-事業内容を教えてください。
当社は、半導体製造装置用や航空宇宙電子機器用、分析機器用等の精密金属加工を専門に行っております。ISO9001、ISO9100及びISO14001を取得し、全工程における「品質」と「環境」 の管理を国際基準対応にしました。その上で高機能設備を整え、永年培った技能・技術を駆使して、お客様のニーズに応えるモノづくりを大切にしております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社が行っている半導体関連事業では、お客様の重要部品の加工業務を担っており、当社が迅速に事業復旧できない場合、お客様の生産計画や営業戦略に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があり、大変なご迷惑をおかけすることになりかねません。そしてそれは最終的には顧客離れを引き起こすことになると思われます。
さらには当社の事業中断は、社員の安定した生活と協力会社との信頼関係を損なうことにもなりかねません。このようなビジネス環境からBCPの必要性は、以前から感じておりました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は、当社の主力である半導体関連の加工事業を対象に、地震に対するBCPを構築しました。
本事業で使用している設備等は、非常に高価かつ希少で、代替の利かないものが多いため、できる限り被害を防ぐよう、まずは予防・低減策に重点を置きました。
そして実際に発災した際には、製品の納期調整を行うに当たり、サプライヤーやお客様との早期のコミュニケーションが生命線であると考え、リスクコミュニケーションに重点を置きました。
そのためには、自社の被災状況の把握と復旧の見通しを立てることは最優先で取り組むべき課題であり、迅速に被害状況を確認するために調査シートを作成し、その内容をもとに関係先へ連絡をします。コミュニケーションの手段としては、被災当日より携帯電話やメール、自社HPを用いた仕組みを作っております。
また、代替の利かない複数の設備とそれを稼動させられる人員の組み合せを明確にし、改善したことで、ボトルネック部分への迅速な対応を可能としました。
【BCPの概要】
対象事業 | 半導体関連事業 |
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対象リスク | 多摩直下地震 |
被災シナリオ | ・生産ラインの停止(停電、機械装置の位置ずれ) ・仕掛品・製品の転倒 ・人員の欠員 ・サーバの破損により受発注システム使用不可 |
対策 | ・在庫棚・工具棚等の転倒防止 ・棚からの治具・工具・製品等の落下防止 ・設備機械の転倒防止策、停電時エラー対策(バッテリ保守) ・試験機、工具等の運用規定 ・外部への情報発信と重要関係先への連絡の明確化 ・設備復旧手順の明確化(欠員時交替要員の教育) |
-何か新たな気付きはありましたか?
今回、製造工程で不可欠な機械設備の中には、一部の従業員にしか取り扱えないものや、壊れたら修理業者が来るまで動かない設備もあるので、その場合の社内のリソースを活用した対策まで検討することができました。それに伴い社内で共有すべき情報も明確になりました。
また、様々なシミュレーションをしたことで、今まで想定できなかった状況を想像できたことも有意義でした。例えば、電気が遮断(短時間、長時間)したら、断水したらなど、個人で考えることはあっても、プロジェクト単位で検討したことはありませんでした。個人個人の想像ではなかなか進まなかったことも、プロジェクトで討議をすることにより解決策や知識の共有ができたと感じております。
-BCPを策定した感想をお願いします。
東日本大震災の時は、3月15日に最終の訓練をする計画で進めていたことも あり、震災当日は混乱することなく、また被災状況の把握、余震に備える処置も行い帰宅しました。これはBCPを通じて物理的対策だけでなく、各人が地震に対する備えがあったからだと思います。
今後、さらにもっと大きな被害想定を元に対応範囲を拡大する必要があると考えています。