-事業内容を教えてください。
1913年の創業以来、「優れた印刷物で社会に貢献する」をモットーに、数多くの書籍を手掛けてきました。現在は活版から平版印刷・デジタル印刷に移行し、文字印刷(文庫本等)、カラー印刷(児童書等)、特殊印刷(会社案内等)と幅広く行っております。「総合印刷会社」として、新技術・新製品の開発に取り組み、企画・制作から納品までの一貫した生産管理システムのご提供を目指しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
3.11の際の体験や、防火訓練の反省会における意見などから、緊急に大規模地震対策を策定する必要性を感じました。弊社の拠点は青梅(本社と文字組版印刷工場)、神田(営業と多色制作)、朝霞(多色印刷工場)にあり、3拠点それぞれで立地と役割が異なることから、拠点ごとにリスク対策が必要になる点が最大の懸念事項でした。そこで3拠点のリスクを確認したいと考え、BCP策定支援事業に応募致しました。
弊社はISO14001を取得し、社員がPDCAを回す取組を経験していることから、BCPの取組にもその経験が役立つ一方、今回の取組が社員の教育につながることも期待しておりました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
本BCPの対象は中核事業である出版印刷事業で、その中でも今回は納期が決まっている印刷物を優先させる計画を検討しました。
当社は拠点が三つあり、それぞれ役割が異なります。東京湾北部地震における被災状況は拠点によって異なり、災害発生時には、通信手段が途絶えると予想されるため、「3拠点は先ずは自力で復旧を試みる」ことを基本方針にしました。
お客様との企画・調整・制作を行っている神田事業所では、営業によるお客様の意向確認及び出版物の編集データを管理する情報システム「SCALAB」と生産管理システム「i5」の対策を優先しました。
文字書籍を印刷する青梅工場では、制作部の編集作業継続策と工場の印刷設備の保護策を、多色刷の朝霞工場では、印刷設備の保護策と荷崩れが心配される紙倉庫の安全策、そして物流対策を検討しました。
継続策としては、電気・水・用紙・資材・運搬手段・製本機器の早期確保、印刷設備の早期復旧手順の確立、各外注業者の被災状況及びお客様の意向の確認・調整が重要になります。
対象事業 | 出版印刷事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | 【神田事業所】(震度6強) ・PC50台落下、SCALAB停止、i5破損 【朝霞工場】(震度6弱) ・紙、保管棚落下(在庫量100t) 【青梅工場】(震度5強) ・CTP1台、刷版1台、印刷機1台故障 |
対策 | ・紙倉庫の用紙積み方の検討 ・バックアップの保存方法の検討 ・緊急時の印刷機非常停止行動 ・印刷・制作現場との状況確認 ・事業継続可能な運送業者、製本会社との連携の取れた行動 |
-何か新たな気付きはありましたか?
改めて拠点ごとに事情が違い、情報共有が難しいと実感しました。工場が立ち上がっても神田事業所の営業に確認が取れないと作業が継続できないものもあることから、社員間の連携と各拠点での情報集約、連絡窓口の確立などのルール作りが必要だと感じました。
社内の基幹システム等が被災したことをイメージし、復旧の優先順位を議論し、書き出すことで各事業所の復旧手順を明確にしました。
印刷をする上で当たり前のように使用していた「水」が事業復旧の際には必須であることに現場が気付き、貯水タンクにどの位の水量があれば何枚印刷が可能かを確認する機会になりました。
また、IT情報だけでなく、協力会社である物流会社に委託している定期社内便が必須であること、また交通路分析から、神田と朝霞の間は20kmで最悪の場合、社員が徒歩で移動可能であることも認識できました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
工場、事業所で環境ISOをけん引した下地があり、その上でBCPに取り組みました。今回の策定では3拠点の担当が定期的に集まり、議論する機会が増えたことから、今後もこの活動が全社的な取組になり、うまく回りそうだと確信しました。
メンバーにとっては会社全体の業務を知る良い機会となり、他の拠点に後れを取らないようメンバーの意識が強くなったと強い手ごたえを感じています。
今後、詳細を作り込み、緊急時に動けるよう訓練し、「震災があっても精興社は大丈夫」といえるようにしていきたいと思います。