「防災白書」とは、内閣府が、防災に関して講じた措置の概況や今後実施する防災施策について国会に報告するためにまとめる文書です。毎年6月頃、災害対策基本法第9条第2項に基づいて作成され、内閣府の「防災情報のページ」で公開されています。
防災白書には、地震や津波、風水害、火山災害などの自然災害に関する情報だけでなく、国の防災政策や防災体制、企業の事業継続、防災分野におけるデジタル技術の活用など、幅広い情報が掲載されています。
企業のリスク管理やBCP(事業継続計画)を担当する方にとっても、自社を取り巻く災害リスクや防災政策の変化を把握し、BCPを見直す際に活用できる重要な情報源です。
防災白書とは
防災白書は、災害対策基本法に基づき、政府が毎年作成する法定白書です。「防災に関してとった措置の概況」と、今後実施する防災に関する計画などがまとめられています。
次年度において防災白書に掲載されるテーマは多岐にわたります。地震や津波、風水害、火山災害などに関する被害や対策に加え、防災体制、地域防災、防災教育、事業継続、デジタル技術の活用など、その時々の防災政策や重要課題を俯瞰できます。
また、大規模な災害が発生した場合には、その被害状況や政府の対応、そこから得られた教訓などが取り上げられることがあります。将来発生が懸念される大規模地震などについても、被害想定や対策の検討状況を確認できます。
そのため、防災白書は「過去の災害を振り返る資料」というだけではなく、現在、国がどのような災害リスクを重要視し、どのような対策を進めているのかを把握するための資料といえます。
近年の防災白書で注目される動向
防災白書で扱われる内容は、社会環境や災害リスクの変化に応じて変わります。近年は従来の自然災害対策に加え、企業の事業継続やサプライチェーン、防災DXなど、企業のリスクマネジメントとも関係の深いテーマが取り上げられています。
企業のBCP・事業継続体制を重視
近年の防災白書では、民間企業における事業継続体制の構築が継続的に取り上げられています。大規模災害などによって企業活動が停滞した場合、その影響は当該企業だけにとどまりません。取引先や地域経済などにも波及する可能性があることから、企業が事業継続能力を高めることが重要とされています。
また、BCPが想定する不測の事態も多様化しています。自然災害だけではなく、感染症、地政学リスク、サイバー攻撃、サプライチェーンの途絶なども、重要業務の継続を脅かす要因となります。企業では特定の災害だけを想定するのではなく、「重要業務が停止する」「必要な経営資源が利用できなくなる」といった事業への影響を踏まえて、幅広い事象に備えることが重要です。
サプライチェーンを含めた事業継続
事業継続を考えるうえでは、自社だけではなく、取引先や調達先、物流などを含めたサプライチェーン全体への視点も重要になっています。大規模な災害が発生すると、自社の拠点が直接被災していなくても、重要な仕入先の操業停止、物流網の寸断、電力・通信などのインフラ停止によって事業を継続できなくなる可能性があります。
防災白書でも、企業活動の停滞がサプライチェーンの途絶を通じて取引先や地域経済、さらには社会全体へ影響を及ぼす可能性が指摘されています。BCPを検討する際には、自社の施設や従業員だけではなく、重要な取引先や物流、インフラなど、事業を支える外部の経営資源についても確認することが求められます。
防災DX・災害情報共有が進展
近年は、防災分野でもデジタル技術の活用が進んでいます。国では、防災関係機関が災害情報を迅速に共有し、意思決定につなげるための仕組みづくりが進められています。その一つが、新総合防災情報システム「SOBO-WEB」です。
SOBO-WEBは、災害情報を地理空間情報として共有し、災害時における関係機関の迅速かつ的確な意思決定を支援するシステムです。国の機関だけでなく、地方公共団体や指定公共機関なども利用対象となっています。
こうした防災DXの進展は、企業にとっても無関係ではありません。有事にどのような情報を、どこから、誰が取得し、経営判断につなげるのかをあらかじめ決めておくことは、BCPの実効性を高めるうえで重要です。
災害リスク評価の高度化
大規模災害への備えでは、災害リスクをより具体的に評価する取り組みも進められています。国や地方公共団体では、大規模地震などについて被害想定やシミュレーションを実施し、人的・物的被害だけでなく、交通、物流、電力、通信など社会機能への影響も評価しています。
防災白書には、こうした被害想定や防災政策の最新動向がまとめられているため、企業が自社のBCPで用いている前提条件が現在のリスク認識と合っているかを確認する際にも活用できます。
企業のBCP担当者は防災白書をどう活用するか
毎年、めまぐるしく変わる環境、それにあわせて進化する防災組織の取り組みや災害対策手法。こうした情報を効果的・効率的に把握する情報源として、「防災白書」は極めて有効であるといえます。
自社を取り巻く災害リスクを確認する
まず確認したいのが、自社が想定している災害リスクに変化がないかという点です。地震や津波、風水害などについて新しい被害想定や政府の対策が示されている場合は、自社のBCPで想定している被害と比較します。
自社施設の直接被害だけでなく、停電、通信障害、交通機関の停止、物流の停滞などが長期化した場合に重要業務を継続できるかという視点も必要です。
サプライチェーンへの影響を確認する
自社が直接被災しなくても、取引先や物流網、インフラの被災によって事業が停止することがあります。重要な原材料や製品を特定の企業・地域から調達していないか、代替調達先があるか、物流ルートが寸断された場合の代替手段があるかなどを確認します。防災白書に掲載される災害の被害や社会インフラへの影響は、こうしたサプライチェーン上の脆弱性を検証する材料としても活用できます。
BCPの対象事象や前提条件を見直す
BCPの対象を「首都直下地震」「大規模水害」など、特定の事象だけに限定している場合には、想定の見直しも検討するとよいでしょう。事業を中断させる要因には、自然災害だけではなく、感染症、サイバー攻撃、サプライチェーンの途絶などさまざまなものがあります。
重要なのは、原因となる事象だけでなく、「人員が確保できない」「拠点が利用できない」「システムが停止する」「取引先から調達できない」といった経営資源への影響を踏まえて事業継続を考えることです。
国の防災政策や制度の変化を把握する
防災白書には、政府がどのような防災政策を進めているのかも掲載されています。災害対応体制、防災情報の共有、デジタル技術の活用、大規模災害への対策など、国の取り組みを把握することで、自社の危機管理体制や外部機関との連携方法を見直す際の参考になります。
BCPの定期的な見直しに防災白書を活用する
防災白書は、国がどのような災害リスクや防災課題を重視しているのかを俯瞰できる資料です。「新たな被害想定や知見が示されていないか」「自社の想定に抜けているリスクはないか」「サプライチェーンやインフラへの影響を十分に考慮できているか」などの観点から確認することで、BCPを見直す際のヒントを得られます。
防災白書を単なる災害情報の資料として読むのではなく、自社のBCPの前提条件を定期的に点検するための情報源として活用することが、BCPの実効性向上につながります。