線断層帯を除き明確な活断層は知られておらず、活動は低調。今後30年以内にM6.8以上の地震が発生する確率は「7%程度」。
なお、地域評価では、計算手法ごとの死角を補い合うため「活断層データ」と「最近の地震活動」の双方に基づくアプローチを併用しています。前者は地質調査でまだ発見されていない未知の地下断層(伏在断層)を計算に含められない弱点があり、後者は活動周期が数千年に及ぶ超大型活断層がたまたま直近100年ほど静穏期にある場合、リスクを過小評価してしまう課題があるためです。
評価対象となった近畿全域の45活断層(57評価区間)について、15~25年ぶりの見直しが行われ、将来の地震発生確率を示す4段階のランク(S、A、Z、X)が最新の地質データに基づき更新されました。その結果、「六甲・淡路島断層帯(六甲山地南縁-淡路島東岸区間)」や「琵琶湖西岸断層帯(北部区間)」をはじめ、国が重点評価する主要活断層帯から8つの区間、主要活断層帯以外(池田山断層)も含めると合計9つの評価区間が、発生確率3%以上の最上位グループの中でも、特に切迫度が高いことを示す「S*(エス・アスタリスク)ランク」(※)となりました。
※活断層における今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」としています。その上で、地震後経過率が0.7以上である活断層には「*」(アスタリスク)が付記されます。なお、地震後経過率とは、「前回の地震から現在までに経過した時間が、その活断層の平均活動間隔(地震の周期)の何割に達しているか」を示す数値です。値が「1.0(10割)」に近づく、あるいは超えるほど切迫度が高くなります。ただし、すでに「1.0」を超えている活断層も多くあり、これは前回の地震から平均活動間隔を超える時間がすでに経過している状態であることを意味しています。