-事業内容を教えてください。
弊社は日常生活に欠かせない「水」や「電気」に広く関わる技術者集団として事業展開をしております。上下水道をはじめとする水処理施設、ディーゼル・エンジンやガスタービンを使用した自家用発電設備、太陽光・小水力など再生可能エネルギーを有効利用する発電設備などに関する計画・設計・施工及びメンテナンス(サポート)が中核事業です。
また、設立当初からの事業である伊豆諸島や小笠原諸島等の離島発電設備、農村集落地の排水処理施設など、その地域に欠くことができない設備も取り扱っております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
弊社の中核事業はどれをとっても人々の生活を支える重要な設備や施設であることから、BCPについては数年前より経営会議などで話題になることはありましたが、具体的な策定までには至りませんでした。東日本大震災を経験し、改めて自社が「水」や「電気」というライフラインに広く関わる事業を展開していることを考えると、災害時にこそ事業を継続できる準備をしておくことが、弊社の社会的責務であると思い、BCP策定を決意致しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
災害時の弊社の一番の懸念事項は、基幹病院、銀行等のデータセンター、通信関連施設などの重要施設に弊社が設置し、サポートしている自家用発電設備が作動しないことです。その中でも病院は古い建物を使用している場合もあり、建物の損壊により発電設備が損傷する可能性が考えられることから、今回は病院に設置してある自家用発電設備のサポート業務を対象にしたBCPを策定することにしました。
災害時の発電設備の復旧作業には、人員はもちろんのこと、通信手段、工具・部品、そして現場までの移動手段としてそれらを積載した車両が必須です。また、発災時には一般車両は通行禁止になるため、迅速に緊急車両通行証を取得する必要があり、このような緊急時の付帯業務についても併せて検討しました。
また、サポート業務の1次受付は電話で対応するので、緊急連絡を病院の衛星電話からいち早く受信するために、発災後は地方拠点に電話窓口を切り替え対応することにしました。そして特に故障の可能性が高いと思われる病院をリストアップし、こちらは連絡がない場合でも、同じエリアからのサポート要請に対応する際に巡回を行い、状況の確認を実施することにしました。
対象事業 | 発電設備のサポート事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・社外で作業中の人員は全員帰社不能・本社内のPC10 台故障、コンピュータ・サーバ故障・倉庫全焼 |
対策 | ・安否確認ツールの設定・作業車の燃料を常時満杯にする・データや書類等の整理方法の変更・自社ビルに自家用発電設備の設置・本社内の人員は緊急車両通行証の取得・被災外の拠点は必要な部品を調達して神奈川事業所か静岡営業所へ配送・協力会社、重要取引先への協力要請 |
-何か新たな気付きはありましたか?
今回の検討の過程で、サポートの対象として基幹病院を最優先するということに迷いはありませんでしたが、その優先順位については今まで特に考えたことがありませんでした。今回その優先順位を設備の古い順にし、エリアごとにリストアップできたことは、一つの成果だと思います。
また、社内の現場点検では弊社のコンピュータ・サーバの管理、PBXの被災確率の高さ、部品用倉庫の脆弱さが露呈したことで、その予防・低減策を検討し、実施することができました。今後の課題として、協力会社やお取引先にも弊社のBCPの内容を理解し、実践していただくことが重要だと感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回の被災シナリオでは日中の時間帯での発災を想定しましたが、違う時間帯(例えば、午前2時など)や違う季節に発災した場合のBCP策定と、もう一つの中核事業である上下水道施設など「水プラント」のサポート事業のBCPを早急に策定します。そして、1年サイクルでPDCAを実施し、BCPの実行力を向上させていきます。