事例紹介: 株式会社電力計算センター

株式会社電力計算センター BCP策定プロジェクトメンバーの方々。BCPは業務改善の一環として策定。社員が自分のものとして感じられる取組を。電力計算センター ロゴ

-事業内容を教えてください。

当社は財団法人電力中央研究所の情報処理機関として、1981年に設立されました。ちょうど今年で創立30周年を迎えます。当社の事業ドメインは3つあります。設立当初よりメインに行っております、電中研の研究業務を支える解析計算業務と、電中研のITインフラの開発及びメンテナンス、そして、この二つの技術を誘導したITソリューションのご提供です。

当社は、研究所で行う技術的な解析を専門的に扱う業務を中心に行ってまいりましたが、その後IT技術が目覚ましく進歩するにつれ、幅広いニーズに応えて業務を拡張してまいりました。たとえば、地球温暖化進捗の計算のためのスーパーコンピュータ導入や、業務効率化、ERPのようなシステム開発など、多岐に渡る技術サービスをご提供してまいりました。

今後はこれまでの技術の蓄積を活かし、顧客を電力のみならずエネルギーや環境などの事業会社様向けにカスタマイズしたソリューションをご提供していきたいと考えています。

-今までのリスク対策を教えてください。

株式会社電力計算センター 代表取締役社長 若谷 佳史 氏
株式会社電力計算センター
代表取締役社長 若谷 佳史 氏

当社は電中研の支援業務の一部として、阪神大震災後の業務復旧の研究や、電力会社向けに送電網切断時の復旧策策定のための計算解析などに携わってっていた関係で、BCPという概念の存在や重要性は認識していましたし、考え方や一部の手法についても知識がありました。

ただ、自社内をどうするのか、という経営的なリスク対応は極めて脆弱であったと言わざるを得ません。4年くらい前から経営課題としてBCPはリストに載ってはいたものの、優先順位の関係で、その後1年間、審議事項になることはありませんでした。当時は緊急時には対策本部を設置するという簡単な体制と連絡網くらいしか整備していませんでした。

3年前に私が赴任し、BCP策定の必要性を感じたことと、ちょうど新型インフルエンザが話題になっていた頃でしたので、まずは新型インフルエンザに対する対策を社内で立てました。担当部署が中心になり、対策マトリックスを作成し、一昨年の新型インフルエンザ流行時には発動もいたしました。

その際の対策はBCPとは呼んでいなかったのですが、罹患予防のための指導要綱や、5つある拠点の業務継続/中断の判断基準や人員不足時の遠隔支援/代替要員派遣などを盛り込んでありました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

自社で作成した対策の有効性を検証する意味も含め、今回もパンデミック新型インフルエンザを対象としたBCP策定を行いました。

対象事業は電中研向けITインフラサポート業務としましたが、その場合、対象となる従業員は電中研内や外部にある3オフィスに分散しているうえ、実際の業務は電中研とともに行っています。多くの人と接することから罹患の可能性が高く、本社からの目が届きにくいことがポイントです。

当事業の継続のために維持しなければならないリソースは、当事業に従事している従業員になりますので、主にこれらに対する予防・低減策と事業継続策を検討しました。パンデミックにおいては、とにかく罹患しないことが重要ですので、予防・低減策は徹底的に検討しました。それでも罹患してしまった場合に備えて、何ができるのかを検討しました。

【BCPの概要】

対象事業システム運用事業
対象リスクパンデミック新型インフルエンザ
被災シナリオシナリオ1 : 業務を多く抱えている要員5名がインフルエンザに罹患したことを想定
シナリオ2 : 就学児童を持つ7名がインフルエンザに罹患したことを想定
シナリオ3 : シナリオ1から罹患者がさらに1名増えた場合を想定
予防・低減策・手洗い、うがいの実施
・オフィス入室時の消毒液による手指消毒
・出張や旅行の自粛
・不急な会議の自粛
・不急な外部セミナー、イベント等への参加の自粛
・業務外での不必要な外出や多人数が集まる集会等への参加の自粛
・通勤時のマスク着用
・勤務時間中のマスク着用
・顧客訪問時の従業員のマスク着用
・室内の換気
・空気清浄機の設置
・ドアノブ、スイッチなど共有で触る場所の消毒
・時差通勤の実施
事業継続策・他業務及び他部署からの応援
・サービスレベルの変更
・業務の縮小
・遠隔運用体制の実施

-苦労されたポイントを教えてください。

率直な感想としては、全般的に苦労の連続でした。

自社で策定したパンデミック対策がBCPのレベルには到達していないことはわかっていたのですが、尊大にも近いものはできていると考えていました。実際にはコンサルタントの方に指導をいただいてみると、大きく不足していることが明らかになり、最終的にはほぼ全面的に見直しをしたような状態でした。

自社で策定した際の反省点としては、とにかくイマジネーションの欠如があります。実際に起きていないことについて想定するのはやはり難しく、多くのポイントにおいて「何とかなるだろう」で済ませていたことが判明しました。検討の中でコンサルタントの方にご指摘いただくと答えられないことばかりで、あらゆる視点から、レベル分けをして検討することが必要なのだと認識しました。

今回検討の対象としたのはITインフラ事業で、この業務は複数人で行っています。そのすべての人がスペシャリストであると同時にジェネラリストなのですが、事業復旧における手順を検討する際にも従前の対策では「誰かが代替する」とか「本社が判断する」などと定めてあるだけで、では一体その業務にどのようなスキルが必要で、そのスキルを持っているのは誰で、その社員はどこに住んでいて、災害の際に出社は可能かどうかなど、突き詰めれば、まったく機能しない状態でした。「まぁ何とかなる」という姿勢では、それはBCPではないのだ、ということが良くわかりました。

今まであったものは正に砂上の楼閣、机上の空論でした。今回の策定に当たっては現場の部長と地区の部長が検討に加わったので、より現場の状況を反映した実践的な内容とすることができました。また、前回策定した際は文書を作っただけで訓練を行っていなかったのですが、今回訓練を行ってみて、訓練をしないBCPなんてBCPではないと思い知らされました。いくら頭をひねって作ってみても、やはり実際に検証してみると、至らない点がたくさん出てきます。実際に現場の業務が動くのかを確認して、今回もたくさん書き直しが出ました。

最終的にはマニュアルを超えた、危険レベルに合わせて行動チャートができました。

-取組を検討中の企業へメッセージをお願いします。

当社の例から見てもおわかりのように、自社でやるには限界があると感じました。自己満足で文書だけ作っても、動くBCPにはほど遠いと感じています。当社は専門のコンサルティングを受けることができたので、完成形というにはまだまだ不十分ながらも、何かの際には実際に機能するものを策定できたと思います。

また、今回はITインフラ事業のみという限られた範囲での策定だったのですが、しっかりと下地を作っていただいたので、今度は事務局がコンサルタントの方の代わりに社内の人間を巻き込み、水平展開していこうと考えています。こうした広がりが持てたのも、プロのアドバイスがあってこそだと思いますので、これから策定を考えられている方は、こうした事業を活用されると良いと思います。

関連サービス詳細

プロジェクトメンバー

代表取締役社長若谷 佳史 氏
営業推進室 品質情報部長足立 嘉浩 氏
営業推進室 マネジャー渡辺  哲 氏
システム統括室 総括マネジャー岸  正広 氏
システム統括室 マネジャー鈴木 真介 氏
会社情報
称号: 株式会社電力計算センター
本社所在地: 東京都千代田区神田錦町1-16-1 エムズスクエア4F
設立: 1981年2月
資本金: 3,000万円
従業員数: 114名
代表者: 代表取締役社長  若谷 佳史
事業内容: 電算機システムの運転・保守・管理、及び
ソフトウェアの開発・販売、計算解析、調査、コンサルタントなど
URL: http://www.dcc.co.jp/

(2011年7月現在)

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