-事業内容を教えてください。
公道部上水道施設の維持管理と土木工事が主事業で、その他に公園管理・清掃・警備などの委託事業を行っています。配水小管工事の実績を積み重ねて水道局単価契約工事事業者と認められ、現在では水道本管から給水工事まで幅広い工事を行う企業であり、東京都水道局より社員4 名がスーパー配管工として認定されています。
また漏水防止の緊急整備班を常時編成し待機させており、東日本大震災では、3月18日に水道局の支援出動要請で宮城県仙台市へ水道復旧隊のメンバーとして7名が出動しました。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
3.11を経験してから数カ月後に新聞の記事をみてBCP、BCMを知りました。
東日本大震災では、会社が存続できず社員が生活できなくなり、家族友人知人が亡くなり、その悲しみから逃れられず「自分の命を大切にしない」という考えに至ってしまう人もいるという事実を知り「どんな時でも社員の雇用を守り、仕事を続けなければならない」と強く感じました。自分に何が起きても、社員が働ける場所として会社が存在すれば、皆で集まり仕事ができ、家族の命が守れます。
また災害時には、地元の道路・水道の早期復旧工事に緊急出動することも必要になります。こうした理由からBCPが必要であると考え応募しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社は災害発生時には、東京都との協定により、緊急道路啓開工事(がれきを建機で片付けて幹線道路を通行可能にする)を最優先で実施し、また、東京都水道局との契約により首都中枢機関への水道管路復旧を実施します。こうした事情から今回は断水工事中に水道管を切断した直後の発災という最も厳しい被災シナリオを設定し、対策を検討しました。
通常の水道管工事実施時に、大災害が発生した場合は工事を中断し、水道管が露出している現場を全力で復旧させ、緊急工事体制に切り替えることが必要になります。そのため、まずは会社との通信が途絶えても、現場にいる4つの工事班が自主的に動ける行動ルールを作りました。そして建機や土木資材を積載したダンプ数台からなる緊急出動班を編成し、出動するための条件・判断基準を整理し、迅速な出動を可能にするためのBCPを策定しました。従って自社の復旧については、片付け等以外は緊急対応がある程度落ち着いてから徐々に再開したいと考えています。
【BCPの概要】
対象事業 | 災害時緊急対応(1.緊急道路啓開 2.水道管路復旧) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・水道管を切り落とした直後に発災 ・作業員数名負傷、建機 ・ダンプ数台使用不可 |
対策 | ・危険予知活動の徹底 ・安全確認記録の徹底 ・緊急時避難ルールの徹底 ・落下転倒防止策 ・緊急通行車両確認標章を取得 ・ルールに則った現場復旧作業 ・水道局への状況確認 |
-何か新たな気付きはありましたか?
災害対策本部や現場が下す判断の責任の重さを改めて考えました。災害時の判断いかんでは、けがや2次災害が起きる可能性が十分あり、最悪の事が起こってしまった場合に指示した者の精神的ダメージは多大になります。そのために判断者の責任を軽減させるように、被災時の判断基準をBCPに記載しました。個人ではなく会社の判断として、それを責任者が指示することで、BCPの徹底にもつながると考えます。
また、平時でも緊急出動要請があることから、災害時に自分達が出動するのは当たり前と考えていましたが、今までは自分達が被災することをまったく考えていませんでした。
災害時の緊急出動は予想以上に危険を伴うので、単独で動くのではなく、情報を集め行政の指示で行動し、地域の生活インフラの早期復旧に取り組みます。
-BCPを策定した感想をお願いします。
東日本大震災の被災地に3度訪れ、自分の中でどうすれば良いかを真剣に考えていましたが、今回の取組で進むべき道が見えてきました。東日本大震災の復興支援も重要ですが、あの経験を対岸の火とせずに、将来の大震災への準備をすること、事前にできることをすべてやりきることが重要ではないかと改めて感じました。わが社が生き残れば、社員が生き残り、そしてその家族も救われ、なおかつ近隣地域を救うことができるという考えに至ることができました。今後は自社のBCPを外に発信していきたいと思います。