-事業内容を教えてください。
当社は主に2つの事業を行っています。一つは半導体・電子部品の輸入販売で、これは主に航空機や宇宙衛星などに使われるものを欧米から輸入しています。最近話題になった「はやぶさ」や「あかつき」にも当社が輸入した部品が一部使われています。もう一つは、自社開発製品の開発・製造・販売です。これは「人の近くにあって人のためになるもの」をコンセプトに研究開発しています。たとえば、生体信号モニタリングシステムを搭載した商品では、居眠り防止シートが先日国土交通大臣賞を受賞しました。
-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。
株式会社ジェピコ
代表取締役社長 大野 欽一 氏
当社の事業は国家予算が投入されているプロジェクトに関わるものが多いため、防災を始めとした事業継続対策などは必要であると感じておりました。
2003年には社内にて災害対策規定を制定し、災害時用の連絡網を整備、災害時の団体行動について規定しました。また2年前には強毒性の鳥インフルエンザを想定したBCPを策定しております。ただ、その際は自社内で策定したこと、翌年に新型インフルエンザが流行した際に利用してみたところ、不足している部分があったので、改良が必要だと感じていました。
そんな折、東京都の支援事業があることを知り、専門家の方のご指導を仰ぐべく申込みをしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社は、地震に対するBCPを策定しました。BCP策定に当たっては、初動対応に関しては前述の災害対策規程を活かし、不足していた事業継続策を新たに追加するという方針で作業を進めました。
今回の分析の結果、当社の半導体事業にとって重要なリソースは、従業員、情報システムと商品在庫であることがわかりましたので、主にこれらに対する予防・低減策と事業継続策を検討しました。
まず予防・低減策では、現在属人的になっている業務が意外に多いことがわかりましたので、これを改め、冗長化を進めるために情報の共有化やマニュアルの整備及びバックアップ要員の育成を行い、外部からの代替要員の調達はせずに社内の運用で対応する体制を整備します。情報システムについては、現在も二重化や耐震補強はしているのですが、サーバ群が同一のロケーションにありリスクヘッジができていないので、設置場所の分散化やサーバの仮想化を進めていくことにしました。商品在庫については、社内保管分は保管棚の耐震補強で対応し、外部委託分は委託業者の保管状況の把握と評価を継続的に実施することにしました。
有事の際の事業継続策としては、従業員は早急に応援体制を確立し、情報システム部はアプリケーション保守会社のテストサーバを自社サーバの当面の代替機として使用する方針を立てました。商品在庫については、早急な被害状況の把握と、それに基づく再発注を行うことで3週間以内の事業復旧を目指します。
【BCPの概要】
対象事業 | 半導体・電子部品販売(商社事業)(宇宙・防衛・産業) |
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対象リスク | 地震 |
被災シナリオ | 12月中旬の平日、17時25分頃、東京湾北部地震(震度6強以上)が発生。 ・新宿本社:被災(建物の崩壊は免れたものの、電気・ガス、水道すべてストップ。窓ガラス破損。事務所内の天井一部崩落、机付近等散乱) ・人災状況は、営業管理G要員:4名、ロジG要員:3名、経理G要員:2名、品質管理G要員:1名、情報システム部門要員:1名が重傷以上の被害。 ・情報インフラ関係の被害は、Notesサーバ、会計サーバ、ファイルサーバ、販売管理サーバが全損し、個人PC70台中25台が破損、電源復旧後もただちに稼働することは困難な状態。 ・新宿本社の在庫品の半分が破損。 |
事業継続策 | ・サーバの破損に対しては、社内及び開発・保守会社のテスト機で代用 ・人的被災に対しては、他部署からの応援で対応 ・倉庫・物流業者とは十分な連携関係を構築 |
-自社でBCPを策定された際と比べていかがでしたか
新型インフルエンザは被害想定などについての情報があまりに少なく、当社も手探りで想像して策定していたのでわかりにくかったのですが、今回は被災シナリオを地震としたことで、より現実的なものができたと思います。
ただ、社内で議論を重ねている際に気が付いたのですが、こうして各部の責任者が集まって話し合いをするということは非常に有意義でした。何故なら、今までは社員の中に「災害があっても何とかなるのではないか」とか「自分はここだけやれば他の人が他の部分をやってくれるはず」というような気持ちがあったのではないかと思うのです。しかし、話し合いをしていくうちに各部・各社員の分担が明確になり、とりこぼしがなくなったと感じています。
また、今回当該事業の事業復旧目標を明確に定めたことで、社員の意識も統一できたと思います。あとは、個々の業務の優先順位に応じて目標を実現するべく対策を改善していくことです。
他にも、今回明らかになった部分では情報システムでの対策に不足があったので、これは早急に対応します。また、オフィス内の家具などの耐震対策などすぐに着手できるものは今期中に対応します。