-事業内容を教えてください。
当社は企業が手掛ける商品、製品の手引き、解説、ご利用ガイドの製造を通して、顧客満足度の向上を図るサポートを行っています。利用者目線で読みやすさを考え、書体選びから、組版、利用するシーンに最適なサイズなどをご提案できるよう、印刷機を各種取り揃えて、加工からジャストインタイムに対応した納品までをご提供しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社は品質、環境、情報セキュリティの3つのISO 認証を取得し、統合的マネジメントシステムとして活動を推進しています。今回のBCPの策定には、従来の統合的マネジメントシステムがカバーしていない領域を補完するという目的で取り組みました。今後はさらに労働安全衛生マネジメントシステム(OHSAS18001)の取得を目指し、当社が目標とする「顧客に安心、安全な製品をお届けし、社員が誇りを持って働くことのできる存在感のある会社」を目指していきます。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社は地震によって東京営業部と埼玉本社工場の2拠点に被害が出たという想定でBCPを策定しました。
対象は中核事業である印刷事業としました。本事業では主に保険会社様や銀行様が営業ツールとして使用する約款や重要事項説明書などを製作しており、これらの納品ができなくなった場合、お客様の機会喪失につながる可能性があります。また特に仕掛品については納期が決まっているため、事業継続、迅速な復旧が重要となります。
今回は営業の拠点である東京営業部の被害が大きく、担当者がお客様とやりとりができなくなった想定で、対策を立てました。
具体的には、その日のうちに埼玉本社工場の進行管理グループが直接お客様と連絡を取る体制に移行することによる営業拠点の埼玉本社工場へ切り替え、翌日からは、生産可能な装置による生産開始、出社可能な要員による生産体制、生産可能な品目から生産開始、全工程(編集、刷版、印刷、製本)の内の刷版以降からの業務を開始することで目標の復旧指標を達成するようにしています。そして、これと並行して、破損した装置の修理依頼や材料の再調達、東京営業部員の帰社・帰宅支援や東京営業部の修復及び営業車の回収などを実施します。
対象事業 | 印刷事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・東京営業部で震度6強、埼玉本社工場で震度5強 ・営業部員全員が帰社、帰宅困難 ・製版サーバが全損 |
対策 | ・本社及び営業部のPC設置場所の変更と落下防止策の実施 ・製版サーバの設置場所の変更と転倒防止策の実施 ・営業拠点の埼玉本社工場への切り替え ・刷版以降からの業務の開始 |
-何か新たな気付きはありましたか?
机上の空論で終始することがないように最も配慮しました。
まず事業影響度分析によって、当社の事業内容を改めて考え直したところ、目標復旧時間や目標復旧レベルを厳しく設定する必要があることを確認しました。そしてその事業を構成している業務、さらにはその業務で使用している経営資源の状況を洗い出すという作業は、今まで行ったこともなく、細かくて大変でしたが、対象リスクに対して具体的に被害状況を想定していったことにより、現状の経営資源の強み弱みがかなり明確に認識できました。
そしてこの被害状況をもとに、具体的な時間軸を通して、初動対応や復旧指標を達成するための各部門の行動を検討していきましたが、ここでは電気や通信、交通網等の社会インフラが事業復旧へ及ぼす影響の度合いを改めて認識させられました。
BCPを策定した感想をお願いします。
BCP策定によって気付いた点(特に弱点)を早急に改善、実施したいと思っております。これでようやくスタート地点に立てたと思いますので、PDCAサイクルを早く一巡できるようにします。
特に策定事業を中小企業支援事業として取り上げてくださった東京都には感謝と御礼を申し上げます。平時においてはともすると必要性を感じながらも優先順位が下がってしまうこうした手の回りにくい分野に、人と時間と費用を短期集中で投下し形にすることは、中小企業の高いニーズの一つだと思います。それを実現した皆さんのご努力は大変だったと思います。これからも足腰の強い企業育成のためのプランを充実し、ご支援いただきたいと思います。