環境省は2026年9月、投資家や金融機関などを対象とした「ネイチャーファイナンス実践ガイドライン」を策定、公表しました。このガイドラインは、投融資先企業の「ネイチャーポジティブ経営」への転換を適切に評価し、資金供給を促進するための指針となります。生物多様性条約の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、2030年までに年間2,000億米ドル以上の資金を自然資本へ動員することが求められる中、日本におけるネイチャーポジティブ移行に伴うビジネス機会は2030年時点で約47兆円規模に上ると推計されています。
生物多様性の損失を止め軌道回復に乗せる「2030年ネイチャーポジティブ」の達成に向け、日本では「生物多様性国家戦略2023-2030」や「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」に基づき、官民を挙げて企業の「ネイチャーポジティブ経営」への移行が進められています。ネイチャーポジティブ経営とは、自社の事業活動における自然関連のリスクや機会を把握・分析し、長期戦略やビジネスモデルに自然資本の保全・回復の視点を組み込んで持続可能な企業価値向上を目指す取り組みのことです。こうした取り組みを情報開示の面から支える動きも活発化しており、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づく情報開示を宣言・登録した企業・団体数は日本では233社に上り、世界最多となっています(2026年7月14日時点)。
ガイドラインではネイチャーファイナンスを2つのアプローチに分類しています。1つ目は、自然資本に対して測定可能で直接的な好影響を目指すものです。「自然に対する実質的な貢献」「期待されるプラス成果の測定可能性」「重大な環境リスク・悪影響の回避」の3要件をすべて満たす投融資を指します。2つ目は、日常的な事業性評価や投資判断に自然資本の観点を組み込み、持続可能な経済活動への移行を広く可能にする投融資です。例えば、融資に際して事業性評価へ自然資本リスクを統合する取り組みや、雨庭など水循環を保全するグリーンインフラ整備への資金支援などがこれに該当します。
投資家や金融機関などが取り組むべき主要な実践アプローチとしては、3つの柱に整理されています。1つ目は、投資家・金融機関などが自然資本に関するリスクと機会を分析し適切な行動をとっていくための「ガバナンスの構築と組み込み」です。組織の投融資方針や経営戦略に自然関連課題の観点を織り込み、ENCOREなどの外部データベースを活用して優先対応領域を特定・開示することなどがこれに該当します。2つ目は、投融資先企業の価値向上と支援です。対話を通じて投融資先企業におけるリスクマネジメントやTNFDに準拠した情報開示、移行計画の策定を後押しします。3つ目は、自然の保全や回復につながる事業への具体的な投融資です。自然資本KPI連動型融資やテーマファンドの組成、Nature Tech(自然関連技術)スタートアップへの資金供給などを実施します。
投資家や金融機関には、これら3つの柱に沿って、自然資本特有の評価視点を取り入れながらネイチャーファイナンスを推進していくことが推奨されています。