-事業内容を教えてください。
環境商品と景観商品の企画・開発・製造販売を行っています。主に、公園や家屋に使用する景観用の舗装材、食品工場などの防虫システム、道路の滑り止めや屋上の防水用の機能性素材(コーティング)などを取り扱っております。最先端の技術を駆使し、地球環境にやさしく、消費エネルギーを抑えた製品を提供しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
グループ企業の中では地震に対するBCPを策定しておりますが、弊社はまだ取り組んでいませんでした。それとは別に3年前に新型インフルエンザ対策に取り組み、文書を作成しましたが、実効性があるかということについては検証せずに時間が経過してしまいました。
東日本大震災や昨秋の大型台風襲来の際には、経営陣の対応が場当たり的なものとなってしまい、社員から非難轟轟(ごうごう)でした。これらの経験から、事前に具体的な対応策を考えておくことの必要性を実感し、また取引先からのBCPの取組状況についての問合せにも答えられるよう、社内外に安心感を持ってもらうためにもBCP策定を決意しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は取組やすさの観点から、以前に対策を検討した新型インフルエンザを対象リスクとして選定しました。またプロジェクトは社内の若手社員を中心とした体制にし、身の丈に合ったBCPを作ろうと考えました。対象とする事業についても、彼らが担当している塗料事業を選び、プロジェクトを通じた組織と業務の理解の促進など、若手育成の効果も期待しました。
今回は新型インフルエンザを想定しているため、施設や機器には大きな影響が発生しないので、予想される人員不足に対し、お客様へ製品を供給する上でもっとも影響がある受注業務と出荷業務を止めないための対策を検討しました。また、出荷業務を支える外部委託の物流サービスが低下することを想定し、代替先の確保や在庫管理方法の見直しも対策として加えました。
対象事業 | 塗料事業 |
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対象リスク | 新型インフルエンザ |
被災シナリオ | ・塗料関連営業部門全従業員の罹患 ・物流業者稼働率が40%に低下 ・仕入先稼働率が40%に低下 |
対策 | ・外出・出張制限 ・来訪者管理、入室制限 ・社員感染状況のモニタリングと個別健康管理 ・人員計画による重要業務の継続支援 ・在庫量の調整 ・代替物流業者の活用 |
-何か新たな気付きはありましたか?
プロジェクト開始前は、以前対応手順を検討した新型インフルエンザが取り組みやすいと思っていました。しかし、いざプロジェクトを開始してみると、地震や水害に比べて、実体験がないため、疫病がまん延するとはどういうことか、具体的なイメージが描きづらく苦労しました。それでもプロジェクトを進めていく中で、新型インフルエンザの怖さが徐々にわかってきて、参加メンバーの危機感が高まり、イメージ先行にならず、実態に即したBCPの策定ができました。
具体的には、感染状況を段階に分けて検討したため、段階を踏んだ対策とその対策を実施するタイミングを明確に決めることができました。そして、全社としての対策と現場での対策をそれぞれ具体的に検討したため、実践的なものになっていると思います。
可能な限り現状の仕組みを活かし、身の丈に合ったものを作ることができた実感はありますが、まだ最後の詰めが甘いと感じているので、今後も継続的に改善していきたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
取引先とBCP の話ができるようになり、信頼性を上げることができるようになりました。お客様に安心いただき、複数購買を検討する必要がなくなることは大きなメリットがあります。そして今回のプロジェクトを通じて、社内の危機管理に対する意識を変えることができました。
また、今回は若手を中心としたプロジェクトとして取り組んだのですが、1年目の社員を含む若手が事業内容を理解し、経営陣と時間を共有することで、会社の考え方を認識してくれたことも大きな成果だと感じています。
ただ現段階では、やっとスタートラインに立てたという感じです。まだ改善すべき点がたくさんありますが、全社員の3分の1がBCP構築ノウハウを取得できたため、時間はかかるかもしれませんが、社内への共有と今後の運用は対応できると確信しています。