-事業内容を教えてください。
当社の事業はプラスチック射出成形と3Dモデル製作(造形)であり、なかでも食品・化粧品容器などのプラスチック製キャップ製造を得意としています。都内(ものづくりの町大田区)の好立地において射出成形工場を24時間体制で稼働し、クラス50000のクリーンルームを有しており、創業以来、医療品成形と食料品容器成形で培った衛生管理と、化粧品容器成形で培った色調管理、色替え、樹脂替え技術は業界トップクラスと自負しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社では、お客様の金型・設備の一部を預かって製品の製造を担っていることもあり、「予防保全」という考え方が自社の風土に元々備わっていたと思いますが、2004年の新潟県中越地震、そして2007年の新潟中越沖地震の際に報じられた製造業企業における生産設備の破損には、他人事ではない危機感を感じました。当社の事業も納期厳守ですので、有事の際であっても、お客様への影響を最小限にする必要があると考え、BCP策定に取り組むことにしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
1965年の創業以来、一部上場企業から金型を預かり、プラスチック・キャップの製造・供給を担っているため、有事の際であっても、お客様の生産・復旧の阻害要因になってはならないという使命感があります。新潟県中越地震、新潟県中越沖地震の被災が他人事ではないと感じていたため、今回のBCP策定においては地震を取り上げました。
地震発生時の対策としては、停電時及び復電時のブレーカー操作手順の明確化や出勤可能な社員による材料・仕掛品・製品の現品確認体制の確立、成形装置の復旧手順の策定を行いました。また、荷崩れ製品の再検査や、修復した製造装置の品質保証のために災害復旧時における品質管理項目と品質確認・検査手順の策定も行いました。そのほか、被災状況に応じた生産計画の見直し手順や販売管理システムが故障した場合の、手作業による記帳・出荷伝票発行の手順の策定を行いました。
【BCPの概要】
対象事業 | プラスチック射出成形事業(キャップ) |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・工場操業中で夜勤者の2割が装置落下により負傷 ・配管が一部破損 ・材料等の荷崩れ発生 |
対策 | ・携帯メールによる社内、得意先、取引先との連絡網の構築 ・機械、周辺機器、配管のズレ・落下防止策の実施(一部検討中) ・出勤可能社員による部門横断での機械、機器、配管の早期復旧手順の確立 ・災害復旧時における品質管理項目と品質確認・検査手順の確立 |
-何か新たな気付きはありましたか?
まずは、BCP自体を知らない幹部社員に、BCPとは何か、BCPがなぜ必要か、BCPを自社が策定する意味などを理解させるところから始まりました。次に、ただでさえ日常業務で忙しいと感じている社員をメンバーに加える際にも抵抗がありました。
初めての企業別研修の際、開始時間になっても、業務が忙しいという理由で、一部のメンバーが集まらないというハプニングがありました。そのためやらされ感が強いメンバーには、コンサルタントと相談して優先的に意見を求めるなどの工夫をしながら回を重ねていくうちに、ようやく参画意識が高まり活発な意見が出るようになりました。
当社は、連絡方法を携帯電話・メールに決めましたが、緊急時の連絡網などの必要な決めごとが不足していることに気付き驚きました。リスト作成に当たっては、個人情報という理由で作成がスムーズに運びませんでした。そこで一人一人に納得してもらえるよう説明をしていくうちに、理解が深まり、社員の団結、連帯感が強まっていくのを感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
事業を行う以上、BCPはなくてはならないものと考えますが、策定すること以上に、その過程でお客様を見据え、社員と向き合うことの大切さに気付かされました。
東日本大震災の折には、社員、設備の無事をお客様や関係者様全員に一斉に知らせることができました。BCPがなければ気付かなかったことだと考えます。今では、BCPがなければ不安で事業をやっていけない程になりました。BCP策定支援事業を受けて本当に良かったです。