-事業内容を教えてください。
情報端末機器、産業オートメーション機器等を構成する筐体、メカトロ部品などの板金加工を中心として設計から加工、組立、調整までをトータルに行っています。最先端のインフラ環境によって、設備の稼働状況や納期などすべてコンピュータで一元管理を行い、作業工程の進捗状況を常に把握することが可能です。
当社の強みは、設計・技術情報の先進性と顧客との強固な信頼関係です。
株式会社佐藤電機製作所
代表取締役 佐藤 喜行 氏
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
BCPについては、以前からセミナーなどで聞く機会もあり知っておりました。しかし当社ではこれまで災害対策活動としては、防災の日の避難訓練や社内の安全性委員会の活動(非常食、消火器などの確認)などが主なものでした。
当社の山梨工場は過去に河川氾濫による水害の経験があり、東海地震の可能性にも危機感を募らせていたのですが、実際にBCP策定に移すまでには至っていませんでした。今回、東京都事業のお話を聞き、絶好の機会だと思い参加させていただきました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
「電子機器メーカー向け精密板金加工事業」を対象事業に選定し、東海地震を想定して、板金加工の業務を継続サポートするBCPを策定しました。
まずは工場内の従業員の安否確認、避難誘導の初期初動対応を徹底確認すると共に、設備点検から保守依頼に至るまでの業務プロセスの確認を行いました。事業継続策としては、まずは被災後に完成品・仕掛品の全品検査を行い、その損壊結果を受け今後の生産計画会議を緊急開催し、再計画した生産計画に基づき精密板金加工業務を行うこととしました。
さらに万が一に備えて、情報資産の持ち出しリストも整備しました。当社では新しい製品を作るたびに、設計図とそれを動かす相当量のプログラムが発生します。製品は修理できてもプログラムがなければ動かないので、プログラムは当社の重要な資産です。
【BCPの概要】
対象事業 | 電子機器メーカー向け精密板金加工事業 |
---|---|
対象リスク | 東海地震 |
被害シナリオ | 東海地震M6、12月6日(月)10時発生。 工場棟の設備の横揺れによる機械のズレが発生、電柱上部の変電設備(22年経過)が落下、24時間後に通電復旧、仕掛品の落下で70%が破損、工場内作業者の30%に怪我発生、設備損傷率50% |
対策 | 設備の損壊状況を把握し、保守会社へ保守依頼 中核工程であるレーザーパンチプレス工程の設備保守を中心に、完成品・仕掛品の全品検査 緊急生産計画会議で生産計画を再計画 |
-策定に当たって、何か気付きや苦労したポイントはありましたか?
山梨工場の現場社員は、全員自分の仕事を抱えているのでBCP策定は上層部の人間のみで作ることになりました。現場の細かい状況を東京本社で確認していくことが難しかったため、今回は大枠を策定して、今後詳細を埋めて本当の完成を迎えようということとなりました。
今後は山梨工場との連携において、BCPの工場への展開や、現場理解を得ることを課題として活動していきます。
-取組を検討中の企業にメッセージをお願いします。
偶然、2、3日前に同業他社から依頼を受けて、災害時における協業の協定を結びました。協業する会社は、顧客からBCP策定の要望があったそうで、他社のBCP策定に協力することにもなりました。BCPの取組は自社だけで完結させるものではなく、周囲をまきこんで、機能をつくってゆく社会全体のセーフティネットだと考えます。
今回の東京都事業を活用して、皆でより安全な社会を目指していければ良いと思います。