事例紹介: 東京硝子器械株式会社

東京硝子器械株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。BCPを策定した直後にトラブル発生。検討した内容が早速役に立ちました。東京硝子器械 ロゴ

-事業内容を教えてください。

理化学機器等の総合卸を行っております。ビーカーやフラスコなど小さな器具から何千万円もするプラント級の機器まで扱っています。商品はユーザー様への直接販売ではなく、販売店様経由の販売になります。

当社は業界の中では老舗で、自社カタログ10万部以上を全国のユーザー様に配布していること、自社ブランド製品を擁していること、販売物流業務はすべて基幹情報システムで管理していること、及び物流サービスをグループ内で行っていることが強みです。

東京硝子器械株式会社 専務取締役 白井 一夫 氏
東京硝子器械株式会社
専務取締役 白井 一夫 氏

-今までの地震対策を教えてください。

当社が扱うのはガラス製品なので、通常時から割れないような工夫はしています。しかし、絶対に割れない梱包というのは不可能に近いですし、柵などを設けて過剰に防護しようとすると平時のピッキング作業などで柵に手が当たって破損してしまうなど、かえって問題が発生することも考えられます。ですので、今までは、地震の際に商品が割れるのはある程度までは致し方ないと考えていました。一方で、正直に言うと社内の体制、建屋も含め、地震が来たら終わりだね、という話は確かに社内でもありました。

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

BCPは昨年パンデミック流行時に一通りのものを策定した経緯があります。ただしその際は、社内の一部の人間で作成したことと、幸いパンデミックの被害があまり大きくなかったので、利用するに至らず、社内に浸透するところまではいきませんでした。それでも数人の社員が突如休暇を取っただけで一部業務がまわらなくなるなど、支障は出ておりましたので、もっときちんとした対策をたてなくてはいけないと考えていました。

また、当社のサービスは情報システムに大きく依存しているのですが、有事の際の対策が不十分であるため、何とかしなくてはいけないという危機意識がありました。実は数年前に倉庫を移転した折りに、一部システムの不具合で基幹システムが利用できないという事態になったことがあります。その際、手作業で業務を代替できないかと試してみたのですが、30,000種類を超える品揃えとなるととても追いつかず、事業におけるシステムの重要性を痛感しておりました。

そうした側面も含めて、見直しと構築を行えればと考え、今回支援事業に申し込みました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回は地震を想定した対策を策定しました。前述のとおり当社の事業にとっては情報システムが不可欠なのですが、サーバをかなり古い本社社屋に保管していることや、本社オフィスのある神田は昔ながらの建物が密集したエリアでもあるため、危険度が高いと考えたためです。今回の検討の中で、千代田区の防災ハザードマップなども参考にさせていただき、水害や火災のリスクはかなり限定的であることが判りましたので、まずは地震に取り組みました。

予防・低減策としては、まず情報システムについてイメージバックアップの導入とバックアップ・サーバのデータセンターへの移設を行い、将来的にはクラウドへ移行することを意思決定しました。地震の際のオフィス内の棚の倒壊や備品の落下、ガラスの破損などの被害に対しても、早速補強を行っています。本社建物については特に補強などは行わず、地震発生時には本社近くにある、営業部門が入居している新しくて耐震性の高いビルを拠点とすることにしました。

事業継続策としては、情報システムの復旧を最優先とし、紙伝票と手作業による出荷は行わないことに決めました。前述のとおり、当社は扱っている商品が数万点あるために、正確な受注処理と在庫・出荷管理を行うことが得意先に対する義務であり、手作業による処理はかえってご迷惑をおかけしかねないと考えたためです。そのために被災時には、情報システム担当者は自宅からもメイン及びバックアップ・サーバの稼働状況を把握できるようにし、復旧対策を協力会社とともに早期にとれるようにします。取引先とは早期にコミュニケーションをとり、相互の被災状況と復旧見通しの連絡を取ります。そのために必要な携帯電話・携帯メールでのコミュニケーションを継続できるよう、非常用充電器の配備も行います。

【BCPの概要】

対象事業 理化学器械器具総合卸
対象リスク 地震
被災シナリオ 真冬の朝5:00、地震が発生。M7.3、震度6強。交通機関はストップ。販売管理システムが停止。PC・複合機が転倒。電気・VPNが2日間停止、電話・データ通信は5日間停止。主要道路は3日車両通行規制、地下鉄・JR・私鉄は2日停止。
事業継続策 ・システム復旧時間短縮バックアップ手法により3日内のシステム立ち上げ(イメージバックアップ、バックアップ・サーバのハウジング)。将来的にはクラウドへの移行により復旧時間をさらに短縮。
・徒歩出社社員部隊(22km圏以内)による事業継続初期対応(オフィス内の片付け、整理、PC等の動作確認及び出荷準備作業の支援)。
・重要得意先に対して3日以内に当社の被災状況、復旧見込みを報告し、得意先の意向を確認。
備考 ・社員の自宅住所/出勤経路表の作成により、交通機関停止時における社員の出社可能状況を把握。

-苦労されたポイントはありますか。

とにかくゼロからのスタートに近い状態でしたので、考えなくてはいけないことがたくさんありました。情報システムに関しては、情報システム課の方で従前より考えてきた改善策や代替策があったので、それを導入していくタイミングや予算的なことを検討すれば良かったのですが、社内の体制については一から考え直す必要がありました。

例えば連絡網一つとっても、BCPの観点からすれば管理職は全社員の名簿を自宅にも持っているべきだと考えられますが、個人情報保護の問題がありますので、それをどのように持つのかなどはきちんとルール化しなくてはなりません。

また、今回会社から22km圏内の社員は出社する、という風に取り決めているのですが、これは実は私の自宅まで22kmなので、そこを境界にしよう、ということになったんですよ。策定した事業継続策を実現するために必要な要因を明確化するために、社員の自宅住所と利用交通機関の把握も行ったのですが、私自身、本当に歩けるのかも検証しなくてはなりません。

-何か後日談があるとお伺いしましたが。

東京硝子器械株式会社 専務取締役 白井 一夫 氏

そうなんです。実は、このプロジェクトが終了した後に営業部が入居しているビルにメンテナンス作業が入ったのですが、その際、情報システム部がサーバの電源を落とす前に、メンテナンス業者が主電源を落としてしまい、サーバが1台破損してしまい、情報システムの被災が現実のものとなってしまいました。

今回の検討事項の中で、クラウドサービスへの将来の移行を盛り込んでいたのですが、経営会議において、それを直ちに実施することが決定されました。基幹システムが落ちた時にはさすがに青くなったのですが、すでに移行方法が明確になっていたので、結果として対策が早期実現でき、事業継続力も向上しました。もし今回のプロジェクトがなかったら、対策の検討、決定までに時間がかかっていたと思います。

-今後の運用計画を教えてください。

まずは社内で全体勉強会を開催します。今回策定したBCPの内容を説明し、社員とも危機意識が共有できる体制を目指します。その後は、既存の年間行事と関連付けて実施することで、無理のない運用を目指します。

また、当社の事業復旧・事業継続は、物流業務を担うグループ企業の協力なくしては成り立ちません。そちらでも同様な対策が構築できるように、話し合いを始めたところですので、今後はグループとしてのBCPの策定・定着化を推進していきたいと考えています。

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

代表取締役社長 白井 義則 氏
専務取締役 白井 一夫 氏
経営管理部情報システム課 課長 峯 祐逸郎 氏
営業部営業管理課 マネージャー 香川 良民 氏
経営管理部総務経理課 課長 寺地 昌明 氏
会社情報
称号: 東京硝子器械株式会社
本社所在地: 東京都千代田区鍛冶町2-5-10
設立: 1958年9月
資本金: 6,000万円
従業員数: 74人
代表者: 代表取締役社長  白井 義則
事業内容: 理化学器械、分析器械、理化学医療用硝子器具等を扱う総合卸売商社
URL: http://www.tgk.co.jp/

(2010年9月末日現在)

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