-事業内容を教えてください。
文具・事務用品・オフィス家具等を法人事業所向けに製造と、官公庁向けにシステム開発を行っています。特に近年では、地球環境保全の為、環境に与える影響に配慮したエコロジー商品、オフィス環境整備の推進を積極的に提案しております。
株式会社文祥堂
代表取締役社長 佐藤 義則 氏
-今回BCP構築に取り組まれた理由を教えてください。
これまで社員の緊急連絡網の整備、地域の防災訓練参加などは行っていました。当社はシステム開発事業を行っていることもあり、セキュリティ対策などは従前より行っておりました。しかし、業務に切り込んで事業の継続策を構築するところまではできていませんでした。BCPという言葉は知っていましたが、自社の規模からいっても社内で専門のチームを立ち上げて作るというところまでは敷居が高かったのです。
今回BCP策定に取り組もうと考えた直接のきっかけは、日経新聞で東京都支援事業についての記事を読んだことでした。その記事の中でコンサルタントがお手伝いしてくれるということを知り、プロの見識に触れられるチャンスだと感じて参加の申込みをしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社では、システム開発事業における、最重要顧客向けのプログラムの変更や修正に関わる保守サービス業務をBCPの対象としました。この事業は顧客が官公庁であるため、万一業務が中断してお客様の運用開始が遅れると、社会的影響がきわめて大きいためです。
BCP策定の過程で、いくつかのボトルネックが浮き彫りになりました。
一つは文祥堂本社と保守サービスの拠点が両方とも都内にあり、同時に被災する可能性があることです。次に保守サービスの拠点には複数からの外部企業の人員が数百名勤務しており、そこでの指揮命令系統は(緊急時も含め)プロジェクトに参画する各企業にあることです。当社がBCPを策定する上では、この外部企業の理解と協力が必要になるわけです。
最後に、IT資源はきわめて高い機密性の中で運用されており、破損したサーバやPCの代替機の手配や開発修正中のデータを遠隔保管するといった、外部とのやり取りが運用管理上厳しく制限されていることです。
このような制約の中で、機器の保全を図るための予防低減策と、代替機の準備、緊急時の対応体制の検討などを行いました。
【BCPの概要】
対象事業 | システム開発における保守サービス事業 |
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対象リスク | 地震 |
被害シナリオ | 12月上旬~中旬、就業時間中に東京湾北部地震(M7.3)が発生、目標復旧時間内(4日間)の出社率は50%、ADサーバ、オフイスサーバ、プリンターの被災、重要データ(開発プログラム、設計書、テストデータ)の使用不能 |
対策 | ・各社業務部門の開発代表者代行の決定 ・ADサーバ3台、ルータ1台の耐震固定 ・開発プログラム・設計書・テストデータの金庫保管 ・簡易トイレの備蓄(外部作業場所/文祥堂本社) ・代替要員確保 ・予防・低減策の徹底による基幹サーバと重要データの保護、完成品・仕掛品の保護 ・重要サーバ・PCの社内調達 |
-何か気付きはありましたでしょうか。
わかっていると思っていたことでも、改めて具体的に問われると社内の統一見解になっていないことがたくさんありました。策定を通して、想定した事象に対して、対応策を具体的に共有できたことは良かったです。また、その際には、社員同士が活発に意見を戦わせてくれたので、社内の活性化にもつながったと思います。
今後はこのBCPの定着に尽力したいと考えています。