2026年のリスク予測
「不確実性の時代」と言われて久しい現代。地政学的リスク、経済リスク、そして社会・技術の構造的な変化——あらゆる領域において、複合的かつ同時多発的なリスクが顕在化しつつあります。
その一方で、情報社会の進展により、各種機関が公表するリスク予測の精度も年々高まり、2025年に示されたリスクの多くは、実際に企業が直面した懸念として広く認識されるに至りました。では、2026年はどうなるのでしょうか。
米国ではトランプ政権が2年目に突入し、年明け早々ベネズエラのマドゥロ大統領の拘束に踏み切るなど、対外的に強硬な姿勢を崩していません。ロシア・ウクライナ紛争、イスラエル・ハマスの衝突は膠着状態が続き、終息の兆しは見えていません。ドイツ経済はようやく底を打ちつつあるものの、EU域内では極右の台頭を含む政情不安が広がっています。中国経済も減速感を強めており、台湾海峡情勢にも緊張が漂います。
さらに、生成AIや量子技術の急速な商用化により、ディープフェイクや暗号技術の脆弱化といった新たなサイバーリスクが企業活動に影を落としています。AIが生む偽情報、アルゴリズムバイアス、そして人材やインフラへの依存といった構造的な脅威は、単なる技術の問題ではなく、社会の分断や制度不信と連動するリスクとして、主要機関による2026年のグローバルリスク評価でも大きく浮上しています。
このように、政治・経済・技術・社会のあらゆる側面で、“見えざるリスクの連鎖”が静かに進行しているのが2026年の現実です。企業が今、取るべき対応を考える上で、どのようなリスクが本当に重要なのかを見極めることは、これまで以上に困難かつ重要になっています。
本稿では、世界経済フォーラム(WEF)や国際通貨基金(IMF)、国連などの主要機関が公表した2026年のリスク予測レポートを俯瞰し、その共通点と相違点を整理した上で、日本企業が注視すべき重大リスクと、実務的な対応の方向性を提示します。
今回参考にしたリスクレポート群
2026年の重大リスクを読み解くために、当社では以下の主要レポートを精査しました。いずれも信頼性・網羅性の高い国際機関やシンクタンクが発行しており、地政学、経済、技術、社会、環境など多面的なリスクの兆候と、それらが相互に連関する構造的リスクへの示唆を含んでいます。
各レポートの特徴やフォーカスは異なりますが、共通しているのは「複雑性と分断がリスクの本質をより捉えにくくしている」という認識です。地政学リスク一つとっても、単なる地域紛争ではなく、供給網、資源、エネルギー、金融市場への波及が不可避となっており、各レポートはこのような“連鎖型リスク”を前提とした分析へと進化しています。
また、技術やAIの進展に関しても、多くのレポートが「光と影」の両面から評価しており、単なるポジティブインパクトではなく、社会的亀裂やガバナンスリスクといった負の影響も顕著に取り上げられています。
主要レポートを発行時期、発行機関、主な目的の3つの観点で整理したのが下表になります。レポート群の全体像を把握したうえで、次章以降でその内容の要点を掘り下げていきます。
表1 2026年を展望する主要リスクレポート一覧
| レポート名 | 発行時期 | 発行機関 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| World Economic Outlook | 2025年10月 | IMF(国際通貨基金) | 世界経済の成長見通しと下振れ要因の分析 |
| OECD Economic Outlook | 2025年12月 | OECD(経済協力開発機構) | 先進国経済と政策リスクの可視化 |
| 経済・物価情勢の展望(展望レポート) | 2025年10月 | 日本銀行 | 日本の経済と物価の先行きを展望 |
| Global Outlook 2026 | 2025年10月 | EIU(Economist Intelligence Unit) | 来年の主要経済動向と地政学イベントの影響分析 |
| Risk in Focus 2026 | 2025年9月 | Internal Audit Foundation(内部監査財団) The Institute of Internal Auditors(IIA) |
欧州企業の内部監査部門向けリスクガイダンス |
| Global Risk & Resilience Outlook 2026 | 2025年11月 | Everbridge | 危機対応の迅速化とレジリエンス戦略を通じた将来対応力の強化 |
| Global Catastrophic Risks 2026 | 2025年11月 | Global Challenges Foundation | 文明的リスク(破局リスク)の早期警戒 |
| Top Risks 2026 | 2026年1月 | Eurasia Group | 年度ごとの地政学リスク10選 |
| Global Risks Report 2026 | 2026年1月 | 世界経済フォーラム(WEF) | グローバルリーダーの認識に基づくリスク構造の可視化 |
このように、各レポートはそれぞれの視点や対象層に応じてリスクを切り出しており、それらを俯瞰することで、日本企業が直面しうるリスクの全体像を立体的に把握することが可能になります。
各レポートの主な趣旨と共通してみて取れる傾向性
前章では、2026年に向けて公表された主要リスクレポートを一覧で整理しました。それぞれの問題提起の方向性やリスクの見立ての特徴を簡潔に整理します。
表2 2026年リスク予測に関する主要レポートの趣旨
| レポート名 | 問題提起の方向性/リスクの見立て |
|---|---|
| World Economic Outlook |
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| OECD Economic Outlook | 上記に加え…
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| 経済・物価情勢の展望(展望レポート) |
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| Global Outlook 2026 |
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| Risk in Focus 2026 | 重大リスク
優先監査領域
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| Global Risk & Resilience Outlook 2026 |
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| Global Catastrophic Risks 2026 |
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| Top Risks 2026 |
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| Global Risks Report 2026 | 短期リスク(2年以内)※影響度ベース
日本企業のトップ5リスク
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出典 World Economic Outlook(IMF)、OECD Economic Outlook(OECD)、経済・物価情勢の展望(日銀)など9つの主要リスク・
経済レポートをもとに、ニュートン・コンサルティングが作成。記載内容は各レポートの公開情報を基に要約されたものであり、
各機関の正式見解を代弁するものではありません。
次に、これらの中から特に影響力が大きいと考えられるレポートをいくつか取り上げ、2026年を読み解くためのカギとなるポイントを深掘りしていきます。 まず、経済の観点で目立つのは、特段、不景気になるとまでは言えないが、下振れリスク因子が多いといった点です。世界成長率について「World Economic Outlook」(IMF)では3.1%(2025年は3.2%)と予測していますが、原油価格の高騰リスクや異常気象による農作物の急騰リスク、EVバッテリー需要増と供給制約に伴う鉱物資源の高騰リスクなど諸々挙げられています。また、AIブームに伴う金融市場の過熱(バブル)とその崩壊の可能性に対する懸念も共通して指摘されている点です。2026年に起こらないまでも2027年以降、その傾向はさらに強まるだろうということを指摘しています。
「OECD Economic Outlook」(OECD)では、主要なマクロ経済リスクに加え、ノンバンク金融機関と暗号資産市場の拡大が金融安定性に与えるリスクにも注目しています。特にステーブルコインについては、日本を含む各国で発行や活用の動きが活発化しており、警戒すべき領域とされています。実際、日本でも円建てのステーブルコイン「JPYC」が2025年末に正式発行されました。名称に「ステーブル(安定)」とあるものの、価格の安定性が必ずしも100%保証されているわけではありません。担保資産の質や運用体制によっては価格乖離が起こる可能性もあります。こうした状況下で、規制整備が追いつかないまま、一部のノンバンク金融機関が高レバレッジを伴ってステーブルコインや関連資産を取り扱うケースも見られ、資産価格の急変により信用不安が連鎖的に広がるリスクが懸念されています。
技術革新のスピードに法規制が追いつかないことがもたらすリスクという観点では、デジタルディスラプション(特にAI)も同じカテゴリに含めることができます。AIはここ数年で急速に普及し、生成系AIを中心に、リスクの多様化と深刻化が進んでいます。その中でも注目されているのが、誤情報・偽情報の拡散です。これは近年になって台頭してきた新しいタイプのリスクであり、選挙、企業の評判、株価などにも影響を及ぼす深刻な問題として捉えられています。さらに、著作権侵害の横行、AIを悪用したサイバー攻撃の高度化、想定外の品質事故や欠陥サービスの発生といった懸念も強まっています。加えて、AIの誤った活用によって人材の本質的な生産性が低下するといった、人とAIの役割分担や責任構造に起因するリスクも無視できません。このように、AIによるデジタルディスラプションは、単なる技術課題ではなく、法制度・社会制度・ガバナンス全体に波及する構造的なリスクとして認識すべきフェーズに入っています。
どのレポートでも共通して登場するのが、地政学リスクです。その背景には、米国による関税・貿易政策の不透明性や、それに伴う経済摩擦・対立の激化が指摘されています。たとえば、「米国が今後どのような関税政策をとるのか」、「台湾海峡での有事は現実化するのか」といった不確実性が、グローバルな供給網や経済の分断リスクを高めています。特に、ユーラシア・グループの「Top Risks 2026」では、米中対立、欧州の政治不安、資源の地政学的武器化など、複数の構造的リスクが並列的に浮き彫りにされています。企業側にとっては、こうした対立の「原因」を完全に制御することはできません。つまり、「地政学リスクそのもの」ではなく、「その影響に対して、いかにレジリエンス力を高めるか」が、これからの企業経営における鍵となるでしょう。
最後に、「Risk in Focus 2026」(IIA)が示すリスク情報は、企業にとって多くの示唆を含んでいます。本レポートの特徴は、「重大リスク」と「優先監査領域」という異なる2つの視点からリスクを提示している点にあります。これは、リスクの重要度と実際の監査対応のギャップを浮き彫りにするものです。実際、監査の観点では、たとえ重大なリスクであっても、そのリスクに対するガバナンス体制や内部統制が整っていなければ、監査そのものが難しいという現実があります。言い換えれば、「監査可能性(auditability)」が確保されていない領域には、チェックが及びにくいという制約です。たとえば、AIによるデジタルディスラプションは、多くの企業にとって喫緊の重大リスクですが、そもそもAIの導入や運用に関するルール・責任・モニタリング体制が整備されていなければ、内部監査として対応することができません。このように、「リスクの重大性」と「監査の優先度」は常に一致するわけではなく、内部統制や制度設計の成熟度が、リスク対応の現実的な出発点になることを、「Risk in Focus 2026」(IIA)は間接的に示しています。
このように、各レポートの相違と共通項を押さえることで、「見落とされやすいが本質的なリスク」を浮き彫りにできます。
日本企業にとっての2026年リスク総まとめ
これまで見てきた各種リスクレポートを総合的に比較すると、2026年に企業が直面しうるリスクは、外的要因と内的要因が複雑に絡み合い、かつ連動して拡大する構造にあることが明らかです。
外的リスクにおいては、AIやサイバー攻撃といったテクノロジーリスク、米中を軸とした地政学的緊張、世界的なインフレ・金融不安に加え、暗号資産・ノンバンク金融機関のような新興金融インフラの拡大による不安定性などが浮き彫りになりました。一方、内的リスクでは、「Risk in Focus 2026」(IIA)の指摘が有益ですが、人的資本の質的不足や、内部統制・ガバナンス体制の脆弱性が継続的な懸念材料となっています。
また、注目すべきは“交差するリスク”の存在です。たとえばAI技術は、技術進化による競争力強化の源泉である一方で、誤情報・精神的影響・知的財産の毀損・人材淘汰といった新たな社会的リスクを生んでいます。同様に、地政学リスクは単なる地域紛争にとどまらず、供給網や金融政策、消費者心理にも波及する“複層型リスク”となりつつあります。
以下に、主要レポートの横断的分析に基づき、日本企業の視点から見た「2026年の主要リスク一覧」を、外的要因と内的要因に整理して提示します。
表3 日本企業が注視すべき2026年の主要リスク一覧
| 分類 | リスク項目 | 補足説明(示唆) | |
|---|---|---|---|
| 外的 | 技術 | サイバー攻撃 | 国境を越えたシステミック攻撃リスクが拡大中。重要インフラ・取引先経由の攻撃にも注意。 |
| AIバブル破綻リスク | 過度な投資集中が調整局面を迎える可能性。AI依存が高い企業ほど影響大。 | ||
| デジタルディスラプション | AIによる業務代替と、業界構造変革による事業モデルの陳腐化。 | ||
| 経済 | 中国のデフレリスク | 内需減退と構造改革の遅れによる長期停滞の懸念。アジア市場に波及。 | |
| ステーブルコインの信用不安 | 一部アルゴ型ステーブルコインの価格剥離による信用イベントの可能性。 | ||
| ノンバンクによるシステミックリスク | マクロ金融政策が効かない“影の金融”圏拡大。市場の急変リスクあり。 | ||
| 米国関税政策の不確実性 | 新たな関税措置や適用遅延が日本の輸出入バリューチェーンに影響。 | ||
| 日本国内のインフレ・円安 | コスト高、賃金上昇圧力、為替ボラティリティの上昇が企業収益を圧迫。 | ||
| 政治 | 米国の南米介入 | キューバ、パナマ、コロンビアなどへの影響が地政学リスクに波及。 | |
| USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の形骸化 | 米国の孤立主義により、(米国・メキシコ・カナダ協定)協定の恩恵が不安定化。 | ||
| EUの中道崩壊とハイブリッド攻撃 | 極右台頭とロシアの情報戦が政治の不安定要因に。 | ||
| 台湾有事リスクの高まり | 紛争リスクだけでなく、先行的な金融・物流混乱の兆候も。 | ||
| 社会 | AI副作用 | 偽情報・誤情報の拡散、心理的影響、倫理的懸念。従業員・消費者双方に影響。 | |
| 世代間ギャップと人口動態 | 高齢化・Z世代との価値観ギャップが組織文化と雇用に影響。 | ||
| 法規制 | 国際的規制変更 | 気候、AI、サイバー、税制など多岐にわたる動き。国ごとの差異にも注意。 | |
| 環境 | 自然災害・異常気象 | 洪水、台風、酷暑など。サプライチェーン寸断・事業中断リスク。 | |
| 汚染 | 電子廃棄物の投棄やAI・データセンターの電力・排熱・水使用増大による公害リスク | ||
| 内的 | ガバナンス | 経営判断の属人化 | 特に有事下での意思決定の遅延や混乱リスク。取締役会機能の形式化。 |
| 人的資本 | スキルギャップ・採用難 | DX・ESG・国際対応における専門人材の不足が戦略遂行を阻害。 |
出典 World Economic Outlook(IMF)、OECD Economic Outlook(OECD)、経済・物価情勢の展望(日銀)など9つの主要リスク・
経済レポートをもとに、ニュートン・コンサルティングが作成
企業がとるべき対応
ここまで確認してきたように、各専門機関は2026年に向けたリスクを多角的に提示しており、企業としてもすでに多くのリスクを認識している状況です。重要なのは、「知っているか」ではなく、「適切に対応できるか/しているか」です。
加えて、2026年のリスク環境は、単独の事象というよりも、複数のリスクが連鎖し、同時多発的に影響を及ぼす“複合型リスク”の時代に突入しています。このような環境下で企業に求められるのは、単発的・後追い型の対処ではなく、経営戦略・業務プロセス・組織文化の中に“レジリエンス(=備え、耐え、適応する力)”を内在化させていくことです。
以下では、「日本企業が注視すべき主要リスク」として示した重大リスクを6つのカテゴリーに分け、それぞれについて企業が取りうる代表的なベストプラクティスを「予防」「検知」「回復」の3つの視点に沿って整理しています。自社の事業モデルや業界特性に照らしながら、どこから着手すべきかを検討する実務的ヒントとしてご活用ください。
サイバー攻撃への対応
| 観点 | ベストプラクティス例 |
|---|---|
| 予防 | ゼロトラスト型セキュリティの導入(ただしゼロトラストは設計思想であり、段階的導入が前提) 多要素認証の導入 主要取引先含めたセキュリティ要件の明文化 |
| 検知 | 多層的ログ監視+異常検知AIの導入 EDRやMDRの活用 |
| 回復 | CSIRTの構築、IT-BCPやサイバーBCP(復旧優先順位・外部対応含む)の整備・運用 3-2-1&Immutable データバックアップ(※) |
※3-2-1ルールはバックアップの冗長性と保管場所の多様化を基本とする原則であり、災害・障害対策の基盤です。これにImmutable(改ざん不可)設定を組み合わせることで、ランサムウェアや内部不正に対しても高い復旧信頼性を確保できます。
ディスラプション(AI)・AI副作用リスクへの対応
| 観点 | ベストプラクティス例 |
|---|---|
| 予防 | EU AI法など関係する可能性ある法規制なども加味しつつ、ISO/IEC 42001などに基づくAIガバナンス体制の構築 |
| 検知 | ISO 31050などを活用したエマージングリスクマネジメントプロセスの確立や、AI活用状況とリスク兆候のモニタリング体制(横断チーム) |
| 回復 | エマージングリスクが顕在化した場合のレジリエンス評価 |
地政学・サプライチェーン分断リスクへの対応
| 観点 | ベストプラクティス例 |
|---|---|
| 予防 | 人命保護のための初動対応整備 重要部材の調達先多重化、準国内製造拠点・在庫体制の再構築 シナリオ分析を通じた短中長期のリスク評価及び対応 |
| 検知 | リスクインテリジェンス組織の立ち上げ 国・地域別のサプライヤーモニタリング強化 |
| 回復 | 代替供給ルートの即時発動プロトコル ローカルサプライヤーとの契約再交渉体制の確保 多種多様な地政学シナリオに基づくシミュレーション訓練 |
自然災害リスクへの対応
| 観点 | ベストプラクティス例 |
|---|---|
| 予防 | ハザードマップ・浸水想定区域などを踏まえた拠点立地・設備配置の見直し 重要拠点・データセンターの耐災設計・停電対策(UPS・自家発電) 災害種別ごとのBCP(地震・水害・台風など)の策定と訓練 |
| 検知 | 気象庁・自治体などのリアルタイム災害警戒情報のモニタリング 地震計・水位計・センサーなどの活用による自社拠点の早期異常検知 従業員からの安否・現場状況報告を受ける双方向の連絡体制 |
| 回復 | オールハザードBCPの整備・運用 長期間の停電・システム停止など過酷事象を前提としたBCP訓練の実施 |
人的資本リスク(スキル・採用難)への対応
| 観点 | ベストプラクティス例 |
|---|---|
| 予防 | 必要スキルの“棚卸し”と育成ロードマップの策定 シナリオ分析を通じた短中長期のリスク評価および対応 |
| 検知 | エンゲージメントサーベイや人材流動状況の定点観測 スキルマップの定量管理 |
| 回復 | 育成リードタイムを考慮した外部パートナーとの連携 現場再配置を想定した役割移管訓練 |
ガバナンスリスクへの対応
| 観点 | ベストプラクティス例 |
|---|---|
| 予防 | 取締役会の機能評価と権限分掌の見直し ガバナンス強化を目的とした海外子会社を中心としたグループ再編 |
| 検知 | 重大意思決定プロセスの定期監査・レビュー 実効性ある内部通報制度の整備・運用 3ラインモデルに基づく牽制機能の強化 |
| 回復 | 有事対応時の意思決定手順と責任明確化(緊急対応ガバナンス) |
これからのリスク対応において重要なのは、個別リスクごとに「正解」を探し当てることではなく、変化する環境の中で状況を読み取り、判断し、軌道修正し続けられる組織能力をいかに高めるかという点にあります。2026年に顕在化が予測されるリスクの多くは、発生確率や影響度を事前に精緻に見積もることが難しく、複数の要因が連鎖しながら拡大していく特徴を持っています。
だからこそ、リスクを「管理すべき厄介な存在」として切り離すのではなく、経営戦略や日常業務の意思決定に組み込み、組織として学習し続ける対象として捉える視点が不可欠です。本稿で整理した考え方や対応例が、各社におけるレジリエンス強化と、実効性あるリスクマネジメントの再設計に向けた議論の出発点となれば幸いです。