-事業内容を教えてください。
当社の事業は、パッケージング事業、流通加工事業、製品開発事業からなり、このうちの中核事業であるパッケージング事業は、包装材の設計から、量産、出荷までのすべてのプロセスをトータルで請け負う事業で、取引先は、コンピュータ、自動車、食品、医療分野等の約300社に及びます。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社は、コンピュータ、自動車、食品、医療分野等の約300社に製品を提供しているので、これが提供できなくなると社会的な影響がかなり大きいため、事業継続が重要な経営課題になっています。また最近では、事業継続体制への取引先からの要求も出始めていますので、これを機会にBCPを策定できればと思いました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回BCPの対象としたパッケージング事業は、設計、原材料の各種加工、梱包、出荷という工程からなり、本事業を継続する上で重要なリソースは、電力、作業要員、各工程で使用する装置、原材料等です。
当社は多摩地区に所在しているため、多摩直下地震が発生したという想定で、電力の供給停止、作業要員の一部被災、装置の一部破損等というシナリオで対策を検討しました。
作業要員については、日頃から多能工化のための人材育成を進めているため、代替え要員は社内で補えると考えました。装置については現状の脆弱性を考慮して、破損するという被災シナリオを設定しましたが、かなりの部分が手作業で対応できることがわかりました。ただ生産効率はかなり低下しますので、装置類の破損程度によっては、同業他社に設計以外の工程をすべて委託する必要があることがわかりました。このため、今後はこれらの同業他社との災害時の相互協力体制の構築を積極的に進めていく予定でいます。
【BCPの概要】
対象事業 | パッケージング事業 |
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対象リスク | 多摩直下地震 |
被災シナリオ | ・製造装置の一部が破損、基幹サーバが破損 ・段ボール関係の在庫製品が一部破損 ・段ボール等の在庫の副資材が一部破損 ・外注先の1社が被災 |
対策 | ・資材棚や可動式製造装置の固定、資材の落下防止 ・主要データのバックアップと耐火金庫への保管 ・製造装置やサーバの復旧までの手作業での対応 ・副資材が被災した場合の製品の分納での対応 ・仕入先や外注業者が被災した場合、代替え業者で対応 ・目標レベルの達成が困難になりそうな場合、同業者へ依頼 |
-何か新たな気付きはありましたか?
BCP導入過程で、全社的な視点から事業運営におけるリスクを見極め、対策を検討していきますが、このプロセスが大変重要であったと考えています。経営トップがBCP導入の狙いや目的をしっかりとスタッフに伝えることが前提ですが、従業員の理解が深まれば深まるほど、工場や事務所における単なる危険個所を特定するに止まらず、定常業務の進め方における問題点が浮き彫りになったり、不測の事態に対する判断基準や意思決定の方向性に対する認識を社内で合わせることにつながりました。
導入においては、トップダウンで進めましたが、実際の活動は従業員の自主性を尊重し、ボトムアップで進めてきました。活動を始めると、本当に多くの気付きやアイデアが生まれることが確認できました。結果として、机上の理論ではない、活きた実践の場における訓練を積み重ねる形となり、当社のボトルネックの解消や従業員の問題解決能力の向上にもつながったと実感しています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
予期せぬ効果でしたが、お客様との取引上、大変重要な訴求要因となりました。従来はとかくお客様のご要望はコストダウンを強調されがちでしたが、事業継続に対する取組や成果をご説明すると、大変な評価をいただき、取引に対する信頼感が増したように感じています。安定供給のための体制が確立されていることが、販売促進活動上、お客様に対して強力な訴求点となり、実績として積み上がりつつあることは、事業運営の活力につながっており、従業員の士気が高まっていると感じています。