事例紹介: 東京ボード工業株式会社

東京ボード工業株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々。シミュレーションを繰り返し、やるべき事を理解。廃木材処理の早期再開により災害復旧に寄与。東京ボード工業 ロゴ

-事業内容を教えてください。

当社は、パーティクルボードの製造・販売を行っています。パーティクルボードというのは、チップ(木材の細片)を固めた板状の製品で、家具などにも用いられますが、現在当社売上の9割はマンションの乾式二重床下地として使われる部材です。当社の特色は、そのパーティクルボードの原料であるチップを100%、産業廃棄物である廃木材からリサイクル生産していることにあります。

以前は合板メーカーとして、薄い単板から合板を製造していたのですが、原料が不足するようになってきました。また、当社が新木場に工場を移した昭和58年頃は建設現場で廃木材が野焼きされていた時代で、これを再資源化できないかと考え、今の循環システムにたどりつきました。この仕組みのもう一つのメリットとしては、当社が産業廃棄物処理業者としてゼネコン等のお客様と直接取引ができるため、もう一方のボード・メーカーとしても指定業者にしていただけることがあります。

-今までの防災対策を教えてください。

東京ボード工業株式会社 代表取締役社長 井上 弘之 氏
東京ボード工業株式会社
代表取締役社長 井上 弘之 氏

前述のとおり、当社は廃木材を使用しているので、通常の木材を利用する場合に比べて粉塵が出やすいことと、持込み時の廃木材に混じっている除去前の釘などから火花がでやすいということで、火災への対策は重点的に行っています。金属検知器などを利用した火花を出さない仕組み、火が出てもすぐに消火できる仕組みや燃え広がらない仕組みなどです。

その他の取組として、1年に数回の防災訓練と、数年に一度、社内安全大会を実施しています。安全大会では、実際に起きた事故について従業員が報告したり、安全講習を行うことにより、従業員の反省と啓蒙を促しています。

-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。

当社は現在、新木場という湾岸地区に工場を構えており、その強みはいろいろとあるのですが、同時に地震や津波などによる被害の危険性も認識しておりました。経営において様々なリスクヘッジをしている一方で、そうした災害によって、すべてのリスクヘッジが水泡に帰する可能性もあるわけです。

被害を被った場合でも人さえ集まれば何とかできるはず、とは考えていても、神戸の大震災の際のひどい状況などは取引先のゼネコン様から聞いておりましたので、当社も何か準備をしておかなくては、と考えておりました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回のBCP策定においては地震を取り上げました。当社が目指したのは、廃木材受入・チップ製造業務の早期復旧と、それに応じたパーティクルボード製造業務の再開です。

予防・低減策としては、耐震対策を行いました。荷崩れを防ぐための製品の積み方の改善やポールの設置、製造装置の故障に備えた予備部品の購入や日常点検の強化を行いました。また、工場事務所内の棚や什器等の固定とガラスに対する破損防止シートの貼り付けを年内に実施する予定です。パーティクルボード製造装置には、海外メーカー品もあり、損傷の度合いによっては海外からのエンジニアの召集と部品購入も必要となりますので、今から海外メーカーとも有事の際の迅速な対応について話し合う予定です。

事業継続策としては、まず製造現場での緊急避難と二次災害の防止が必須です。作業油、熱媒体の漏洩や余震の発生に備え、現場社員への具体的な避難方法の徹底を現場での演習を通して行います。災害時には、大量の廃木材の早期回収が社会的にも必要になると考え、リサイクル(廃木材受入とチップ製造)については、徒歩圏在住社員の中から出社可能な社員を特定し早期対応を行う仕組みを構築しました。パーティクルボード製造については、まず販売管理システムの早期の再立ち上げを、埼玉工場でのホットスタンバイ・システムへの切り替えにより実現し、外部倉庫からの出荷によりお客様への供給を継続します。

工場設備の損傷に対しては、東京ボード・グループ社員を総動員し、協力会社の技術支援を得ながら早期復旧を目指し、24時間体制での復旧作業を行います。重要取引先に対しては、被災状況と復旧見込みの連絡、先方の状況把握を1日目から携帯電話メールを用いて行う仕組みを作りました。

【BCPの概要】

対象事業パーティクルボード製造販売
対象リスク地震
被害シナリオ12月20日、AM3:00、東京湾北部地震M7.3、震度6強が発生。3割の社員が出社不可、オフィスが乱雑化、製造装置が故障、設備稼働プログラムと製造設計データの紛失、製品荷崩れが発生。電気が1日停止、携帯電話・携帯メールは輻輳しているが可能、交通機関が2日間停止、幹線道路が2日間交通規制、ガス、水道が5日間停止、固定電話は5日間ほとんどつながらず。
事業継続策・埼玉工場PB販売管理システム(ホットスタンドバイ)への切替え
・徒歩圏選抜社員の出社による緊急対応
・TBG社員総動員と協力会社の技術支援による24時間復旧作業
・予防・低減策として、携帯電話充電器の配布、製造装置の予備部品の購入、工場事務所内の機器等の固定、ガラスの破損防止シート貼り等の実施

-何か気付きはありましたでしょうか。

今回調べてみて明らかになったことがたくさんありました。製造工程で不可欠な機械の中には海外で特注しているものもあり、故障の際の部品調達にどのくらいの時間がかかるのかなども今回明確になりました。壊れたら何ヶ月も動かないものもあるので、その場合の対策なども今後立てていきたいと考えています。

また、様々なシミュレーションをしたことで、今まで想定できなかった状況を想像できたことも有意義でした。例えば、電気が遮断したら、ガスが遮断したら、もっと言うと橋が全部落ちると新木場は島になってしまうのですが、そういう可能性についても今までは考えたことすらありませんでした。

ただ、今回は被害想定範囲を特定することで、対策を立案可能な範囲で検討しているので、実際の災害の際に本当にすべてカバーできるのかはいまだ懐疑的と言わざるをえません。これからもっと大きな被害想定を元に対応範囲を拡大する必要があります。

-BCP策定のメリットを教えてください。

東京ボード工業株式会社 代表取締役社長 井上 弘之 氏

いくつかあるのですが、まずは、こうした前向きな取組をすることで、当社に対するお客様の信頼が向上すると考えます。当社のような材料を供給する会社は、安定した納品が信頼の基本ですが、その点に対して対策を積極的に講じているということは、営業の観点からも非常にプラスの情報になります。また、当社の仕入先にもこの取組について情報を共有し始めているのですが、先方も当社への供給をストップしないように対策を考えてくれるなど、刺激になっているようです。

この新木場の木材関係業者の皆さんとは今回の当社の取組を共有し、地域として共に対策を考えていくようにしたいと思っています。

また、今回事業の見直しを行ったことで、新規拠点設立についてもいくつか案が絞れてきました。当社は現在横浜と埼玉にも拠点を持っていますが、通常時・災害時の状況を想定して、首都圏近郊にさらにいくつか拠点を設けることに利点があると感じています。また、5~10年のスパンでは海外拠点も検討していきたいと考えています。

社内的には、業界として生産が落ち込んでいく中で、こうした前向きな取組を会社がしているということは社員のモチベーションアップにつながっています。年末には全社訓練も行う予定でいますので、そこでさらなる浸透を目指します。

-今後の運用計画について教えてください。

半年に一度シミュレーションを行い改善を重ねます。また、今後は今回対象外だった部署を対象に作成したり、津波を対象に作成したりと、少しずつ進歩させると同時に範囲を広げていきたいと考えています。

油断せずに細かい点を見直し、社員一人一人にリスクマネジメント的な意識が身に付いていけば、会社の力になっていくと思っています。

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

代表取締役社長井上 弘之 氏
取締役 生産本部長佐藤 實 氏
PB製造部部長重田 直樹 氏
リサイクル部 部長奈良 成敏 氏
経営管理部次長長嶌 正英 氏
会社情報
称号: 東京ボード工業株式会社
本社所在地: 東京都江東区新木場2-11-1
設立: 1947年5月
資本金: 2億2,100万円
従業員数: 160人
代表者: 代表取締役社長  井上 弘之
事業内容: パーティクルボードの製造・加工・販売、廃木材の受入れ、チップ製造・販売
URL: http://www.t-b-i.co.jp/

(2010年9月末日現在)

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