-事業内容を教えてください。
当社は精密金属機械部品の製造を行っております。金属素材の精密加工が専門で、難削材や複雑形状も得意としております。多品種少量の製品を製造するため、最新鋭の加工機(5軸マシニングセンタ他) を24時間稼動させて対応しております。主な製品は、航空機用精密機械加工部品、宇宙開発関係部品、人工衛星搭載用機器、またコンピュータ機器用機械加工部品等です。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
防災組織はありましたが、具体的な活動は行っておりませんでした。
以前からBCPには多少興味がありましたが、3月の東日本大震災で、他人事ではないと痛感しました。幸いにも当社には被害はありませんでしたが、この日、私は海外に出張中で、いくら心配しても会社とは連絡が取れず、状況が把握できませんでした。
また他社から、「今回の震災でBCPが役に立った」という話を伺ったこともあり、BCPの策定に取り組みました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社のBCPは、中核事業である機械加工事業を対象に、7日以内に納期ベースで80%、受注ベースで65%レベルに復旧することを目指し、対策を検討いたしました。
マシニングセンタは、目的に合わせてフライス削り、中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの異種の加工を1台で行うことができる装置で、本事業においては中核となる装置です。今回は夜間稼働しているマシニングセンタ(全マシニングセンタの40%)のすべてが逆電流でヒューズが破損、同様に重要な装置である3次元測定器が全損したという想定ですが、装置については破損を防ぐことよりも、それをどうやって代替するかについて、いろいろと議論を重ねました。
特にヒューズの交換ですむマシニングセンタに関しては、破損したヒューズが調達できるまでの間、他の稼働させていないマシニングセンタからヒューズを流用します。また3次元測定器については、これが復旧する間は手作業による測定で検査作業を実施することで目標の復旧指標を達成するようにしています。
対象事業 | 機械加工事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・マシニングセンタの40%が逆電流で破損 ・三次元測定器が全損 |
対策 | ・マシニングセンタの予備ヒューズの備蓄 ・PCの設置場所の変更 ・完成品・仕掛品の棚の固定と保管場所の変更 ・他のマシニングセンタからの流用によるヒューズの交換 ・検査作業における手作業による測定 |
-何か新たな気付きはありましたか?
業務で必要な経営資源を整理できたことにより、今まで漠然としていた災害時の脆弱性と、それに対する予防・低減策を明確にすることができ、それに伴い従業員のリスクに対する意識も向上してきました。
被災シナリオの想定にあたっては、当初マシニングセンタなどの装置が物理的にどの程度の被害にあうのかを検討していましたが、停電時には、稼働中の装置の慣性により、逆電流が発生し、装置のヒューズが破損してしまうという新たな発見がありました。また被災シナリオにもとづいた事業継続策の検討にあたっては、あって当たり前くらいに思っていて、特に意識していなかった電気・通信・道路といった社会インフラの重要性に改めて気付かされました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
災害時に、どのように動けば良いのかが具体的にイメージできるようになりました。
BCP策定はできましたが、今後そろえなければならない品物や、作らなければいけない文書も残っています。早急に準備し、今回想定したシナリオとは違った状況でのシミュレーションや演習を行い、いざと言う時に役立つようなBCPにしていきたいと考えています。